進化を続けるデータベースは、同時に「枯れた」技術でもあり、安定性やパフォーマンスの面では、システム構築のベストプラクティス、あるいはチューニング手法の情報がかなり蓄積されている。
しかし、データベースの進化は止まったわけではなく、現在でも確実に機能向上が図られている。ここ1〜2年で最大の機能強化点と言えるのが、セキュリティに関する機能である。これは、ドキュメント管理というニーズ、あるいはコンプライアンス対策として、データベースの重要性が高まっていることを意味している。
具体的なセキュリティ対策機能として、例えばデータベースへの詳細なアクセス権の設定、ネットワークの途中でデータの不正閲覧を防止する暗号化ネットワークプロトコルの採用など、内部や外部からの不正アクセスを防止する機能は、従来のリレーショナルデータベースにも搭載されていた。しかし、最新製品では、パフォーマンスをほとんど落とすことなく、アプリケーションにも変更を加えずに、データそのものの暗号化を実現する機能、保存されている閲覧専用のデータの改ざんを防止するためのWORM(Write Once Read Many)機能などが搭載されている。
セキュリティ以外の面では、特に可用性が重視されている。いくらデータベースのテクノロジが進歩し、ソフトウェア的には安定性を維持していたとしても、データベースが稼働するプラットフォームであるOS、あるいはハードウェア(中でもディスクストレージ)などに起因して障害が発生しないとも限らない。そこで、高いミッションクリティカル性が求められるデータベースシステムの構築を考えたときに避けて通れないのが、クラスタリングだ。
同一構成のシステムを複数台用意して冗長化構成にすることで、システムの停止を防ぐクラスタリング技術は、これまでUNIXやWindowsの1機能として提供され、データベースソフトウェア自身はその機能を利用することが多かった。しかし、例えばオラクルの「Oracle Real Application Clusters」のように、データベースソフトウェア側でクラスタリング機能を提供する場合もある。クラスタリングは、実行系サーバの障害発生時に待機系サーバに切り替えるフェイルオーバークラスタだけでなく、複数のサーバで分散処理を行うことでトラフィック集中による遅延を防ぐためにも用いられる。
さらに、データベース管理の使い勝手も、時代を追うごとに大きく改善されている。多くのデータベースソフトウェアは、システム全体を管理する運用管理ソフトウェアと密に連携し、データベースの障害、不具合などを検知、管理者に通知する機能を備えている。また、障害や不具合を予兆し、自動的に修復する機能を備えるようにもなりつつある。
データベースにアクセスしない企業システムのアプリケーションは、事実上存在しないと言える。よりセキュアに、可用性を高めつつあるデータベースは、当面企業システムの中核であり続けることだろう。
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