ERPによる内部統制で危機管理力を強化する強い中堅企業のIT化シナリオ(3/3 ページ)

» 2006年03月08日 08時40分 公開
[鍋野敬一郎,ITmedia]
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シナリオ:ERPと内部統制

 大抵の中堅企業の会計システムは、総勘定元帳の残高を管理するだけの財務データ収集機能が中心で、その元データを受け渡す販売システムや購買システムとの連携はバッチで対応しているところが大半だと思われる。今年は、これを統制対応するために、個々にシステムを改修し、その文書化を行う年になりそうだ。

 こうした中堅企業におけるIT化のシナリオだが、まず「内部統制」対応のための範囲を決めた時点で関係する業務分野(財務、販売、購買、在庫、生産、人事給与など)を明確化し、ERPで置き換え可能な機能を絞り込む。次に業務の見直しも兼ねて、現場ユーザーの判断でERPに自社業務を載せていく。

 この際、ERPの標準機能で実現できないものは業務を見直すか、またはERP導入対象外とする。アドオンやカスタマイズは極力避け、早期稼働を最優先事項とする。稼働後に必要に応じて機能追加や外部連携システムの開発を行う。

 優先すべきはスピードとコストである。アドオンやカスタマイズの可否については、該当する利用部門のユーザーが直接申請し、経営トップを巻き込んで定例の取締役会がそれを承認するような仕組みをつくる。

 そうすると、不思議と追加開発項目がどんどん減る。誰しも社長に帳票や機能の追加開発の説明を事細かに直接要望するよりは、現場で対処できないかをまず考えるからだ。ここでは、導入テンプレートの活用も、ERP導入を最適化する手段として有効である。

 また標準機能で実現できない機能は既存システムの部分利用や市販パッケージを利用し、こうしたシステムと有機的にデータ連携するEAI(enterprise application integration)やETL(Extract Transform Load)を安価に適用するのもコツとなる(MicrosoftのBizTalk2006やSQL Server2005、アプレッソのDataSpider Servistaなどは投資費用が500万円以下と低コストの導入が可能な製品だ)。

 ERPはコストが掛かるものだが、内部統制強化の「ブーム」を契機として、ERP導入をIT化シナリオの目玉にすることも一考すべき取り組みといえる。

業務処理統制に対応したシステムと文書化
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