XMLデータベース市場に追い風、その活用法は?(1/2 ページ)

XMLの浸透に伴い、XMLデータベース市場が急拡大している。XMLデータベースが生きる領域はどこなのか、さらに広く使われるための課題は何なのか。

» 2006年03月09日 10時09分 公開
[谷川 耕一,ITmedia]

 富士キメラ総研が実施した市場調査によると、XMLデータベース市場が2004年の6億4000万円から2008年には9倍の58億円に達するという。昨年の伸び率も50%に達しており、金額は9億6000万円となったもよう。今後もこのペースを超える勢いでXMLデータベース市場が拡大すると富士キメラ総研では予測している。

 XMLデータベース市場拡大を後押しする要因としては、XMLデータの認知度の向上および政府公共機関や業界団体などでの率先したXMLデータの採用など、XMLそのものが市場に急速に定着してきた背景がある。

 2006年後半に投入されるであろうMicrosoft Office 12がXMLデータ形式を採用するなど、さらなるXMLデータの増加も予測される。日本版SOX法対応などコンプライアンス重視の企業活動を支えるためにも、コンテントマネジメントや情報の徹底したアーカイブなど、XMLデータの新たな活躍場面の増加が期待できる。

 XMLデータベースが市場に投入された2000年ころは、XMLの持つ柔軟性を武器にリレーショナルデータベース(RDB)に戦いを挑んだ。しかし、RDBでもXMLを扱う機能の実装が加速し、むしろRDBのXML機能に注目が集まる結果となった。

 さらに、このとき登場した第一世代のXMLデータベースは、大容量データを十分に取り扱えなかったり、処理性能についてもユーザーが必ずしも満足できるものではなかった。そのため、XMLデータベースは登場まもなくニッチ市場へと追いやられてしまったのだ。

 第二世代のXMLデータベースは、こうした第一世代の課題を克服し、2003年ころから登場してきた。大容量データを高速に検索できるようになったのだ。これにより、新たなXMLデータベース市場が形成されたと言ってもいいだろう。富士キメラ総研の市場調査において、47%で2005年のシェアトップにいるNeoCore、19%で2番手につけたSHUNSAKUは、どちらもこの第二世代のXMLデータベース製品だ。

XMLデータベースが生きる領域

 実際にXMLデータベースが利用されているシステムには、大きく2つの方向性がある。1つはXMLでなければ、便利で使いやすいシステムを実現できない分野。これは、出版や印刷、電子カルテ化を進める医療など、正規化できないドキュメント型のデータを大量に抱え、それを表現するためにXMLの柔軟性が求められる分野だ。これまでは必要な柔軟性を無理やり制限してシステム化していたのが現実だろう。

 もう1つが、既存のさまざまなシステムのデータをXML化し、XMLデータベースで統合するというシステムだ。異なる複数のシステムをRDBで統合するには、システムごとにタイプの異なるデータ形式を1つに統一してRDBに定義できなければならない。このRDBの設計には専門技術と時間を要し、そのため開発コストも増大する。変化の激しい現状では、統合DBを設計、構築しているあいだに仕様が変化するなどといったことも発生しかねない。XMLデータベースであれば、このシステムを容易に統一できるという。

 乱暴な表現をすれば、細かいことは考えずに既存システムのデータをXML化し、そのままXMLデータベースに格納すればいいのだ。XMLデータベースであれば、格納してからでも検索方法を変更したり、データそのものも柔軟に形式を変えることができる。

 この2つの分野でシステム化する際に重要となるのが、DTD(Document Type Definition)と呼ばれる文書型定義なしで、データベースにXMLデータをそのまま格納できる機能だ。第二世代XMLデータベースでは、高速、大容量化に目が奪われがちだが、DTDを必要としないスキーマレスであることが、もう1つの大きなポイントだ。この部分がRDBのXML機能との歴然とした差になってくるのだ。

 逆に言えば、DTDを事前に定義できるようなデータを扱うのであれば、RDBのXML機能でも十分扱えるということだ。

 シェアトップのNeoCoreを販売している三井物産では、よりXMLの柔軟性を活用できる分野に注力していくという。従来からの出版や印刷業界はもちろん、新たに製造業が抱えている多種、膨大なマニュアルなどのドキュメントを構造化し再利用できるように提案していくという。

 SHUNSAKUを提供する富士通では、ドキュメントデータの活用はもちろんだが、システムの統合化のニーズが高い。同じ製造業でも、「見える化」の有力な道具としてXMLデータベースを活用していくという。見える化を実現していくと、さらなる「見える化」の要求が出てくるのが普通だ。そのときに、XMLデータベースの「データの柔軟性」「使い方の柔軟性」が威力を発揮してくる。

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