大手商社を「スッキリ」させたHPのサーバ統合テクノロジーHP WORLD Tokyo 2006

日本ヒューレット・パッカードが開催する「HP World Tokyo 2006」において、セッション「国内事例による基幹系システムへの仮想か技術導入実践テクニック〜HP Superdome編」が開催された。

» 2006年06月01日 18時50分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 日本ヒューレット・パッカードは5月31日から2日間、都内のホテルで「HP World Tokyo 2006」を開催している。その中で、「国内事例による基幹系システムへの仮想か技術導入実践テクニック〜HP Superdome編」というテーマによるセッションが開催された。大手商社の基幹システム構築において、HPが提供するサーバやストレージの仮想化技術をベースにした解決策が紹介されている。

 プレゼンテーションを行った日本HPテクニカルサポート統括本部の武藤正己氏は、これまでの基幹システム構築の歴史について、中央集権型のメインフレームからオープンシステムに移行することで分散コンピューティングが進んだことを指摘、そして今、新たに登場している統合基盤では、仮想化などの技術をベースにした中央集権型に戻りつつあるように見えることを紹介した。

日本HPテクニカルサポート統括本部の武藤正己氏

 「しかし、中央集権型に戻るといってもメインフレームの時代に戻るのとはまったく異なる。あくまでも扱うのはオープンな製品。それを中央集権的に扱えるようにするという意味では、メインフレームとオープンの“いいとこ取り”といった方が的確です」(武藤氏)

 事例として紹介されたのは総合商社のM社(仮名)。国内14拠点、海外に124の現地法人、支店、出張所を有しており、連結子会社は525社にも上っている。

基幹システムのオープン化に着手

 同社では1997年から、基幹システムをメインフレームからオープンシステムに移行した。その際に、個別最適の考え方でシステムを構築したことにより、ミドルウェアのバージョンアップに問題が発生したことなどが課題として挙がったという。

 その後、2003年に、分散したサーバおよびストレージ環境の統合を実施することになる。46台あったサーバをItanium 2プロセッサベースの「HP Integrityサーバ」を含めた23台に統合する一方、2.1テラバイトだったストレージを、ディスクアレイ(XP1024やテープライブラリ(HP StorageWorksESL9595)によって6.6テラバイトへと大幅拡大した。

 なお、HP Integrityサーバには、新しいチップセットとして「HP sx2000」が搭載されている。このチップセットは、セルベースのハイエンドおよびミッドレンジサーバに搭載されている。

統合のポイント

 武藤氏はこのストレージ統合を提案する上でのポイントとして、システム統合によるTCO削減、安全な移行が可能であること、信頼性の高いシステムを構築できることの3つを挙げた。

 この中で、複数のサーバをより少ないサーバに統合する上で重要なのが、パーティション技術だ。HPが提供するUNIXサーバでは、物理パーティションを実装する「nPartitions」と、論理パーティションを実装する「Virtual Partitions」(vPar)の2つが提供される。

 nPartitionsは、サーバのきょう体に搭載された1つ1つのセル(CPU)ごとにメモリ、I/Oが搭載され、バックプレーンから提供される電源も独立している。そのため、1つのサーバ内で複数部門のシステムが稼働しているようなケースにおいて、1つのセルがハードウェア障害を起こしたとしても、そのシステムにかかわらない別部門のシステムに影響を及ぼすことはない。

 一方で、vParは、1つのCPUを論理的に複数のシステムに分けてパワーを共有する方法。「仮想パーティション」ごとに分けられた各システムには動的にCPUが割り当てられる。仮想パーティションごとにOSをインストールし、アプリケーションを稼働させることができる。また、OSに障害が発生したり、システムの再構成、リブートを行ったりする場合も、別のパーティションに影響が出ることはない。だが、1つのハードウェアを仮想的に複数に分けていることには変わりないため、CPU自体に障害が発生した場合は、すべての仮想パーティションの稼働が停止する危険性がある。

 HPは、コスト面を含めるとそれぞれ長所と短所を持つnPartitionsとvParをうまく組み合わせることで、顧客のニーズにマッチしたシステムを構築する考えだ。

インスタンスの統合も

 M社が2003年に行ったサーバおよびストレージ統合では、インスタンスの統合は行われなかった。つまり、多数のサーバを少数のきょう体にまとめたものの、きょう体内に設けられたパーティションをサーバとしてカウントすると、数は減っていなかったわけだ。これでは、データベースが分散しているため、機動的な組織改編やビジネス変化にシステムが対応しきれない。

 そこで、同社は2004年から2005年にかけて、データベースの統合に着手することによって、ハードウェアのさらなる統合を図った。

 システム設計の指針は「簡素化」「標準化」「モジュール化」「統合化」の4つ。構成要素数の低減とカスタマイズの排除、変更の自動化によって簡素化し、標準技術を利用することによって標準化し、単一構造の分解と再利用可能なコンポネントの生成、論理アーキテクチャの実装によってモジュール化し、ビジネスとITの連携や企業内外のアプリケーションとビジネスプロセスの統合を実施することによって統合化を図った。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ