災害時、安否確認のために自治体は何をすべきか? 激変! 地方自治体の現実(2/3 ページ)

» 2006年04月20日 08時30分 公開
[中村文雄,ITmedia]

新潟県中越地震で注目されたIAAシステム

 2004年に発生した新潟県中越地震で、IAAシステムはひときわ大きな注目を浴びた。IAAシステムは常に稼働しているが、震度5弱の地震が発生した場合に、その地震に関するスレッドを立ち上げることになっている。IAAシステムには小規模、中規模、大規模の3種類があるが、新潟中越地震の場合は、発生から2時間後に中規模システムを立ち上げた。

 それまで災害地からIAAシステムに対する依頼はなかったが、新潟県中越地震の際には新潟県庁からIAAシステム担当者に対し、新潟県庁のホームページからIAAシステムへのリンクを張ってもよいかという旨の連絡が入った。新潟県庁側はリンクによってIAAシステムに大量のアクセスが流れることを懸念しての連絡だったが、IAAシステムは大量アクセスを前提にしており、新潟県庁の依頼はすぐに受け入れられた。

 そのとき、地震発生から3日が経過していたが、新潟県庁には安否問い合わせの電話が殺到しており、県庁の業務が停滞する状態になっていた。県庁に掛かってくる電話の実に99%が安否問い合わせであり、それが常に鳴り続けていた。その結果、救助、消火に関する緊急の電話がつながりにくくなっていた。

 さらに3日後、新潟県庁からの依頼もあり、IAAシステムは中規模システムから携帯電話によるアクセスが可能な大規模システムへ切り替えられた。IAAアライアンス事務局長を務める情報通信研究機構・情報通信セキュリティ研究センターの海老名毅氏は、新潟県中越地震を次のように振り返る。

 「新潟県庁のサイトにリンクが張られたことで、アクセスが急激に増加した。最終的な登録者は800件を超え、8万件弱の検索が実行された。IAAシステムに安否確認の情報処理を任せてもらい、自治体に本来の緊急業務をやってもらうことが理想。それによって人命救助などの活動をアシストできる」(海老名氏)

新潟中越地震のときに新潟県庁のホームページに掲載されたIAAシステムへのリンクページ

 このとき、新聞などのメディアでIAAシステムが紹介され、大きな注目を浴びることになる。多くのサイトにIAAシステムへのリンクがあれば、その役割を十二分に果たすことができる。海老名氏は「できれば、アクセス数の参考資料になるので、リンクを張った後に当方へメールで知らせてもらえればありがたい」と協力を求める。

 災害時の混乱においては、緊急を要する事柄がIAAシステムに書き込まれたこともある。「新潟中越地震の際には、IAAシステムに『避難したい。助けてくれ』という連絡が書き込まれたため、わたしの方で関連する自治体に電話を掛けて救助を要請した例もある。情報を切り分け、適切なところに情報を送信できる工夫が必要だと痛感した」(海老名氏)

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