OpenBSDのシャオ・デ・ラード氏に聞くFocus on People(2/3 ページ)

» 2006年03月31日 14時36分 公開
[Manolis-Tzanidakis,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

ラード 今度のリリースで力を入れてきた部分です。温度・電圧・冷却ファンのセンサーデータを提供するサブシステムが3つあり、それらを中心に統合したシステムを作りました。何か異常があれば、デーモンが警告を発するようにすることができます。

 その中の「ic2」サブシステムについてですが、Linuxの世界で使われているlmセンサーパッケージはマシンごとにあちこちを手作業で構成する必要があります。OpenBSDでは、各デバイスを注意深く探査することで、どのPCでも構成作業なしで使えるようにしました。ほぼすべてのOpenBSD 3.9マシンで、センサーが使えるようになります。

 しかし、3.9をリリースするには、まだまだやるべきことが残っています。イベントの通知に関してセンサーデーモンにまだ弱いところがありますから。わたしたちは素晴らしく優れたものにしたいのです。

NewsForge ftp-proxyが新しくなります。従来のFTPプロキシデーモンも十分に動いていましたが、新しくした理由をお聞かせください。

ラード FTPは開始の手順が厄介で、それをプロキシで完璧に処理するのはかなり困難なのです。新しいデーモンでは設計を改善し、IPv6にも対応しました。

NewsForge NFE(Nvidia nForce MCP イーサネット)アダプタについてですが、どのような方法でこのドライバを作ったのですか。リバースエンジニアリングでしょうか。

ラード Nvidiaは解説資料を誰にも開示していません。代わりに巨大なバイナリコードの固まりを提供し、利用者はそれをカーネルにロードすればよいと考えているのです。数年前のことですが、ドイツにいるLinux系の人たちがこのドライバをリバースエンジニアリングしました。ところが、ざっと聞いた限りでは、Nvidiaから中止を求められ、活動を放棄したのだそうです。まったく驚きです。それはともかく、(ドライバの製作に着手した)ジョナサン・グレイ氏が技術的な細部について数点彼らに支援を求めたのですが拒否されました。このことは信じられないことでしたのでわたしからも支援を求めてみたのですが、やはり断られました。Linuxの開発者がですよ。ベンダー提供の中身の分からないバイナリを動かさざるを得ない事態にコミュニティーを追い込むようなことをするのですからね。オープンソースの誇りはどこにいったのでしょうか。しかし、理解し難い人たちがいるものです。彼らの信念は、わたしよりもずっと柔軟性があるのでしょう。

 ドライバについては、ダミエン・バーガミニ氏が加勢し、問題点はすべて改修しました。うれしいことに、Nvidiaのバイナリ塊よりも良好に動作しています。大きさもずっと小ぶりで、ソースコードもきれいです。

NewsForge 以前、OpenBSDコミュニティーの運動として、ハードウェアベンダーに自社製品(イーサネット、ワイヤレス・ネットワーク・アダプタ、RAIDコントローラーなど)の解説資料を開示するよう求めたことがありました。OpenBSDなどのオープンソースプロジェクト用のドライバを書けるようにするためですね。開示したベンダーもありましたが、要請に応えなかったベンダーもありました。なぜベンダーは開示しないのでしょうか。OpenBSDでは自社製品を使ってほしくないと考えているのでしょうか。

ラード ベンダーから解説資料を引き出すには、いつでも何らかの働きかけが必要ですが、中には固辞するベンダーもあります。また、Linux開発者がベンダーと非開示契約(NDA)を交わすこともよくあります。その開発者は魔法を使ってLinuxドライバを書けば満足でしょうが、そこに使われた魔法が分かる人は、その開発者を除けば、世界中に誰一人いないことになります。NDAに署名すればLinuxで動くドライバが手に入ります。それは確かですが、その内容には魔法がかかっているため簡単には理解することができません。不具合があってもほかの人には改修できないのです。秘密ばかりなのですから。これでは、バイナリ塊のソースコード版でしかありません。

 ベンダーが情報を出そうとしないのには、いろいろな理由があるでしょう。しかし、利用者から見れば、どの理由も理屈が通りません。車であれば、部品の資料はほぼすべて手に入ります。同じように、コンピュータの部品についても資料を入手できるのが当然です。

 ベンダーから突然話があり、頼みもしないのにハードウェアとソフトウェアを提供されることが、ときどきあります。そうした例は増えていますが、大概はアジアのハードウェアメーカーですね。彼らは自社のハードウェアがどのシステムでもサポートされることを望んでいます。これに対して、特に米国の企業はますます閉鎖的になっています。どのみち無駄だろうと問い合わせをちゅうちょすることもたびたびです。その結果、高機能あるいは最新の米国製品がなかなかサポートされないという事態が発生します。資料がないという理由だけのためにです。これは問題には違いありませんが、重く考える必要はありません。なぜなら、世界が買っている製品の99%はアジア製ですから。例えば、アジアの802.11ベンダーが占める市場は5年前には1%しかありませんでしたが、1〜2年以内にインテル(同社のラップトップ向けCentrinoプラットフォームブランドは特定のワイヤレスチップセットを想定している)と市場を分け合うことになりそうです。アジアの企業は、RAlinkやZydasなどですね。

NewsForge OpenBSDの利用者は少し増えているようです。今、ハードウェアメーカーに資料を開示するよう求めれば、受け入れられる可能性が高いかもしれません。

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