外部のパートナーとの連携が不可欠になる中、自社の業務にシステムを最適化させるという考え方自体がもはや古いのかもしれない。
情報システムを構築する上で多くのプロジェクトは、自社の業務プロセスの最適化を図ろうとする。だが、インターネットがインフラへとしてコモディティ化するにつれて、パートナーや顧客企業ともっとシステムを連携する必要があるかもしれない。特に、流通業や製造業などは、ビジネスプロセスの中で自社の業務だけで成立している部分は少なく、パートナー企業などとの細かな連携が欠かせない。
そのことからも、今後の情報システムのトレンドが、従来の自社最適化から、社外を含めた企業との効率的な連携を組み込んだシステムへと次第に変化していくことが考えられる。そこで注目されるのがEAIをはじめとする企業間連携の分野だ。EAIのソリューション提供に力を入れるStering Commerceの日本法人社長の小池リチャード氏、マーケティング&アライアンス部長を務める湯本敏久氏に話を聞いた。
同社は、1997年1月、米Stering Commerceが、米Stering Softwareの電子商取引関連の組織を買収したことにより、日本法人のスターリングソフトウェアで電子商取引関連の販売、保守を行っていた部門のスタッフがスターリングコマース株式会社に移籍することによって誕生したという経緯がある。
「一般的な企業においては、外部の企業のシステムと自社システムを連携させて、利益につなげようという考え方自体があまりないようだ」と話す小池社長。自社システムを外と連携させる場合、たとえば、EDIやXML、メッセージングなどが挙げられるが、未だにファイルベースで連携するケースが多いという。
ソニーグループとその物流業者を結ぶ企業であるソニーサプライチェーンソリューションの現場では、発注から顧客の手元に製品が届く間のリードタイムは通常5日間であった。そこで、スターリングコマースのソフトウェア基盤を導入したところ期間を8分の1に削減できたという。これにより、企業は余剰在庫を最小限の水準に削減することができた。
スターリングコマースが提供するのは、SOA(サービス指向アーキテクチャ)ベースのプラットフォームである「MESA」(マルチエンタープライズ・サービス・アーキテクチャ)と呼ばれるプラットフォームだ。
MESAには、EAI、BEBコミュニケーション、EDI(電子データ交換)、システムモニタリング、ビジネスインテリジェンス、ビジネスプロセス管理など、さまざまな機能が含まれており、ユーザー企業は、自社内にとどまらず、顧客やビジネスパートナーなど企業間連携プロセスを可視化し、最適化することが可能になる。
さらに、同社は、企業間接続のノウハウを核に、各業界に特化したソリューション提供という形でビジネスを展開する考えだ。請求/購買処理自動化ソリューションなどを提供するテレコム、そのほか、製造、物流、流通、金融などでもさまざまな業種別ソリューションを提供している。
「今後の企業システムは、パートナーや顧客など、利害関係のある企業との連携を含めたビジネスプロセスとして、多対多の形で最適化されていくと考えている」(湯本氏)
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