月刊「OpenOffice.orgコミュニティ通信」――8月号dev Linux

バージョン2.0のリリース予定がアップデート。リリース候補が9月にも登場と報じられた。今月のコミュニティ通信は、無償オフィシャルユーザーズガイド、USBブートパッケージ、イベント駆動型コミュニティーの在り方について。

» 2005年08月09日 15時05分 公開
[可知 豊,ITmedia]

 OpenOffice.orgとそのコミュニティにまつわる情報をお届けしている、この連載。7月号は、ちょっとタイミングが合わず、掲載ができませんでした。スミマセン。実は、筆者のブログで公開しています(関連リンク)

バージョン2.0、新しいリリースプラン

 まずは、OpenOffice.org2.0のリリース状況です。先日リリースプランがアップデートされました(関連リンク)。これによると、8月に2回目のBetaテストを実施し、その上で正式リリースとなっています。

  • OOo 2.0 Beta 2:2005年8月
  • OOo 2.0 リリース候補:2005年9月(予定)
  • OOo 2.0 Final:2005年内
  • OOo 2.0.1:2005〜2006年

 このほかに、メッセージやオンラインヘルプの翻訳状況をチェックするTCMテストを8月3日から8月22日の予定で実施中です。最終的に正式リリースされるバージョンは、このBetaテストとTCMテストの結果を反映したものになるでしょう。

バージョン1.1.5、リリース準備中

 さらに、現在の安定版であるバージョン1.1のバグフィックス版を準備中です。この1.1.5は、現在公開されているセキュリティパッチを取り込んだほか、OpenOffice.org2.0のファイル形式であるOpenDocumentファイルの読み込み機能を搭載する予定です。

 現在、リリース候補の評価を進めています。評価中に、Windowsの一部のバージョンでインストールできないといった不具合が見つかったため、その改善を行っています。

ネットで無償公開、OOoオフィシャルユーザーズガイド

 OpenOffice.org1.1の解説書「OpenOffice.orgオフィシャルユーザーズガイド」の全文が、PDFファイルで公開されました(関連リンク)

 これは、毎日コミュニケーションズから出版されていた書籍(400ページ強:2625円)をPDFにしたもので、書籍とまったく同じ見た目になっています。「印刷できない」「テキストのコピーができない」といった制限もありません。利用条件は。PDLになっています(関連リンク)。それぞれの章ごとに分割したものも、追って公開される予定です。

 同書の「あとがき」にあるように「原稿をネットで公開する」という当初の約束を果たしてくれたもです。関係者のご尽力に感謝します。

USBドライブから起動できるPortable OpenOffice.org登場

 Portable OpenOffice.orgは、USBドライブから起動できるフル機能のOpenOffice.orgです(関連リンク)関連情報もあります。ファイルの一部を再圧縮して、容量を小さくしています。1.1日本語版は、128MBとUSBメモリに納めることが可能です。

ワイズノットのOpenOffice.org採用事例

 これは、先月号のニュースでも取り上げようとした話題です。面白い話題だと思うので再掲載します。

 ワイズノットは、オープンソース技術によるWebインテグレーションサービスを提供するSI企業です。先日、北海道で開催された「オープンソースカンファレンス in Hokkaido」で、ワイズノットの嵐 社長のお話を聞く機会がありました(関連記事)

 ワイズノットは、この春から業務拡張に伴い社員を50人ほどから200人以上に増やしています。そして、その新入社員の全員がOpenOffice.orgを使用しているのです。

 Microsoft Officeを使い続けるのは、外部と文書ファイルをやり取りする社員に限定し、そのおかげで、社員が増えているにも関わらず、ライセンス料が約800万円の節減となったそうです。その分、社員に支給するデスクトップPCの性能アップができたと語っています。

 今後は、オープンソースソフトウェアの具体例として、顧客にもOpenOffice.orgの配布を計画しています。

イベント駆動でコミュニティーを盛り上げる

 ここ数年、OpenOffice.org以外にも多くのオープンソースソフトウェアに注目が集まっています。そのため、多くのオープンソース関連イベントが開催されています。OpenOffice.org日本ユーザー会でも、次の2つのイベントに参加予定です。

 「オープンソースカンファレンス2005 Tokyo/Fall」日程:9月17日(土)、場所:日本電子専門学校(関連リンク)

 「関西オープンソース2005」日程:10月28日(金)、29日(土)、場所:大阪産業創造館(関連リンク)

 OpenOffice.orgに限らずオープンソースソフトウェアは、多くの人材によって維持されています。その人材や企業の緩やかな結びつきを「コミュニティー」と呼んでいるわけです。OpenOffice.org日本ユーザー会も、OpenOffice.orgとそれを取り巻く環境をより良くしようというコミュニティーの一部です。

コミュニティーの在り方を考えてみる

 このようなコミュニティーは、最初のバージョンやバージョン1.0が登場した当初は盛り上がります。メーリングリストの登録者が増え、いくつもの情報サイトが立ち上がります。期待は高いけどバグも多ければ、多くのバグレポートが寄せられますし、それを改善する作業も勢力的に行われるのです。

 やがて、バージョンが上がり、ソフトが安定したり、情報サイトが充実してくるにつれ、そのツールが存在していることが当たり前になり、コミュニティーは盛り下がってきます。新しい人材はあまり登場せず、当初のアクティブメンバーも燃え尽きたり、他の面白そうな話題に乗り換えていきます。

 個人としては、それでも構いませんが、そのツールとそれを取り巻く環境を定常的にメンテナンスしていくには、十分な人材を集めにくくなります。

 そのための解決策が、いくつも模索されています。コミュニティーの一部を法人化して、人とお金を集めやすくするのもひとつの手段でしょう。また、作業そのものを作業の平準化/省力化して効率アップするという手もありますが、これは参加している当事者があまり楽しくありません。

 そこで、イベントをキッカケにしたらどうでしょう。それに合わせて、人的なリソースを集約させて、情報交換や問題解決/人材発掘の場のひとつにするのです。セミナーや展示会を催すだけがイベントではないのですが、そこに照準を合わせて調査したりデモを作ったりするのも楽しいのではないでしょうか。

 今までメールやチャットでしかやり取りしてこなかった人と、直接会ったり一杯飲んだりという楽しみもあります。コミュニティー間の横の情報交換ができるというメリットもあります。私は、これを勝手ながら「イベント駆動方式」と呼んでいます。

 別に新しいことを言っている訳ではなく、従来から、そういう意味でお祭りが行われてきたのだろうなと筆者は思います。「踊る阿呆に見る阿呆……、同じ阿呆なら踊らな損々」、という訳で上記のイベントでも参加団体/法人/個人を募集しています。これを機会に、ぜひ面白いモノを見せてみませんか。

 今まで、コミュニティという集まりをあまり気にかけなかったという人も、これを機会に遊びに来てください。あなたと同じ興味を持った人、あなたのやっているコトを面白いと思ってくれる人、そんな人と出会えるかも知れません。

 技術屋にとっては、新しい技術に接するチャンスになるでしょう。学生さんにとっては、自分の力を試す場所になるでしょう。ビジネスマンに取っては、新しいビジネスチャンスを垣間見ることになるかもしれません。

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