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» 2006年01月20日 10時00分 公開

企業が知っておくべき法律知識:株主総会が商法改正によりIT化されたが、取締役会決議もIT化できる?

株主総会においてはIT化が進んだ。同様に、取締役会のIT化も進めることはできるものだろうか。

[第一法規]

lalalaw2001年の改正により、株主総会においては、議決権行使が電磁的方法によりできるようになるなど電子化されたと聞きました。取締役会においてはどこまで電子化を進めることができるでしょうか。


lalalaw2001年の改正により、株主総会においてはIT化が進みました。しかし、取締役会は、決議に至るまでの討議が重要ですから、原則として取締役が自ら直接出席することが必要です。現段階では、電子メールなどによる取締役会決議などを認めることは難しく、今後の検討課題と言えるでしょう。

解説

1.株主総会の電子化

(1)書面または電磁的方法による株主の議決権行使

 2001年の改正により、株主総会に出席しない株主の議決権について、取締役会決議により、書面(商法239の2)または電磁的方法(商法239の3)による行使を採用できることとなりました。

(2)電磁的方法の具体例

 ここで、電磁的方法の例としては、電子メールやWebサイトの閲覧などのインターネットを用いる方法のほか、電話やファクシミリ、CD-ROMやFDの交付などの方法が考えられます。ただ、今回の改正は、主に、「電磁的方法」について電子メールやWebサイトの閲覧というインターネットを念頭に置いていると考えられます。

(3)電磁的方法による株主総会

 なお、前述のとおり、今回の改正で電磁的方法による議決権行使も一定の要件の下で認められましたが、電磁的方法による議決権行使は株主総会日の前日までに行使しなければなりませんので(商法239の3<5>)、株主総会当日に株主が電子メールなどにより議決権を行使することはできません。

2.取締役会の特質

 取締役は、会社経営についての手腕を信頼されて会社から委任を受けた者であり、取締役は、会社に対し、受任者として善管注意義務を負います(民法644条)。

 このような取締役により構成される取締役会は、単に多数決による決定という結果のみが重視されるのではなく、結論に至るまでの討議こそが重要です。そこで、取締役は、取締役会に自らが直接出席し、その討論に参加して議決権を行使し、それにより会社の意思を決定し、また取締役の職務執行の監督を行うべきことになります。

 したがって、取締役会への代理人による出席は認められていませんし、また、書面による決議、あるいはいわゆる持ち回り決議は、いずれも認められていません。

3.テレビ会議システムによる取締役会

 テレビ会議システムによる取締役会の開催については、従来から、実務界から認めてほしいという声がありました。例えば、取締役の人数が多い会社、取締役が外国に常駐している会社などにおいては、全員の取締役が特定の日時・場所に一同に会して会議を開くことが困難であることもあるためです。そして、後記のとおり、法務省民事局参事官室は「取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応が良く分かる場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」であれば、テレビ会議システムによる取締役会を開催することも可能であるという回答を行い(「規制緩和などに関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由などの公表について」:1996年4月19日法務省)、話題となりました。

 この点については、特定の日時・場所に取締役が一同に会して会議を開く場合と同じ状況を作り出せるのであれば認めて良いとの考え方が支配的です。

4.電話会議による取締役会

 次に、電話会議による取締役会についてですが、現在の技術水準からすると、取締役が会議電話によって取締役会に参加しても取締役会に出席したものとは認められないという考えが支配的でした。会議電話では音声による情報しか認識できず、通常の開催方式からすると限定された情報の交換しかできないからです。

 しかし、この問題については、法制審議会においても検討対象とされ、「すでに解釈上一定の要件の下で許容されているテレビ会議と比較して、画像の送受信ができるか否かという点が異なるが、このような差異は重要なものではない。会議参加者が一堂に会するのと同様に、相互に十分な議論を行うことができるものであれば、現行商法の解釈上、電話会議も許容されるであろう」という意見が大半を占めました。そして、近時、電話会議の方法による取締役会の議事録を添付した登記の申請について、法務省事局商事課長から、当該申請については適式と認めて差し支えない旨の回答が出されています(2002年12月18日付法務省民商第3044号法務省民事局商事課長回答)。

 さらに、法制審議会の審議過程では、パソコンのチャット機能による取締役会決議を認めても良いのではないかとの意見がありましたが、時期尚早との反対意見が示されました。

5.電子メールなどの利用について

 取締役会の開催方法については、徐々に柔軟に考えられるようになってきています。しかし、現時点においては、電子メールなどの電磁的方法により取締役会を開催した場合、主に文字による情報しか伝達できません。したがって、取締役間の協議と自由な意見交換が確保されるとはいえず、会議体の基礎が欠けてしまうと考えられます。

 ですから、現段階で取締役会を電子メールなどの電磁的方法により開くことは困難と言えるでしょう。

裁判例など

  • 持ち回り決議の有効性に関する事例

(1969年11月27日最判・昭和40年(オ)1197号・民集23巻11号2301頁)

 株式会社の代表取締役が行方不明となる緊急状態が生じたので、ほかの取締役全員が、取締役Aに代表権を付与することを承認した場合において、その承認が、いわゆる持ち回り決議によるものであるときは、有効な取締役会の決議とは認められず、取締役Aは会社の代表権を取得しないとされた。

  • 規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について(抄)

(1996年4月19日 法務省)

15:取締役会のテレビ会議の容認

〔制度の概要〕:取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し、その過半数によって決定する。

〔関係法令など〕商法260条の2

〔要望元〕経済団体連合会。

〔理由〕:取締役間の協議と意見の交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みになっていれば、テレビを利用して取締役会議を開くことも可能である。


16:持ち回り決議〔書面決議〕の容認

〔制度の概要〕:取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し、その過半数によって決定する。

〔関係法令など〕:商法260条の2

〔要望元〕:経済団体連合会。

〔理由〕:取締役会は、取締役会の協議と意見の交換により、各取締役の知識と経験とを結集して会社の業務執行を決定するものであるが、持ち回りでは、取締役の協議と意見の交換をすることができない。

●参考法令など
商法239の2(書面による議決権行使)
商法239の3(電磁的方法による議決権行使)
商法259(取締役会の招集権者)
商法259の2(取締役会の招集手続)
商法259の3(招集手続の省略)
商法260の2(取締役会の決議方法)


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