IBM――「Blue Geneは省エネ・省スペース」

IBMは「省エネ・省スペース」を武器に、現在世界最速のスーパーコンピュータ、Blue Geneをウォール街に売り込もうとしているようだ。さらにそのために、グリッドミドルウェアベンダーとの提携計画を進めている。

» 2006年04月25日 15時18分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK

 今日、多くのユーザーが、消費電力が少なく、設置スペースが小さくて済むシステムを求めている。この状況は、ウォール街の金融分野を含む広範な業界に「Blue Gene」スーパーコンピュータを売り込もうとしているIBMにとって、大きなビジネスチャンスをもたらすものになりそうだ。

 4月24日にニューヨークで開催された「Linux on Wall Street」カンファレンスにおいて、IBMでディープコンピューティングを担当するデイブ・テューレック副社長は、「IBM Blue Gene:金融業界のコンピューティングにアドバンテージをもたらす優れた拡張性と電力効率」と題された講演を行った。同氏はその中で、「今日、ユーザーにとって最大の問題は、消費電力、設置スペースおよびシステムのリサイクル可能性だ」と語った。

 テューレック氏は、すべてのユーザーはそれぞれが抱えている問題に対するリアルタイムのソリューションも求めているが、こういったユーザー個別の問題の間には共通性はないと述べ、あらゆる問題を解決できる特効薬は存在しないと指摘した。「逆に、あらゆる問題を引き起こすものは存在する。ユーザーが求めていないものを提供するような製品がそれだ」と同氏。

 同氏によると、オープンソースとLinuxはイノベーションを促す触媒であり、IBMもオープンソースとLinuxを支持してきたという。「将来は袋小路ではないという見方を持つことが大切だ」と同氏は語り、IBMでは、1秒間に1000兆回もの計算を実行できるペタフロップシステムを目指すなど、今後もさらに技術開発を推進するとした。

 IBM System Blue Geneは1999年に初めて発表され、現在、世界最速のスーパーコンピュータである。IBMのリサーチメンバーで、Blue Geneのユーザーでもあるアラン・キング氏は、約100名の聴衆を前にして、「Blue Geneは拡張性に優れ、アプリケーションの実行における持続性能は100TFlopsを上回る」と述べた。

 「IBMのシステムにおける今後の課題は、協業によるイノベーション、オープン化、仮想化などに関連したものだ。オープン化は、われわれの技術資産を市場で生かすための手段である」とキング氏は述べた。

 Blue Geneシステムを構成するのは、2プロセッサ型チップを搭載したカードである。これらのカードはラックに組み込まれ、1台のラックは2048個のプロセッサを搭載し、1000ノードのシステムとして動作することができる、と同氏は説明する。

 「Blue Geneの性能の秘密は、バックエンドに多数のネットワークが組み込まれていることにある。6万5000個ものプロセッサが搭載されているため、システム障害を回避するためにはインテリジェントなネットワークが必要だった。高速で効率的であるだけでなく、信頼性の高いシステムを作り上げるために大いに努力した」(キング氏)

 Blue Geneは、1台のラックのスペースに1000ノード(2000プロセッサ)を収容する。各ノードは1Gバイトのメモリを搭載する。つまり、1台のラック(価格は1500万〜2000万ドル)で1Tバイトのメモリを装備することになる。「だからBlue Geneシステムはものすごい性能を実現するのだ」(同氏)

 キング氏によると、Blue Geneはマルチテラフロップ級システムへの拡張性を実現するために斬新な手法を採用しており、パフォーマンス、価格対性能比、大規模なスケーラビリティ、電力/冷却/設置スペース要件の緩和の各面において業界をリードしているという。

 「Blue Geneは、大規模なスケールアウト能力と、なじみのあるプログラミング環境の維持という2つの要素のバランスという点でもユニークな存在だ。また、金融商品の価格設定やリスク分析など広範な演算主体型ワークロードにも適用することができる」と同氏は話す。

 しかしIBMには、Blue Geneはグリッドミドルウェアと連携する必要があるという意見も顧客から寄せられているという。このため、同社は向こう2カ月以内に、この問題に関連してグリッドミドルウェアベンダーと共同で何らかの発表を行う予定だ。

 「Blue Geneは、ファイル記述子および複数スレッドを処理することができるLinuxの機能縮小版で動作する。グリッドミドルウェアベンダーと提携すれば、金融業界などのユーザー企業は、既存の環境にBlue Geneを組み込むことが可能になる」(キング氏)

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