Oracle、初の通信サービスロードマップの背後には(2/2 ページ)

» 2006年04月19日 18時31分 公開
[Lisa Vaas,eWEEK]
eWEEK
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 Oracleは現在、通信事業者や一般企業ユーザーに対して、プロビジョニングの利用を促進すること、各種標準を早急に採用すること、IPベースネットワークへ移行することを勧めているという。

 このようにするためには2つの道があると、フィリップス氏は述べている。すなわち、世界の通信事業者の90%が利用しているアプリケーション、およびインフラストラクチャソフトウェアを提供するOracleを選ぶか、あるいは名も知らない企業を選ぶかだ、というのである。

 Oracleのサーバ技術開発担当シニアバイスプレジデント、トーマス・クーリアン氏は、同社のSDPは、通信サービスプロバイダーが直面する次の3つの問題を解決できると話す。

 1つ目の問題は、VoIP/仮想PBX/カンファレンス機能などの音声サービス、プッシュ型電子メール/メッセージング/IMSなどのデータサービス、モバイルコンテンツ配信などのモバイルサービスを含む、新たなサービスをすぐにでも立ち上げ、提供する必要があるということだ。

 通信業界が抱える問題の2番目の急務は、統合ネットワークの活用である。

 今日の通信事業者は、あらゆるサービスを統合IPネットワーク上で提供することを目指し、取り組みを進めている。

 クーリアン氏は、通信事業者は従来使用してきたきわめて特殊なシステムやソフトウェアを標準ベースのSDPへ移行し、SOAを導入して新たなサービスを開発し、既存システムおよびパッケージ化されたソフトウェアと統合しなければならないと話す。

 最後の問題は、過去に行った投資を効果的に活かしていくことだ。例えば、プロビジョニングなどのOSS(Operational Support Systems)や、課金システムをはじめとするBSS(Business Support Systems)への投資を無駄にしないようにする必要がある。

 現在利用できる一部のSDPは、IMSに対応している。また、同業界で最も支持されている「SIP Application Server」「Presence Server」「Proxy Registrar」「Location」を含み、Oracleが完全なIMS対応とうたうインフラストラクチャを実現するという。OracleはこうしたSIPインフラストラクチャを、HotSipの買収によって手に入れた。

 さらに、既存のネットワークをサポートすることも可能になっている。OracleのSDPには、非同期的なイベントベースのプログラミングが可能になるようにJ2EEを拡張するプログラミング環境が含まれており、Oracleによれば、これが通信事業者の既存ネットワークをサポートし、活用するために重要だという。Net4Callの買収により、OracleのSDPは「Java API Parlay X Web Services」規格に対応した。

 このほかにも、OracleのSDPはネットワーク適合層を提供している。既存のネットワーク要素や通信機器に接続するための複数のアダプタが用意されているので、サービスプロバイダーは新しいサービスを迅速に展開することができるのである。また、各機器が、SMSやMMSなどのさまざまなプロトコルでやり取りされる携帯デバイスのコンテンツにアクセスできるようになる、メッセージングコンポーネントも実装された。

 結果としてOracleは、「Oracle Database 10g」やRAC(Real Application Clusters)、TimesTenのインメモリデータベースといった、キャリアの使用にも耐えるコミュニケーションインフラストラクチャを擁するようになったのである。

 今後は、通話制御や課金システム、デバイス管理およびデバイスレポジトリ、モバイルコンテンツ配信/VoIP/仮想PBXといったサービスの組み合わせなどに取り組んでいく予定だという。

 フィリップス氏とクーリアン氏は、会見後の質疑応答で、Oracleの全体的なミドルウェア戦略にオープンソースはどのように関わってくるのか? と問われた。フィリップス氏はこれに対し、先日Oracleの最高経営責任者であるラリー・エリソン氏がFinancial Timesの取材に応じて語ったのと同じく、Oracleはスタックおよびオペレーティングシステムなどすべてのものを自社でコントロールしていくためにも、Red HatやNovellといったオープンソースベンダーの買収を検討していると述べるに留まった。

 「オープンソースはわれわれの友だと考えている。通常なら働きかけることができないような新しいユーザー層をOracleにもたらしてくれたし、彼らの教育にも一役買ってくれた。こうしたユーザーは、将来的にOracleの顧客になる可能性があるのだ」(フィリップス氏)

 同氏は、「(しかし、)結局のところ所有できない知的財産のために、大金を支払うつもりはない」とコメントしており、Red HatおよびNovellの買収案の背景を明らかにした。

 あるアナリストは、Oracleが得るであろうメリットを考えると、Red HatやNovellは確かに高い買い物だが、UbuntuやMandrivaであれば、買収先としては格好のターゲットだと、eWEEKに語っている。

 いずれにしろ、Oracleが戦略を進化させることによってオープンソース界に現れる変化を、業界は興味津々といった体で見守っていると、フィリップス氏は言う。「今はまだ多くは語れない。だが、このままではアプローチできないユーザーに近づく手段としてのオープンソースに、Oracleは関心を深めている」(フィリップス氏)

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