サン・マイクロシステムズ社長末次朝彦氏「サン全体での日本の売り上げ比率倍増へ」(1/2 ページ)

今年4月1日付で社長に就任した末次朝彦氏。サンは末次氏に日本法人の飛躍を託した。新社長が胸に秘める飛躍の戦略とは。

» 2006年05月11日 07時00分 公開
[松岡 功,ITmedia]

「いよいよ末次さんの登場ですね」。同業他社やサンの顧客からもこんな声があがるように、末次新社長への期待は大きい。日本のIT業界のキーパーソンのひとりとして幅広い人脈を持つ末次氏は、日本IBMに21年間在籍して営業部門およびマーケティング部門の要職を歴任した後、1999年にサンに入社。一貫して営業部門にて主にソフトウェア営業およびパートナー営業を統括し、2004年からは日本法人の営業活動全体を指揮してきた。ここ数年は、ダン・ミラー前社長(現会長)とともに、まさしく日本法人の顔≠ニしての役割を担ってきただけに、今回の新社長就任は十分な準備期間を経て、満を持しての登場といえる。

 ただ、サンにとって今のビジネスの状況は、決して順風とはいえない。業績面ではひと頃より好転してきたものの、これまでのサーバーを中心とした事業展開から新しいソフト製品体系やユーティリティ・ビジネスモデルの展開へ----。つまりプラットフォームベンダーからシステムベンダーへの転換という抜本的な改革はまだ道半ばだ。その意味では、ここ数年、ミラー前社長とともに日本法人のビジネスモデルの改革を推進してきた末次氏にとっては、自らの手でその仕上げを行う責務を担っている。そうしたことを踏まえ、まずは末次氏に新社長としての抱負を聞いた。

サン・マイクロシステムズ社長 末次朝彦氏

協業パートナーとともに新ビジネスモデルを促進

アイティセレクト サン日本法人のビジネスの現状をどう捉えていますか。

末次  今年度(2006年6月期)は前年度に比べてビジネス全体として上向いており、好調に推移しています。その大きな要因は、昨年秋に一新したサーバー製品が好評を得ているからです。日本市場では来年度もサーバーの更新需要が数多いことから、まずは確実にそれに対応していきたいですね。

 また、昨年春までに製品販売の仕組みやサービスの提供形態を刷新し、この1年間はそれをひとまず運用してきました。ここにきてそれがかなり定着してきたので、手直しすべきところは修正しながらも、基本的な路線は踏襲していくつもりです。

アイティセレクト 新社長としての抱負を聞かせてください。

末次  サンは「永遠のベンチャー」であるところが魅力であり、強みですが、日本法人としてはそれを生かしながら、再度ビジネスインフラをきちんと整備して生産性を高め、より戦略的な動きができる集団にしたいと考えています。

アイティセレクト 今後、注力したい事業は。

末次  IDCおよびASPサービスを軸としたユーティリティ・ビジネスモデルを大いに促進していきます。日本では、大企業においては着実に利用が進んでいますが、中堅・中小企業向けにはまだまだこれからです。その最大のネックになっているのは「データを預ける」ことへの不安感が拭えないからだとみています。この点については、このビジネスモデルを協業するパートナー企業と力を合わせて一段と信頼されるシステムを提供していくとともに、お客様にも「銀行にお金を預ける」のと同じ感覚であることを訴求していきたいと考えています。

ガバナンス、コンプライアンスそして環境保全

アイティセレクト ユーティリティ・ビジネスモデルを促進するために、サンとして具体的にどのように取り組んでいくのですか。

末次  米国ではサン自体がグリッドコンピューティング技術を駆使したIDCを運営しており、協業パートナーであるシステムインテグレーターやソフト会社の皆さんに利用していただくビジネスモデルを推進しています。ですが、日本では同じ協業パートナーでも大手のシステムインテグレーターさんがIDCを運営しているケースが多いので、サンはそうしたところにシステムプラットフォームを提供して、実際にお客様の利用が始まればその従量制による収入を、ソフト会社なども含めた協業パートナーとシェアするようなビジネスモデルの構築に力を入れていきたいと思っています。これによって、お客様にとっては利用したいサービスをすぐに使っていただけるようになります。

アイティセレクト 今後、とくに重点を置いていこうと考えている事業分野は。

末次  いま企業にとって大きな問題となっている、日本版SOX法への対応をはじめとしたガバナンス、およびコンプライアンス(法定順守)へのソリューションは、米国本社の豊富なノウハウを活用しながら、しっかりと提供していきたいと思っています。さらに今後、ネットワーク社会が拡大することを考えれば、省スペース化や消費電力・発熱量の削減といった環境保全対策も非常に重要です。そうした重要度の高い問題に対しては、とくに力点を置いてソリューションを展開していくつもりです。

このインタビューは現在発売中のアイティセレクト6月号で掲載されています。

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