例えるなら、e文書法は、これまで門前払いとなっていた電子文書について今後は門前払いにはしないと、門戸を開放したといえる。しかし、その後、その書面が電子的手段でも受け付けられるかどうかは、門の中にある個々の玄関によって決まる。そして玄関に当たるのが、個々の書面の保存を定めた法令ということになる。
企業に書面の電子化を問う前に、書面の保存を定める個々の法令を所管する府省庁に「書面の電子化についてはどうしますか?」ということが問われているのである。この後も法令の定めによる個々の書面についての具体的な十分条件が示されなければ、門は開いたが玄関は閉じたままということになる。つまり、e文書法は政府に投げ掛けられた法律であって、直接民間に投げ掛けられたものではないのだ。
この玄関を開くためのものとして、経済産業省が前出の委員会が少なくともすべての電子書面で共通になるだろう必要条件を示し、府省庁による十分条件の検討材料を提供したのである。その意味で、同委員会の検討結果は、あくまで報告書であり、国民に対して何かを示したガイドラインではないのである。
この報告書などを参考に個々の書面について、電子化の手段の十分条件が示されれば、電子書面のための玄関も開いたことになる。企業は積極的に活用すべきだ。しかし逆に言えば、それが示されていない書面の電子化は、相当のリスクを伴うことになる。リスクを回避するためには、紙による書面を併用することになるが、それではコストを増大させるため、企業がIT化ためする動機となりにくい。
とはいえ、現在のところ企業ができることはないのかというと、そうではない。報告書によって必要条件は示されたので、企業は最低限満たすべき条件をまずは備えておくべきだろう。その必要条件を述べた報告書については、次回詳細に解説したい。
佐藤慶浩
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