教えます! 営業資金不足時の新たな資金調達策こんな時期だからこそ知っておきたい企業のファイナンス(1/2 ページ)

売り上げが下降気味のある中小企業。社長の悩みは金融機関から貸しはがしに遭わないかどうか。今後、金融機関から資金調達するに当たり、どのようなことに注意すればいいのか?

» 2006年01月30日 15時54分 公開
[第一法規]

lalalaw当社は、県内で10店舗のスーパーを展開している中小企業です。最近、大手のスーパーが進出してきており、売り上げが下降気味です。そのため、今後金融機関から貸しはがしなどがないかどうか心配です。  一方、最近では、金融機関が担保、保証に依存しない貸し出しを行うようになってきていると聞いています。今後金融機関から資金調達するに当たり、どのようなことに注意すればいいでしょうか?  また、今後さらに売り上げが減少し、金融機関から融資を拒否された場合には、どのように対処すればいいのでしょうか?


lalalaw

 金融機関の融資に対する姿勢は、財務数値のみならず、非財務数値を考慮し、借り手企業の経営実態をより正確に把握した上で融資を行うものへと変化してきています。例えば貴社においては、自社の経営基盤が何であるのか、自社の強み、弱み、ノウハウ、キャッシュフローの状況など自社の経営実態を把握した上で金融機関と取引を行うようにすることが必要です。

 融資が拒否された場合には、企業の経営実態を見直した上で、今後どのような形で企業を再建、再生していくのかといった再建計画を立て、金融機関との融資交渉をきちんと行っていく必要があります。

解説

1.中小企業の資金調達の実態

 中小企業は、企業数全体の過半数以上を占め、雇用の担い手であると同時に成長産業の担い手ですが、資本市場で機動的に資金調達することが難しく、金融機関からの借り入れに大きく依存しています。このような中小企業が金融機関から借り入れを行うに当たっては、会社資産を担保に差し出したり、また、社長の個人保証を付ける場合がほとんどです。

2.金融機関の状況

 大手企業は、近年経費削減、遊休資産の売却、不採算事業からの撤退などを行い、過剰な債務を減らしています。また金融機関による間接金融に代わり直接資本市場からの資金調達も多くなっています。これに対し中小企業は、資本市場から機動的に資金を調達することが難しく、金融機関から資金を調達せざるを得ないのが実情です。従って、金融機関の中小企業向け融資のウエイトは、高くなっているといえます。

 金融機関は従来、中小企業へ融資する場合、担保、保証(社長の個人保証も含む)に依存していました。これは、大企業に比べて融資額が小さく、中小企業の経営実態を個別に把握することにコストが掛かるといった理由のためです。

 しかし、今後成長する見込みのある中小企業への金融を円滑にすることは、地域経済を活性化させることにつながることから、金融機関は幾つかの取り組みを行っています。

 その一つに「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」があります。すなわち、中小企業金融の円滑化の観点から、監督官庁である金融庁は、金融機関が借り手企業と密度の高いコミュニケーションを取り、財務諸表のみでは分からない情報も把握し、企業の経営実態をより適切に把握した上で取引を行うことを要請しています。

 また、財務制限条項を活用するなど、担保・保証に過度に依存しない新たな中小企業金融への取組みも要請しています。

 検査マニュアルを機械的、形式的に適用するのではなく、経営者との一体性、企業の技術力、販売網や経営者の信用力、経営資質などを総合的に勘案すること、また、キャッシュフローを重視することとしています。これにより、中小企業の経営実態を把握し、リスクに応じた取り組みがなされています。

3.金融機関への対応

 借り手側である中小企業も、前記の金融機関の状況を理解した上で、金融機関との取り組み方を見直す必要があります。また、「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」(以下「マニュアル」)での検査ポイントを把握しておくことは中小企業にとっても融資交渉に役立つものといえます。

 マニュアルでは、中小企業とその代表者などとの一体性に着目する、数字に表れない企業の成長性に着目するとしています。つまり、金融機関は、借り手である中小企業と密度の高いコミュニケーションを取り、企業の技術力、販売網、経営者の経営資質、キャッシュフローの状況などを勘案し、企業の経営実態をより適切に把握することとしています。

 裏を返せば、これらを企業自身が積極的に把握することで自社の総合力を評価し、金融機関に対して、経営実態を明らかにしていくことが必要となります。

 しかし現実には中小企業は、自社を取り巻く環境、自社の強み、弱み、キャッシュフローの状況などを十分に把握できていないのが実情です。また、中小企業では、自社の計算書類をきちんと作成していないことも多いようです。金融機関にとっては、計算書類の精度と信頼性に問題があることを理由に、融資を積極的に行えないといった事情もあります。

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