Linuxが動かすハリケーン追跡サイト

荒れ狂うハリケーンの進路になり得る地域の住人にとって、インターネットは嵐の追跡と予測に関する最新情報が得られる重要な情報源となり得る。カスタムソフトウェアとLinuxで構築された熱帯気象Blogを取り上げよう。

» 2005年09月13日 17時34分 公開
[Tina-Gasperson,japan.linux.com]

 荒れ狂うハリケーンの進路になり得る地域の住人にとって、インターネットは嵐の追跡と予測に関する最新情報が得られる重要な情報源となり得る。FLHurricane.comは、最も有名な熱帯気象Blogの1つである。ハリケーン・シーズンのヒット数は数百万に達し、提供するイメージデータは数ギガバイトに及ぶ。このサイトを動かすのが、カスタムソフトウェアとLinuxである。

 プログラマーのマイク・コーネリアス(Mike Cornelius)氏と彼の兄弟ジョンがFLHurricaneを設立したのは1993年。World Wide Webが膨大な数の人々をインターネットに招き寄せる前のことだ。南フロリダを襲ったレベル5のハリケーン、アンドリューにより2人のいとこが被災した後、FLHurricaneはBBS上に設置された。「ハリケーンの追跡に役立つものを提供しよう、そう決めたんです」と、Cornelius氏は当時を振り返る。彼は追跡プログラムをCで書き、訪問者がプログラムを無償でダウンロードできるようにした。

最初のWebサイトを立ち上げたのは1995年。ハリケーンの多い年だった、とコーネリアス氏は述懐する。「タスクの自動化を始め、Webについていろいろと学びました。サイトで使うために開発するソフトウェアがどんどん増え始めたのもこのときです」コーネリアス氏と彼の兄弟は、追跡/予測ソフトウェアをPHPで書いてWebアプリケーションとして稼働させることにした。そのほうが、問題の修正や新機能の追加が簡単になり、ソフトウェアを自分でインストールして設定する代わりにサイトをただ訪れればよいので、ユーザーも楽になる。

 FLHurricane.com Webサイトは、初めからLinuxで稼働した。Webサーバだけでなく、データサーバとイメージサーバもCentOSで稼働している。コーネリアス氏は、Central Florida大学在籍中にLinuxを学んだ。現在、彼はOrange County公文書館にソフトウェアを納入するOrlandoの企業にWindows開発者として勤務している。「両方[LinuxとWindows]とも続けたかったんですよ。一方はもう分からない、というのはいやでした」サイトをLinuxで作成して稼働させることにしたのは、そういった理由からだ。「おかげで両方の一番いいところを学べました」

 当初、サイトは外部サーバでホストされていたが、にぎやかなハリケーン・シーズンのせいでFLHurricane.comが帯域幅の問題に苦しめられ、ハードウェアのアップグレードを余儀なくされたことから、コーネリアス氏は寄付を募った。「それなりの機器と十分な帯域幅を得るのに十分な寄付がありました」1年のほとんどは、サイトは「かなり静か」だが、利用のピークは(意外なことではないが)今のような時期に急激に訪れる。「カトリーナは去年の4つの[フロリダを襲った]ハリケーンを超えませんでしたが、間違いなく今年では最高です」コーネリアス氏によると、この2週間のサイトアクセスは約2000の同時接続を数えるレベルに達し、破滅的な被害をもたらしたこのハリケーンの接近が報じられてからの総ヒット数は約200万件になった。

 ヴァージニア州Newport Newsにあるサーバに加え、ローカルのイメージサーバと、国内3箇所のデータセンターから寄贈されたサーバ領域のネットワークをコーネリアス氏は利用している。「イメージと地図を扱って、帯域幅を分散しています」

 コーネリアス氏は、日中の通常の勤務に加え、サイトを管理し、ユーザーの要望に応えるために、無報酬で長時間働いている。カトリーナが暴れた先週は、4日間一睡もしなかったという。彼とと彼の兄弟のほかに、6人のボランティアがサイトの稼働に手を貸している。その中には、National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気庁)とNational Weather Service(米国気象局)から提供される生の気象データを解釈する3人の気象専門家が含まれる。この解釈こそ、FLHurricane.comを頼る人々が悪天候に脅かされたときに絶対に必要と思うものである。「情報を提供する、とにかくそれがすべてです。事後ではなく、あくまでも"事前"にこだわってます。カトリーナでは、救援方法に関するリンクも提供しました」

 だが、サイトを訪れる圧倒的多数の人々が一番知りたいこと、「自分の家が進路上にあるか? 自分は被災するか?」についてはどうだろうか? コーネリアス氏によると、気象専門家は予報と進路予測に関して意見は述べるが、「元の情報源を参照するように、と僕らは言ってます。デマ騒ぎに巻き込まれたくないですから。ですが、カトリーナに関しては、ああいうことになるとは思ってませんでした。ひどいものです、ニューオーリンズに向かうなんて」

 「個人的にはハリケーンは本当に嫌いなんですよ。やってくるのが楽しみ、みたいな言い方をする人もいますが、僕は逆です。どうすればみんなが無事でいられるか、それを見つけようと苦労してます」

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