氾濫する“効果の出ないシステム”の原因と対策を考えるあなたの会社は大丈夫か?企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第1回(2/2 ページ)

» 2006年06月14日 07時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト]
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失敗原因の裏返しが成功の条件となる

 さて、なぜそれほど効果が出ないのか。

 筆者の経験や失敗事例集から失敗の原因を整理すると、「トップの関与」「目標の明確化」「人材」「社内意識改革」「ユーザーの参画」「業務改革」「要件定義」がいずれも不十分だったと集約される。

 トップが全く無関心でIT導入に関与しないか、あるいはユーザー企業のトップがベンダー企業のトップと一括依頼の約束をしてしまうなど、解決したい問題をはっきりとさせないまま、つまり「目標を明確化」しないまま、優秀な「人材」も投入せずに導入プロジェクトがスタートしてしまうと、失敗の確率は極めて高くなる。

 目標が明確でないということは、どういう「業務改革」をしたいのかがはっきりしていないということであり、それでは「社内意識改革」も「ユーザーの参画」も積極的には行われないのは当然である。

 システムベンダー、コンサルタント会社に丸投げしてしまい、何が「要件定義」だったのか、ユーザー側は判然としないまま、システムができあがってしまうわけだ。

 一方、筆者が実際見聞きしたシステムベンダーが説く「成功の条件」を整理すると、前述の失敗事例の原因の裏返しとほぼ完全に一致する。

 このことは何を意味するか。事前に成功条件を説かれ、意識していても、その実現が至難の業であることを意味する。成功条件を事前に知らないために(まずあり得ないが)、あるいは別の条件で失敗するならまだ救いはある。次の機会に注意をすればよいからだ。しかし実態は絶望的なのである。

改めてほしい売らんかなの姿勢

 しからば、どうするか。

 ベンダーとユーザーの双方が抱える課題を解決するしかない。

 まず、ベンダーは「売らんかな」の姿勢を改め、ユーザー企業はそれを見極めなければならない。ここで問題なのは、ユーザーが判断材料とするセミナーや資料が極めて不十分だということだ。

 失敗しないための条件を、システム内容説明と合わせて懇切丁寧に説くベンダーは極めて少数だ。部分的に触れているだけ、あるいはまったく触れていないという企業が非常に多い。もっぱら自社システムの内容・優位性・導入メリット、そして成功事例のみ強調している。

 確かに「システム説明」は主目的だが、本当に顧客に有効に使ってもらおうとする良心があるなら、「失敗しないための注意」にも重点を置くべきだ。売らんかなの姿勢は止めてほしい。そしてユーザー企業は厳しい目でその本質を見極め、良心に欠けるベンダーを淘汰すべきだ。それは、ある意味でユーザー企業の責任でもある。

 次回は、ユーザーの立場でIT導入前と導入後の問題に分けて、対応を考えてみたい。

「間違いだらけのIT経営」はアイティセレクトにて連載中です。

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