コスト増が懸念されるMSライセンスプログラムの新体系（2/3 ページ）

[Paul DeGroot，Directions on Microsoft]

ライセンス順守の問題

　Standard CALとEnterprise CALは、従来のCALと同様に、あくまで製品の使用権を与えるものであり、サーバから提供される機能には何も影響を与えない。サーバから提供される機能は、サーバアプリケーションのインストール時にサーバオーナーによって決定される。Enterprise CALを必要とする機能がインストールされた場合、Standard CALを持つユーザーはそれらにアクセスすることもできるが、これはライセンス違反になる。

　サーバ製品のStandard CALを持っている企業がライセンスに違反しないためには、そのサーバをインストールする際に、Enterprise CALが必要な機能をすべて無効にしなければならない。そうした機能を有効にする場合には、そのサーバのすべてのユーザーに所定のEnterprise CALを持たせる必要がある。

　顧客はEnterprise CALだけを購入することはできず、Standard CALを持っていることが、Enterprise CALを使用する前提条件となっている。

　顧客がMicrosoftのライセンスルールに違反するリスクを低減するため、同社では、誰がどのCALでサーバにアクセスしているかを顧客が追跡できるように、サーバとともに監査ツールを出荷する計画だ。

　ソフトウェアアシュアランスを購入してサーバ製品のCALのアップグレード権を持っている顧客でも、その製品のEnterprise CALを取得するには、追加料金を支払わなければらないだろう。追加料金を支払わなければ、既存のCALはその製品の該当するバージョンのStandard CALにしかアップグレードできない。

Enterprise CALスイートが登場

　CALについて予定されているもう1つの変更は、従来のCore CALとは別個の新しいEnterprise CALスイートの導入だ。Core CALはよく使われるCALをまとめたスイートで、ボリュームライセンス顧客向けに販売されている。

　Core CALには、Windows Server、Exchange、Systems Management Server、SharePoint Portal Serverの現行バージョンのCALが含まれている。Core CALの価格は、これらのCALを個別に購入する場合よりも若干（約5％）割り引かれているにすぎず、Core CALの主な利点は、デスクトップPCのライセンス管理が容易になり、Microsoftのライセンス条件にうっかり違反してしまう恐れが少なくなることだ。Core CALは、アップグレード権を保証するソフトウェアアシュアランス（SA）と併せて購入しなければならないことになっている。このため、Core CALでカバーされているサーバの1つをアップグレードした場合、ユーザーは新しいサーバにアクセスする権利を必ず自動的に得ることができ、新しいCALを購入する必要はない。

　Microsoftは、Core CALよりもはるかに幅広いサーバやサービスのCALを含むEnterprise CALスイートを新たに導入する。また、これまでは顧客が特定のCALを個別に追加購入することを一部のケースでは認めていなかったが、この制限をなくす計画だ（なお、紛らわしいことに、Enterprise CALスイートには製品のEnterprise CALだけが含まれるわけではなく、一部のStandard CALも含まれる）。Core CALの構成と価格は今後も変わらない。

　Enterprise CALスイートに含まれるのは、Core CAL、Live Communications ServerのStandard CALおよびEnterprise CAL、ExchangeおよびSharePoint ServerのEnterprise CAL（この両製品のStandard CALはCore CALに既に含まれている）、Rights Management ServerのStandard CAL、Microsoft Operations Manager（MOM）のOperations Management License（OMLのライセンスにより、PCをMOMによるパフォーマンス監視の対象にすることができる）などだ。また、「System and App Security Subscription」も付属する。これはビジネスPC向けのセキュリティサービスおよびソフトを組み合わせたものだが、詳細は明らかにされていない。

　Enterprise CALスイートの価格は、基本Enterprise Agreement（EA：ボリュームライセンスプログラムの1つで、Microsoftの大口顧客に広く利用されている）で購入する場合でCore CALの約2倍の3年間約558ドルとなる見込みだ。しかし、Core CALの価格がCALを個別に購入する場合と比べて若干の割引となっているのに対し、Enterprise CALスイートの価格は、個別購入するよりも50％割安だ。

　また、今後はCore CALを補完するために製品のCALを個別に追加購入できるようになる。これは従来の方式からの転換だ。現在、Core CALに含まれるCALは、EAでは個別には販売されていない。Microsoftは顧客がCore CALを購入することを望んでいるためだ。例えば、Windows Server CALは、EAでは個別に購入することはできず、個別に購入するにはSelect（EAよりも割引が少ない）のような別のボリュームライセンスプログラムを利用しなければならない。製品のEnterprise CALの販売開始とともに、顧客はEAを利用する場合でも、ExchangeのEnterprise CALなどのようなCALを適宜買い足すことができるようになる。