SAPとMicrosoftの今――協調と競争のリスクを追う(3/5 ページ)

» 2006年03月15日 07時00分 公開
[Chris Alliegro,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

アプリケーション接続

 Project用のSDKとBizTalk Server用のアダプタを利用して、開発者はこれらのアプリケーションとSAPのERP製品やCRM製品を接続するソリューションを構築できる。

Project 2003 SDK
 2004年10月にリリースされたこのSDKは、「ソリューションスターター」、コードサンプル、ドキュメントで構成されており、Microsoftのプロジェクト管理クライアント/サーバアプリケーションであるProjectと、ERP、CRMなどの社内システムとを統合するシステムインテグレーターやソリューションプロバイダー向けに提供されている。

 このSDKの最も重要な構成要素の1つであるProject SAP Connectorは、mySAPの人事および財務アプリケーションとProjectの統合をサポートしている。例えば、ユーザーはProjectのタイムシートから実働時間のデータをmySAPの財務アプリケーションにエクスポートできる。このSDKは、開発者がMicrosoftのEnterprise Project Managementソリューション(Project ProfessionalクライアントアプリケーションとProject Serverを含む)を拡張したり、他のシステムと統合する場合に有益とみられる。ただし、現状ではこのSDKの構成要素は、初期作業の土台とサンプルにすぎず、簡単に利用できるソリューションではない。

BizTalk Adapter for SAP
 このアダプタにより、BizTalk ServerはSAP R/3やmySAPとデータを交換できる。このアダプタの主要機能の1つは、SAPのプロプライエタリなデータ形式とスキーマ、例えば、SAPコンポーネント間やSAPコンポーネントと外部システムの間でデータを交換するためのIDoc(Intermediate Document)形式などを、BizTalk Serverと互換性のあるXMLスキーマに変換する機能だ。この機能により、BizTalkはSAPシステムと他のシステムの間のトランザクションを仲介できる。例えば、企業はこのアダプタを使って、SAP R/3 ERPシステムとSAP以外のCRMシステムの間でデータを交換できる。このアダプタを利用することで、こうしたソリューションの開発をスピードアップすることが可能になる。開発者がカスタムSAPアダプタを開発、保守したり、サードパーティーのコンポーネントを別途購入してサポートしたりすることが不要になるためだ。

データベースと関連サービスの相互運用

 SQL ServerをSAPシステムのバックエンドデータストアとして使用することは、MicrosoftとSAPの協業の最も明確で長期的な重点テーマの1つだ。SQL ServerはSAPの顧客の間でデータベースの第1の選択肢となっている(SAPによると、新規導入されているSAPシステムのほぼ半数はSQL Server上で運用されている)。

 Microsoftは、SQL Server ADO.NET Provider for SAPという接続コンポーネントも提供している。これは、SAPシステムでどのようなバックエンドデータベース技術が使われている場合でも、SQL Server 2005のビジネスインテリジェンス(BI)コンポーネントがSAPシステムのデータにアクセスできるようにするものだ。例えば、このプロバイダにより、SQL ServerのETL(抽出、変換、ロード)技術であるIntegration ServicesがSAPデータにアクセスできる。このため、データウェアハウスにデータを供給するIntegration Servicesソリューションで、SAPシステムのデータベースをデータソースの1つにすることができる。また、このプロバイダにより、Microsoftのレポート作成/発行/配布技術であるSQL Server Reporting Servicesは、SAPシステムからデータを取り出し、それらを基にレポートを生成できる。

開発者向けツールの共存

 MicrosoftとSAPは、Microsoftの開発ツールと言語を使ったSAPベースのカスタム開発のサポートを進めてきた。その成果として、前述したSAP PDKに加えてSAP .NET Connectorがある。SAP .NET Connectorでは、開発者は.NETアプリケーション内からSAPシステムの機能を呼び出してSAPデータにアクセスできる(このコネクタはmySAPとR/3の両システムと互換性がある)。Microsoft自身のプラットフォームが、.NET言語で書かれたコードからCOMベースAPIへのアクセスを可能にする場合のように、SAP .NET Connectorは、.NETプログラムとSAPのAPIのやり取りを管理する特別な関数(プロキシクラスと呼ばれる)を作成する。こうした機能により、Visual Studioで作業を行う企業開発者やISV開発者は、SAPシステムへのアクセスや更新を行うアプリケーションの開発を効率化できる。そうしたアプリケーションの一例として、SAPシステムの人事データに基づいて会社の組織図を表示する社内セルフサービスWebアプリケーションが挙げられる。

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