Fiat車の次はあるか? MS車載OSの2本立て戦略(1/2 ページ)

Windows Mobile for Automotive(WMFA)は、標準ハードウェアリファレンスデザインを採用しており、Windows Automotiveよりも低コストで実装できる。だが、今のところ顧客は1社しかない。

» 2006年04月19日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftの新しい車載端末向けソフトウェアプラットフォーム「Windows Mobile for Automotive(WMFA)」により、Fiat車ドライバーはBluetooth対応の携帯電話と携帯音楽プレーヤーをハンズフリーで操作できるようになる。WMFAは標準ハードウェアリファレンスデザインを採用しており、Microsoftの従来の車載端末向けプラットフォームよりも低コストで実装できる。だが、獲得した顧客はまだ1社だけであり、将来のバージョンは大幅に異なったものになる可能性があることから、WMFAが本格的なプラットフォームなのかどうかには疑問符がつく。

8年が経過したWindows Automotive

 Microsoftは1998年に同社初の車載端末向けソフトウェアプラットフォームをリリースした。現在では「Windows Automotive」と呼ばれる同社の車載端末向けプラットフォームは、Windows CEをベースに構築されており、各種の車載端末機能に対応する500以上のコンポーネントで構成されている。こうした機能には、ドライバーの注意力低下の防止(走行中の全画面表示の無効化など)、ナビゲーションシステム用の3Dグラフィックス表示、コンピュータ診断システムのデータの読み込み、表示などが含まれる。2005年7月にリリースされた最新バージョンのWindows Automotive 5.0では、ユーザーインタフェース開発ツールキットが追加されたほか、より大量の仮想メモリがサポートされ、音声認識や3Dナビゲーション表示の向上など、アプリケーションの一層の高度化が可能になった。

 2006年1月時点でWindows Automotive採用デバイスは、アルパインやパイオニアのアフターマーケット向けナビゲーションシステムや、自動車メーカー8社の標準またはディーラーオプションの車載デバイスなど、61モデルに達している。だが車載端末向けソフトは、Microsoftの大きな収入源ではない。2005年6月期(Microsoftが車載端末向け事業の財務データを報告した最後の会計年度)には、Windows Automotiveと位置情報ソフト製品であるMapPointの売上高は約8000万ドルで、モバイル&組み込み部門の売上高の24%程度となり(MapPointはその後MSN部門に移管された)、同社の同年度の全売上高(397.9億ドル)に占める割合は微々たるものだった。2003年のGartnerのレポートでは、Windows CEの車載市場でのシェアは16%とされていた。この市場は非常に細分化されており、QNXやWind Riverといったプラットフォームベンダーの製品や、Linuxベースのカスタムソリューションが競合している。

 それでも、Microsoftはこの市場への取り組みを継続している。この市場には大きな可能性があるからだ。2005年には米国だけでも1700万台近くの自動車が販売されており、世界販売台数は1億台を超えたもようだ。その一部に採用されるだけでも、車載ソフトはMicrosoftにとって大きなビジネスになる。

WMFAの目玉は開発コストの低減

 MicrosoftとFiatは2006年3月、Fiatの新車のいくつかのモデルにWMFAベースの「Blue&Me」システムがオプションで搭載されると発表した。

 WMFAはWindows Automotiveをベースにしているが、特定のハードウェアリファレンスデザインに対応しており、限られた機能セットしかサポートしていない。Microsoftによると、このアプローチは自動車メーカーの製品化のスピードアップと開発コストの低減につながる(Windows Automotiveとは異なり、WMFAはアフターマーケットメーカーには販売されていない)。

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