とびだす中堅企業の違いを「ベンチャー」に探る「中堅」と「ベンチャー」はどう違う?(2/3 ページ)

» 2005年10月05日 06時40分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]

松井証券、楽天を成功に導く

 現在、企業の命運を左右しているのは明らかにIT(情報技術)である。ITは、IT産業という巨大市場を創出するとともに、レガシーとも呼ばれる企業が展開してきた旧来のビジネスモデルの再生も促してきた。

 具体例はいくつもある。松井証券は、証券という極めて古いビジネスモデルにインターネットというITを取り込んで成功した。祖父が創業した社員わずか20数人だった松井証券(松井房吉商店)は、ITによってオンライン取引という手段をユーザーに提示し、現在ではかつてのITバブル時を超える個人株式売買代金140兆円(2004年実績、うち110兆円がオンライン取引)という市場を作り上げた。

 また、楽天のビジネスモデルはさらに古い。しかも、かつてインターネットの普及に合わせて、1990年代から野村総合研究所など大手企業がその参入チャンスをうかがっていたことがあった。しかし、結局、体力に勝るはずの大手である野村総研は撤退し、最後に残ったベンチャーの楽天がこの市場で勝ち残った。タイミングが良かっただけという人もいるが、楽天は全く何もないところから大手企業を打ち負かし、新たな産業分野を確立したのだ。

 しかし、ITがキーワードと言っても、ITそのもので事業機会をうかがういわゆるe-ビジネスと、松井証券のようにレガシーなビジネスモデルにITを積極的に取り込むという手法の違いがあることには留意しなくてはならない。

 2000年前後のITバブル崩壊でe-ビジネスへの関心が薄れた時期もあったが、最近のライブドアの攻勢などを見れば、一概にベンチャー企業とレガシー企業のどちらが本流と規定することもできない。e-ビジネスであろうとレガシーであろうと、ITがベンチャー企業を作り出し、零細企業を大手企業にのし上げる原動力になっていることは間違いない。

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