災害時、安否確認のために自治体は何をすべきか? 激変! 地方自治体の現実(3/3 ページ)

» 2006年04月20日 08時30分 公開
[中村文雄,ITmedia]
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首都圏直下型地震にも対応可能なIAAシステム

 2004年末に発生したスマトラ島沖地震は前代未聞の津波被害をアジアの海岸地帯にもたらしたが、その際、タイの大学教授からIAAシステムのスレッド立ち上げ依頼があった。そこで地震の5日後に東京側にスレッドを立ち上げた結果、最終的には1100件の登録があり、5万件以上の検索が行われた。

 IAAシステムの開発当初は地震災害を中心に考えていたが、全米同時多発テロのような事件にも多数の安否確認の問い合わせがある。また、スレッドを立ち上げるのは、基本的には震度5弱以上の場合としているが、震度5弱を超えても人口密度が低い場合は大きな被害とはならないため、アクセスは少ない。ただし、震度が小さくても安否確認が必要となる場合がある。

 情報通信研究機構・情報通信セキュリティ研究センター推進室室長の中沢淳一氏は次のように説明する。

 「2005年に千葉県で起きた震度5程度の地震でも、多くの方が安否確認を必要としていた。これは、固定電話と携帯電話で輻輳(ふくそう)が起きて通じなくなったから。通信状態次第では震度5弱程度でも安否確認が必要となる場合がある」(中沢氏)

 IAAシステム開発のきっかけが阪神・淡路大震災であったように、日本においては地震災害における安否確認が重要になる。例えば、首都圏直下型地震が発生した場合、政府の中央防災会議は650万人の帰宅困難者を想定している。もし、そのような数の帰宅困難者が発生すれば、膨大な安否確認が必要となる。

 「IAAシステムでは、想定される数百万人の帰宅困難者が1時間以内に登録できることを目指している。データベースやWebサーバの負荷分散はもちろん、単一での構成でもレイヤを分けて処理しているので、目標とする負荷には耐えられると思われる」(海老名氏)

NICT内に設置されたIAAシステムのサーバ

自治体の連携による運営体制を模索中

 IAAシステムは実用化のフェーズに入り、今後は運営主体やコスト面の検討に入る。海老名氏は、IAAシステムの実用化について次のように説明する。

 「この5年間、災害の際にIAAシステムを試験運用し、新潟県中越地震などで一定の成果を上げてきた。実用化のフェーズに入ったことで、今後は、自治体などが安定的に利用できる運用体制を作る必要がある。そのために、IAAシステムの機能やコスト負担について自治体にさまざまな聞き込みをしているところだ。現在、自治体が連携して運営する体制作りを検討しているため、関心のある自治体にはぜひ参加してもらいたい」(海老名氏)

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