市場拡大を見越した積極的な戦略を展開ブレードサーバー、ベンダー各社の現状と戦略――ヒット商品分析

じわじわとユーザーの認知度を高めつつあるブレードサーバー。中堅、中小企業への導入も増加しているという。まだ市場規模としては小さいが、各ベンダーの戦略はどのように進められているのか。今回は日本ヒューレット・パッカードとデル、そして日本アイ・ビー・エムを取り上げる。

» 2006年06月01日 10時00分 公開
[越後耕一+アイティセレクト編集部,アイティセレクト]

サーバーの新しい運用の仕方を提案する――日本ヒューレット・パッカード

 ユーザーの裾野が広がり、ニーズも変化してきている中で、ベンダー各社はどんな戦略のもとに拡販を推進しているのだろうか。まずは外資系ベンダーから見ていきたいが、その中で際立って活気付いているのが日本ヒューレット・パッカードだ。エンタープライズストレージ・サーバ統括本部の山中氏は「売り上げはうなぎのぼりで、良いビジネスになり始めた」と確かな手ごたえを感じているようだ。

 「アクティブ・エンタープライズ」をコンセプトにしている同社では、ブレードサーバーを導入することによって運用管理を効率化し、IT投資を「守り」から「攻め」の方により多く振り向け、より多くのビジネスリターンを得るようにすべきだと訴えている。「だから、ブレードを提案するときでも、私どもは新しいサーバーを提案するのではなく、サーバーの新しい運用の仕方を提案している」と同社ブレード・バリュープロダクトマーケティング部担当部長の正田三四郎氏は言う。

 同社では一昨年末に製品名を「HP BladeServer」から「HP BladeSystem」に変えたが、これは言うまでもなく、「守り」のコストを下げるためにはハードウェアだけではなく統合管理ソフトウェアもないといけないということを強く意識してのことだ。

 「ハードとソフトをちゃんと協調させないと管理コストは下がらないので、当社ではハードの開発チームとソフトの開発チームが一体となって開発に当たっている。その結果、すべてのサーバーを一元的に管理する、非常に使い勝手のいいソフトウェアが出来上がり、お客様からも高い評価をいただいている」(山中氏)

 ブレードサーバーでサーバーの新しい運用管理の仕方を提案する同社の戦略は、まさに統合の時代にフィットしたものである。

ブレードはあくまでもサーバーの選択肢の一つ――デル

 日本ヒューレット・パッカードほど熱くなってはいないが、あくまでも「お客さまにベストの選択肢を提供する」という基本的な考え方で展開しているのがデルだ。

 「弊社では、ラックマウント型のサーバーと全く同じテクノロジーを使って、常にその時点でのベストのブレードサーバーを開発している。当然のことながら、デルに期待されるようなコストパフォーマンスも実現している。しかし、『これからはブレードの時代ですから、ブレードを買ってください』というような売り方をするのではなく、ラックマウント型サーバーを使うか、ブレードサーバーを使うかは、お客様自身でお決めくださいというのが基本的なスタンスだ。そこが他社さんと一番大きく異なる点だと思う」(エンタープライズ マーケティング本部 マネージャー、西田和弘氏)

 また、他ベンダーではブレードサーバーをミッションクリティカルな部分にまで適用しようとしているが、西田氏は「デルとしては、積極的に推進することはしていない」と言う。その理由は、ブレードサーバーにはバックプレーンが二重化されていないという弱点があるからだそうだ。「それは技術的に非常に難しい問題だし、あえてやろうとするとコストがかかるので、結局はエンクロージャの価格が高くなってしまう。だから、デルとしては、できればブレードサーバーはフロントエンドの方に使ってもらい、データベースにはラックマウント型サーバーを使った方がより安全ですよというスタンスを取っている」

 そのためにも、同社ではどういうサーバーを導入したらいいかというコンサルティングサービスを行っている。ちなみに、同社のブレードサーバーを選択しているユーザーとしては、データセンターや大学などが多く、選択の最大の理由は管理のしやすさだという。

最初からブレードサーバーの業界標準を目指した――日本アイ・ビー・エム

 ブレードサーバーのトップベンダーと言えばIBMだが、同社のブレードサーバーは設計思想そのものが他のベンダーとは違う。「最初からインテルさんと共同でシャーシの開発を行い、そこに入るスイッチ類等も含めて仕様を公開してオープンアーキテクチャにしようと考えていた」とxSeries & IntelliStation事業部、事業企画担当の田口光一氏は語る。つまり、ブレードサーバーの業界標準を最初から目指していたということだ。

 そして、その最大の狙いは何かと言うと、「複雑性の改善」だ。田口氏によると「最終的にはサーバー単独の統合だけではなく、スイッチ類も統合して、今、ITの最大の問題になっているシステムの複雑性、管理の複雑性を改善しようということだ」そうだ。

 実際、同社のBladeCenterには、14台分のブレードサーバーやスイッチ・モジュールもまとめて監視・管理できる管理モジュールが標準装備されているので、遠隔地にいてもシステムの監視や電源のON/OFF、BIOSの更新などの操作ができる。また、「基本的に全てのモジュールを二重化しているので、非常に高い信頼性が実現されている」とxSeries & IntelliStation事業部事業企画High Valueグループグループリーダー、澁谷慎太郎氏は熱っぽく語る。

 いずれにしても、同社のブレードサーバーは高密度、パワーとクーリングの高効率性、ケーブリングのシンプル性、統合されたマネジメント環境などのバリューをユーザーに提供できるので、「イニシャルコストだけでなく、どれだけTCOが削減できるかということを理解していただけると、当社の製品を採用していただけるケースが多くなる」と田口氏。そこが、同社の強さのようだ。

アイティセレクト6月号より

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