MS研究機関がオンライン広告研究の新プロジェクトを続々と立ち上げ

Microsoftは同社の研究機関であるMicrosoft Research(MSR)とMSNを協力させることで、オンライン市場の新たな傾向を見極め、同社のオンラインサービスに速やかに組み込める技術革新に注力している。

» 2006年02月21日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoft Research(MSR)とMSNの共同研究では、急成長中のオンライン広告市場におけるシェアの拡大、検索エンジンMSN Searchの強化、新たなオンラインサービスのアイデア創出に重点が置かれる。Microsoftの研究機関であるMSRでは通常、純粋なコンピュータ科学の研究が行われているが、今回の一連の共同研究プロジェクトはMicrosoftのオンラインサービスに速やかに組み込めるような技術革新に注力する。

オンライン広告と検索に照準

 オンラインサービスの機能の面でも、売上高の面でも、何年も前からGoogleなどの競合他社に遅れを取ってきたMicrosoftだが、同社は2005年10月、オンラインサービスを刷新する計画を発表した。同社はHotmailやMessengerなど、既に定着しているMSNサービスを再設計し、Windows Liveという名称に変更するほか、企業ユーザー向けの新たなオンラインサービススイートOffice Liveを投入する計画だ。また、こうしたオンラインサービス全般にわたる一貫性のある設計方針の確立を図り、サードパーティ開発者が追加のオンラインサービスを構築する際の基盤となるプラットフォームの開発にも当たる計画だ。

 Microsoftは有料検索広告の目覚しい成長など、オンライン市場の最近のトレンドに乗じるだけでなく、新たなトレンドを見極めるなり、生み出すなりして、それを有益なビジネスへと転換したい考えだ。この目的のために、MSRとMSNが手を組み、以下のような研究チームが結成された。

adCenter Incubation Lab(adLab)
 2005年12月に北京とワシントン州レドモンドに開設された。この研究所には50人以上の研究者が所属し、Microsoftのオンライン広告プラットフォームadCenterの開発と改良に当たる。adCenterは2006年半ばにリリースされる予定だ。adLabの研究グループは今後、有料検索(特定のキーワードに対する検索結果のすぐそばに表示される権利を広告主が入札する)、コンテキスト広告(広告がサードパーティサイトの内容に基づいて表示されたり、ユーザーの行動に基づいて特定のユーザー向けに表示されたりする)、ソーシャルネットワークマイニング(例えば、ユーザーの友人の関心事に基づいて広告が絞り込まれる)、新しい広告フォーマット(ビデオ/フルスクリーン表示など)、広告バーコードリーダー(例えば、オフラインコンテンツをスキャンすればオンラインソースから詳細な情報を入手できる)などの技術に重点的に取り組むことになる。

 adCenterは当初、GoogleやOverture(Yahoo!)といった競合他社の有料検索プラットフォームに対するMSN Searchの対抗策と位置づけられていた。だが今ではMicrosoftは、オンラインTV番組/映画、オンラインゲームサービスXbox Live、およびMicrosoft Internet Protocol Television(IPTV)プラットフォーム(電話会社は専用のIPネットワークを介してTV番組を提供できる)など、より広範なサービスにadCenterを適用したい考えのようだ。このサービスがWindows LiveやOffice Liveユーザーの行動の追跡、およびそうしたユーザーへの広告の提供に使われることになるのは、ほぼ確実だ。さらには、Windows Mediaにも採用されることになるかもしれない。adCenterの取り組みが成功すれば、Microsoftはオンライン広告市場のシェアを拡大し、2008年までに同市場での売上を290億ドルにまで拡大させられるだろう。

Search Technology CenterとSearch Labs
 2005年10月に北京に設置されたSearch Technology Center(STC)と、2006年1月にレドモンドおよびシリコンバレーに設置されたSearch Labsは、MSNの検索技術の改良に取り組む。STCはデータマイニングやマシンラーニング(過去の結果やユーザーの行動に基づき、自動的に自身を変更するコンピュータアルゴリズム)などの技術を介して、検索結果のクオリティの改良を目指す。元IBM研究員のAshok Chandra氏が率いるSearch Labsは、検索結果のパーソナライズや通常の検索ペインよりも便利なインタフェースの開発など、ユーザー体験の改良にフォーカスする。

Live Labs
 2006年1月にシリコンバレーに設置された。Live LabsはOvertureとYahoo!で研究ディレクターを務めた経験のあるGary Flake氏の指揮のもと、オンライン市場の新たなチャンスの発掘や、そうしたチャンスを生かすためのWindows Liveサービスの迅速な開発と改良に当たる。adLabや検索技術の研究所と比べて設立綱領は曖昧だが、Live Labsには、テキストマイニング、検索/ナビゲーション、文書処理、サーバスケーラビリティなど、各種の分野の専門知識を備えたMSRスタッフが参加している。

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