次に、「どのような領域に活用していけばよいのか?」という問題がある。ITの活用の目的は大きく分ければ、売り上げアップに向けた活用と、コスト削減に向けた活用の2つだ。損益計算書を眺めれば分かるように、企業が利益を出すために必要なことは、売り上げを上げるか、コストを削減するか、またはその両方を実現するという3つの要因に単純化できる。
そして、どちらかと言えば、ITは売り上げアップよりもコスト削減の方が得意であることは想像に難くない。たとえば、楽天のようにインターネットというツールで全く新しいビジネスモデルを考案すれば、ダイレクトに新たな売り上げにつながる。しかし、残念ながらそのような例は多くない。
また、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、「いくらPOSを活用しても売れ筋が分かるわけではなく、死に筋が分かるだけ」と話している。同様に、マーケティングにおいてITを活用しても、事前に当たるキャンペーンが分かるわけではなく、基本的にはキャンペーンの結果(費用対効果)が分かるだけである。
したがって、売り上げ向上への活用策の基本は、IT活用(主として分析および検証)によって、売り上げに寄与していない商品や活動をすみやかに排除し、売り上げに寄与している商品に経営資源を集中することである。この点でのIT活用のポイントは、「仮説検証プロセスをきちんと組織の中に確立することと、ITを活用してそのプロセスを迅速かつ効果的に回すこと」である。
このように、売り上げ向上よりもコスト削減の方が、ITを活用しやすく結果も得やすい領域と言える。人が行う業務をITで自動化したり、人手で管理していた在庫や原価を、システムを利用した管理に変更したりすることによって、数十%程度のコスト削減ならば、比較的容易に実現できる。
コスト削減という「宝」は、どの企業にもまだまだ隠れている。その宝を探すためには、現状を数値で把握することが必要であり、この領域こそまさにITの得意分野と言っていい。
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