「Xenは間違いなく仮想化の主流に」――VAリナックスXenSummitインタビュー(1/2 ページ)

オープンソースの仮想化エンジン「Xen」。今後の開発方針を決めるXen Summitが1月に開催された。そこでは何が話し合われたのか? 現状のXenが抱える機能的な問題点などを含め、同Summitに参加したVAリナックスの山幡為佐久氏に話を聞いた。

» 2006年02月16日 10時53分 公開
[聞き手:西尾泰三,ITmedia]

 英ケンブリッジ大学、米XenSource、そしてベンダー各社が協力して開発を進めているオープンソースの仮想化エンジン「Xen」の普及バージョンになると考えられているXen 3.0が昨年末にリリースされた。

Xenの普及によって最もマイナスの影響を被るとみられているVMwareは、VMware Playerに続き、VMware Serverまでもフリーで提供する動きとなり(関連記事参照)、仮想化製品市場では非常にホットな勢力争いが繰り広げられている。

 このような状況下、2006年1月17日、18日の両日、米国テキサス州オースチンにXenの開発関係者一同が集まり、Xen Summitが開催された。そこでは、今後の開発方針について、ベンダー各社の開発者間で活発な討議が行われ、各社の作業分担などが決まったという。参加ベンダーはIBM、Intel、AMD、HP、Red Hat、Novell、Bull、XenSourceなどと、日本からは富士通およびVA Linux Systems Japan(VAリナックス)の技術者が参加した。VAリナックスから参加した山幡為佐久氏にこのSummitで決定した内容などを中心に話を聞いた。

山幡為佐久氏 「技術的な面から見てもオープンソースの世界においてXenが仮想化の本流となるのは間違いない」と山幡氏

ITmedia XenSummitではどのようなことが決定されたのでしょうか? また、現状のXen 3.0から今後どのような機能が追加で開発されていくのでしょう。

山幡 今回のXenSummitで話し合われた内容は非常に多岐に渡りますが、大きなものとして完全仮想化ドメインの機能強化があります。Xen 3.0では、もともとXenが採用する準仮想化のほかに完全仮想化ドメインもサポートされています。しかし、準仮想化ドメインと比較してXen 3.0の完全仮想化ドメインにはまだ弱点があり、SMP対応、ドメインの移動、I/Oデバイス制御の効率化、資源割り当て制御などについて検討が行われました。おそらく、そう遠くないうちに実現されていくことでしょう。

 また、CPUアーキテクチャについては、現在正式にサポートしているx86アーキテクチャ以外に、IA64とPowerPCにも対応すべく開発が進められています。どちらもXen 3.0のマイナーバージョンアップ時にサポート対象となるでしょう。正式サポートとなるドメイン用のゲストOSについては、現状ではLinux 2.6だけですが、今後かなり近いうちにNetBSD、FreeBSD、Solarisなどが準仮想化ドメインに対応するでしょう。

 このほかの重要なトピックとしては、大規模サーバ対応があります。超大規模サーバでの利用を考えると、NUMA対応が必須となりますが、Xen 3.0は不連続メモリを上手く扱えない上、すべてのメモリを等価なものとして扱うため、この部分の機能強化の検討を行っています。また、大規模マルチプロセッサマシン上でマルチプロセッサ対応のOSを複数動作させると性能が劣化しがちですが、そこでスケジューラの改善が必須となり、幾つかの方式が検討されています。後は、Xen自体はマルチプロセッサに対応していますが、内部のデータ構造の排他粒度が大きいところがありますので、その改善も行わないといけません。

 そのほか、セキュリティーの問題や管理ツール、性能チューニングなどが話し合われています。

 Xen自体のLinuxへのマージという問題もありますが、LinuxカーネルにXenを取り込むことはLinux Kernel Developers Summitで承認されています。ですが、美しく単純な形とならなければそれが実行されることはありません。このハードルをクリアするには、実際のCPUアーキテクチャに対して、Xenアーキテクチャをどのような形で見せられるかにかかっていると思います。

ITmedia Xen 3.0が普及バージョンとなるような触れ込みは各社から出ていますが、Xen 3.0が機能および性能で劣っている点について教えてください。

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