MySQL、オルタナティブ提供でOracleによるInnobase買収に対抗へ

MySQL 5.0のリリースでさらに勢いづくMySQLの幹部は、OracleによるInnoDBデータベースエンジン買収に対抗すべく、オルタナティブを用意していることを明らかにした。(IDG)

» 2005年11月24日 14時19分 公開
[IDG Japan]
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 Oracleがフィンランドのソフトウェアデベロッパー、Innobaseを買収してから6週間になるが、スウェーデンを本拠とするMySQLでは、オープンソースの「InnoDB」データベースエンジンに対するオルタナティブ(代替技術)をユーザーに提供する準備を進めている。MySQLの幹部が11月22日に明らかにしたもの。MySQLの製品の中核部分には、InnoDBが主に使われている。

 データベース業界の観測筋は、Oracleの買収がMySQLのオープンソースデータベースにどんな影響を与えるかについて、さまざまな憶測を投げかけている。自社のオープンソースデータベースに関するサポートサービスを提供しているMySQLでは、代替選択肢の提供を計画している。

 MySQLで欧州/中東/アフリカ(EMEA)地域を担当するリチャード・メーソン副社長は、「OracleがInnobaseを買収したため、われわれは何らかの方法でその技術を代替するためのオプションを検討している」と述べている。

 「まだ計画の内容を公表できる段階ではないが、間もなく明らかにするつもりだ」(同氏)

 Innobaseは、MySQL用として最も人気の高いストレージエンジンを開発した企業。なお約3週間前に、MySQLのバージョン5.0がリリースされた。InnoDBストレージエンジンは、オンライントランザクション処理アプリケーションに最適な製品の一つという評価を受けている。

 Innobaseの買収発表に際して、Oracleは今後もInnoDB技術の開発を続ける方針を明らかにした。同データベースエンジンは現在、Innobaseとの契約に基づいてMySQLにバンドルされている。この契約の更新時期は来年である。

「InnoDBのコードはGPL」とMySQL創業者

 メーソン氏を含む数名のMySQLの幹部が11月22日、ロンドンで開催された第1回北欧地域ユーザーカンファレンスの主催者として出席した。MySQLの共同創業者デビッド・アックスマーク氏に対する最初の質問は、「Oracleの買収がMySQLのデータベースソフトウェアにどんな影響を及ぼすか」というものだった。

 アックスマーク氏は、InnoDBは「プラグイン式」なので、ほかのストレージエンジンで置き換えることが可能だと述べた。同氏によると、InnoDBのコードはGPL(General Public License)の下でライセンスされているため、「このコードはいつでも利用できるし、今後もずっと利用できる」という。

 とはいえ、MySQLはOracleの動きに懸念を抱いている様子であり、ユーザーにとって適切な代替選択肢を準備している。具体的に何を計画しているのかは明らかにしていない。可能性としては、現行のオープンソースコードをベースとしてInnoDBの新バージョンを開発することや、代替オープンソースデータベースエンジンの1つを改良するといったことが考えられる。

 英国ノリッジにあるKorana Technologyのデータベース担当業務執行ディレクター、デビッド・カートライト氏によると、OracleがInnobaseを買収した理由が、今ひとつはっきりしないという。

 「Oracleがデータベースエンジンのコードの使用をMySQLに認めるつもりであれば、買収の影響は小さい」と同氏は指摘する。

 カートライト氏によると、Innobaseとの契約が更新されない場合でも、現在のコードを引き続き使用することは可能だという。しかしOracleが、基盤となる技術(アルゴリズムやファイル構造など)の特許あるいはライセンスを保有すれば、「非常に面白いことになりそうだ」と同氏は話す。

 その場合、MySQLは異なるアーキテクチャーを考え出す必要があるかもしれない、とカートライト氏は話す。しかし、そのせいでほかの機能を開発するためのプログラミング時間が奪われる可能性があるという。

販売ネットワークが拡大するMySQL

 MySQLによると、MySQL 5.0のリリース以来、ダウンロード数は100万件を超えたという。メーソン氏によると、さらに同社は、Dell、Hewlett-Packard(HP)、Novellとグローバルディストリビューション契約を結び、無償データベースを対象とした同社のサポートサービスである「MySQL Network」を再配布するライセンスを彼らに提供した。これはサーバ単位の年額課金方式だという。

 HPとNovellは、MySQLをそれぞれの価格リストに載せており、直販あるいはチャネル経由で同製品を販売することができる、とメーソン氏は話す。現在、これらの契約を、各国向けにローカライズしているという。

 「これらの提携により、MySQLの販売ネットワークが拡大するとともに、企業のCIO(最高情報責任者)たちは、このソフトウェアを“エンタープライズ環境にふさわしい製品”と考えるようになるだろう」(メーソン氏)

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