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» 2006年01月18日 13時37分 公開

企業が知っておくべき法律知識:行政による個別労働関係紛争解決促進制度

勤務態度の悪い社員を解雇した某社。ところが数日後、県の紛争調整委員会の手紙が。そこには紛争解決のためにあっせんを行うという内容が記されていた。企業はどうするべきか?

[第一法規]

lalalaw当社は、先般、勤務態度の悪い社員を解雇しました。そうしたところ、県の紛争調整委員会から紛争解決のためにあっせんを行うとの連絡が届きました。どうも解雇された社員が県の労働局に解雇が不当だとあっせんの申請をしたようです。  当社としては、どう対応したら良いでしょうか。


lalalaw紛争調整委員会によるあっせんは、中立公平な立場から行われる紛争の解決手法です。会社としても出頭し、自らの主張を十分に説明し理解を得られるように努力する必要があります。

 もし、委員会のあっせん案が出されるときには、紛争の実情を十分に反映したものとなるよう、あっせん委員に対する説得活動も必要です。

 あっせん案については誠実に検討しなければなりませんが、どうしてもあっせん案が納得できない場合には、拒絶してもやむを得ません。

解説

1.個別労働関係紛争解決のための手段

 会社と社員との間において、さまざまな紛争が発生することがあります。例えば、賃金をめぐる紛争、労働時間、休暇をめぐる紛争、転勤、配置転換をめぐる紛争など枚挙にいとまがありません。このような会社と社員間における個別の労働関係に関する紛争は、まず、会社と社員との話し合いで解決を図るべきものです。お互いが冷静に話し合えば、相当程度解決できるものと思われますが、中には当事者同士の話し合いでは解決できないものもあります。

 当事者同士の話し合いで解決できない紛争の解決手段としては、個別の労働関係に関する紛争も民事紛争ですので、最終的には訴訟をもって決着をつけるということになりますが、裁判所で訴訟を行うとなると、弁護士に依頼しなければならないとか、一定の期間を要することになります。

 裁判所に紛争解決を持ち込む前に、簡易に紛争解決を図る手段として設けられたのが、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律による紛争解決手段です。

2.個別労働関係紛争解決促進法の目的

 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(以下「本法」)は、労働条件そのほか労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(厳密な意味で労働者となっていなくとも、労働者の募集および採用に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争を含みます)について、あっせんの制度を設けることなどにより、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とするもので、2001年10月1日から施行されています。

 本法は、個別労働関係に関する紛争を対象としていますので、会社と組合の労使紛争は対象となりません。

3.相談業務

 個別労働関係に関する紛争は、当事者同士の話し合いで自主的に解決されるのが最も望ましいと言えます。そのために、都道府県労働局では、個別労働関係紛争を未然に防止し、個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者または事業主に対し、相談業務を行っています。

4.都道府県労働局長による当事者に対する助言および指導

 紛争は、労働関係に関する制度や法律につき当事者双方または一方が誤った理解をしていることで発生していることがあります。

 例えば、期間の定めのない労働契約について、「期間の定めがないのだからいつでも自由に解雇できる」とか、「パートも必ず解雇予告手当がもらえる」などという誤解に基づいて行動したために紛争となっているようなケースです。

 このような誤解がベースにある紛争については、制度や法律について正しい理解を助言または指導することで、紛争の解決を図ることができます。

 本法においては、都道府県労働局長は、個別労働関係紛争に関し、当該個別労働関係紛争の当事者の双方または一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言または指導を行えるとしています。なお、その際に、必要があれば、都道府県労働局長は、広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者の意見を聴いて助言または指導を行うものとしています。

5.紛争調整委員会によるあっせん

 相談や当事者に対する助言、指導で個別労働関係紛争が解決できれば良いのですが、紛争によってはそのような手法では解決できないものもあります。そこで、本法は、紛争調整委員会によるあっせんという解決手段を設けています。

 紛争調整委員会というのは、都道府県労働局に置かれる委員会で、個別労働関係紛争の解決のためにあっせんを行います。紛争調整委員会によるあっせんは、個別労働関係紛争(労働者の募集および採用に関する事項についての紛争を除く)について、紛争当事者の双方または一方からあっせんの申請があった場合において、当該個別労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときに開始されます。同委員会によるあっせんは、委員のうちから会長が事件ごとに指名する3名のあっせん委員によって行い、あっせん委員は、紛争当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように努めます。

 あっせん委員は、紛争の解決の見込みがあるときには、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを紛争当事者に提示して紛争の解決を図ります。他方、あっせん委員は、あっせんにかかる紛争について、あっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることができます。

6.今回の事例について

 ご質問の事例は、勤務態度の悪い社員を解雇したところ、当該社員が県の労働局に解雇が不当だとあっせんの申請をし、これにより紛争調整委員会によるあっせんが開始したというものです。

 紛争調整委員会によるあっせんは、中立公平な立場から行われる紛争の解決手法です。会社としても、誠実に対応する必要がありますが、どうしても、あっせん案が納得できない場合には拒絶してもやむを得ません。

●参考法令など
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律


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