e文書法は電子化のための金科玉条ではないe文書法の活用術(2/3 ページ)

» 2005年12月19日 08時22分 公開
[佐藤慶浩,ITmedia]

 従って、e文書法のために企業が何か対策に迫られることはない。業務のIT化のためにe文書法を活用してもいいということにすぎない。今後、行政機関が行政事務のIT化を実施すれば、企業にとって電子書面を使用した方が対応が容易になると考えられるが、その場合にも、電子化を選択するかは企業の側に当面あると考えていい。

 ただ、行政が紙面による事務を急になくし、電子書面のみに切り替えるとは考えにくい。例えば、国税庁の電子申告システム「eTax」を使えば、自宅から確定申告を行うことができる。この場合においても、従来の紙面による手続きがなくなり、電子版だけになったというわけではない。しかし、利用者にとっては電子版を使った方が便利である。そのため、行政事務がIT化されれば、企業も書面を電子化することに多くのメリットがあるだろう。それを選択したいという企業は多いはずだ。

電子書面の技術的な十分条件は共通ではない

 では、書面を電子化したいと考えたときに、企業は何をすべきだろうか?

 e文書法は、書面の電子化を行うために共通する事項を定めた法律である。ただ、ここで定められたのは、法令における書面の定義や扱いについての事項である。電子化のために必要な技術的な必要十分条件について直接定められていないので、注意が必要になってくる。

 技術的な条件については、経済産業省が2004年度に「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」を設け、報告書を提出しているが、ここに記載されているのは、必要条件であって、十分条件ではないのである。

 電子書面の技術要件について、十分条件まで定められることが望まれるが、企業は、報告書で述べられている必要条件から考えることが可能だ。電子書面ではない紙面における捺印を考えてみよう。印鑑が三文判でもいいか、印鑑証明を有する印鑑が適当であるかは、その紙面の用途により異なってくる。すべての法令が定める書面について、その捺印に用いる印鑑を一律共通の要件を定めるということは現実的ではないはずだ。これらの判断は、捺印する書面の用途によって異なるはずだからだ。

 また、印鑑証明を取得するための印鑑そのものについても、100円の印鑑でいいのか、1万円の印鑑でなければいけないのか、要件が明確に定められているわけではない。ただ、100円の印鑑では印影が固有のものとなりにくいだろうから、それで不利益を被るかどうかを自身で判断して、適当と思うもので印鑑証明を取得するだけのことである。

 このことはe文書法でも何ら変わることはない。電子署名が必要かどうか、署名するならその強度はどの程度のものなら十分か、といった点はその書面を扱う法令の定めによるということになる。

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