さて、いよいよ本題である。最近「シンクライアント」という言葉をよく耳にするようになった。
もともとシンクライアントは、PCがまだそれほど安価ではなかった時期に、高価でメンテナンスの手間が掛かるコンピュータの導入を最小限に抑え、コストを安くすませようという発想から開発された。「一人に一台ずつ高価なPCを使う」よりも、1台の高性能なコンピュータを複数で利用し、個々の手元に「PCのように使えるが、複雑な記憶装置などは持たない安価な端末」を置くという考え方で、端的にいうと「TCOの削減」が元々のテーマだったのだ。
こうした発想で開発されため、シンクライアントでは、ユーザーが任意の記録を「端末上に」保持することは原理的にできない。この特徴が、「情報の分散保持」や「リスク」といった昨今の課題に対応できるものとしてクローズアップされてきたのだ。
さて、改めて考えてみると、シンクライアントとはいったいどのようなものと考えるべきだろうか。今や多くのベンダーがさまざまなシンクライアント製品/ソリューションを提案しており、それぞれに機能や特徴がある。しかし筆者は、シンクライアントを以下のように定義したい。
ユーザーの手元に、任意かつ永続的な記録を保持しない端末
シンクライアントは任意の永続的な記録を持たない。それゆえ、ユーザー個別の物理的な環境には情報が保持されず、メンテナンスの手間が省けるだけでなく、結果としてリスクを低減させることができる(図3)。
シンクライアントとダム端末の違いは?
そもそもこの2つは、開発された時期やターゲットとするサーバが違うため、まったく異なるシステムである。が「出力装置はディスプレイ」「入力装置はキーボードやマウスなど」という観点に絞れば、非常に乱暴な言い方だが「同種のもの」と言えないこともない。
ただ、繰り返しになるが、ダム端末とシンクライアントとでは開発のそもそもの発端が異なる。
またシンクライアントの場合、サーバとクライアント端末の2つを合わせて1つのシステムと見なすため、端末だけでは完結せず、向こう側に「業務サーバ」が存在する構成が大半である。つまりシンクライアントは「端末とシンクライアントサーバ」がセットになったものであり、このセットが「個々のPCの集合体」として業務サーバにアクセスするというスキームが成立する。
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