なぜID管理が脚光を浴びるのか? 業界と標準化の動向今、見直されるアイデンティティ管理(2/3 ページ)

» 2006年06月27日 07時30分 公開
[下道高志,ITmedia]

ID管理技術関連の標準仕様

 前述したように、ID管理がカバーする範囲は広く、さまざまな技術が開発されているが、ここでは試みとして「管理」と「サービス」に分けて主だった仕様を紹介する。

管理のための技術

(1)ディレクトリ:LDAP(Light Weight Directory Access Protocol)。ITU勧告X.500モデルをサポートするディレクトリに対するアクセスを提供するために設計され、その後IETFで標準化された。現在はLDAP version3が規定されている。

(2)アクセスコントロール:XACML(eXtensible Access Control Markup Language)。XMLで記述された、アクセス/ポリシー制御のための技術仕様。OASISで標準化されており、最新バージョンは2.0。

(3)プロビジョニング:ID管理の中でも特にアカウント管理、およびそれに関連した認証・認可のための属性情報の管理を複数ノード間で行う。「IDのライフサイクル管理」とも表現されているが、アカウント情報の作成・追加・修正・停止・削除を行うことがその目的だ。OASISでは標準化仕様として「SPML(Simple Provisioning Markup Language)」を規定している。最新バージョンは2.0。

(4)ワークフロー:上記のプロビジョニングを複数ノード間で特定のルールに基づいて行う場合、業務のフローが発生する。例えば図2のように、システムAにはアクセスポリシーを即時変更するが、システムBでは上級管理者の許可が出て、翌週よりその変更が反映される、といったフローである。ID関連技術に特化したワークフローの標準化は、まだこれからといったところだ。

図2 図2●プロビジョニングとワークフロー

サービスのための技術

(5)ディレクトリサービス:DSML(Directory Service Markup Language)。XMLで(LDAPのような)ディレクトリへのサービス内容を記述する。OASISによる標準化が行われており、最新はDSML version2。

(6)認証・認可サービス:マルチドメインを含む分散環境下の複数サイト間で、認証情報を含む属性情報をSOAP/XMLメッセージで安全に交換する。OASISで規定された「SAML(Security Assertion Markup Language)」を中心に、Libertyで仕様策定する「ID-FF(Identity Federation Framework)」、Internet2(次世代インターネットに関する米国研究開発プロジェクト)で標準化しているShibboleth(シボリス)の「OpenSAML」がある。これらの仕様で可能なサービスの1つがSSO(シングルサインオン)であり、そのほかに実現可能なサービスとしては属性情報交換などがある。

(7)アイデンティティ連携/サービス連携:上記ID-FFにおいて、各サイト間で個々(ユーザー)のIDを保持しながらサイト間でIDを相互参照し、結果としてSSOを可能にする仕組みを「アイデンティティ連携」(フェデレーション)と呼ぶ。また、ID連携の環境下で、個人情報すなわちID情報をベースに複数のサイト間でのサービスを実現する仕組みを「連携アイデンティティサービス」と呼ぶ。この思想はLibertyの根幹にあり、後述のID-WSF仕様として具現化されている。

(8)次世代リソース識別:XRI(Extensible Resource Identifier)。分散ディレクトリサービスなどで利用できるURIスキーマとURNに関する仕様であり、OASISにおいて標準化が進んでいる。

Libertyにみる連携ID仕様の標準化

 前述したように、Libertyは連携IDサービスのための仕様を策定しており、単なるSSO仕様策定を目的とはしていない。消費者はSSOではなく、安全で信頼のおけるサービスを使うことが目的なのである。Libertyはこの要求を満たすために結成されたといっても過言ではなく、関連するさまざまな仕様やガイドラインを出している。また、世界的な個人情報保護法や米SOX法などのコンプライアンス強化の流れに応じて、広義のID管理技術仕様の標準化の対象領域を広げている。

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