コラム
» 2006年07月04日 07時00分 公開

企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第5回:派閥、老害、建前主義との戦い (1/2)

経営層の中で「IT不信」とも呼ぶべき感情が渦巻いている場合の多くは、導入の際のマネジメントが不在で、過去のシステム導入で多大なコスト負担を強いられたという経験が尾を引いていることがあげられる。しかしそんな組織だからこそ得られるチャンスもあるのだ。

[増岡直二郎,アイティセレクト]

経営が機能不全の時こそCIOの出番

 前回、ITが戦略的に取り組まれない要因を述べた。引き続きこれに関して論考していきたい。もう一つの要因として、ITを単なるデータ処理の道具としてしか見ない、あるいはITに対する無理解という姿勢が随所に見られる。

 例えば生産設備と違って付加価値を生まない、あるいは眼に見えず捉えどころがないという理由からITに距離を置く経営者、システム部門を単なるデータ処理部門とみなし、組織上も人事上もその存在を軽視する経営者などが見られる。それはITの効果に対する疑問によって増幅される。

 企業における情報化の効果は、「平成15年版情報通信白書」によると「あり」が43・1%(前年は61・9%)だが、「なし」が25・3%(12・2%)と否定的な意見が、多額な投資の割には無視できない比率になっている。こういう企業の各層におけるITの効果や取り組みについての消極的な考え方が、ITに対する疑問や不信につながり、ITには適当に対応しておけという風潮を助長する結果を招く。

 間違いだらけの経営の渦中で、しからばどうすればよいのか。

 トップや経営陣が戦略的発想面で機能不全に陥っているときこそ、中間管理職とCIOの役割がクローズアップされてくる。

 経営方針の丸投げ、部門間の壁や派閥、老害、建前主義などなどの戦略的発想と対極をなす発想は、すでに企業文化として根付き、骨の髄まで染み付いているから、簡単には修正できないだろう。もし修正するとしたら、それまでの社歴と同じくらいの、あるいはそれ以上の年月を要するだろう。とても間に合わない。その場合はトップや経営陣の考え方を修正してトップダウンの経営戦略策定を期待することは、あきらめた方が賢明のようだ。

 そこで中間管理職の出番が来る。上から丸投げされた方針策定を、真似てさらに丸投げすることは絶対に止め、しっかりと受け止めることだ。そして全社あるいは自部門の事業の将来に関わる戦略を自らが決めるチャンスが来たと受け止め、部門の壁を乗り越え、老害の及ばぬところで、積極的に戦略策定に取り掛かるべきだ。なんと痛快なことだろう。

 もちろんそのための手法は日頃学んでおかなければならない。例えばバランスト・スコアカード、SWOT分析、KJ法など、できるだけ多く経験を積むことでより効果を発揮する。

CIOが取り組むべき成功への道筋とは何か

 さて、次にCIO(情報戦略統括役員)の出番だ。CIOは戦略的ITへの取り組みの任務を担って、経営改革推進者となることが求められる。そのためCIOは、経営戦略策定に最初から関わらなければならない。そしてITが軽視される傾向を打ち消して廻らなければならない。さらにIT効果に対する疑問視がIT不信の風潮を生むなら、この連載の前々回までに触れた成功の条件をCIOが身をもって実現して、IT成功への本当の道筋をつけることが求められるわけだ。

 ところが、先に触れたように戦略的思考からほど遠いトップや経営陣のいる戦略なき環境下におかれた場合、CIOは経営戦略策定に関わることはできない。ここで経営改革推進者としての自覚のもとに、自らラインの調査に乗り出し、問題を抉り出し、課題を見出して戦略的経営テーマを策定する役を買って出るべきだ。そこにこそCIOの存在価値がある。

 しかし、問題が簡単ではないことを多くの経験やデータが示す。まず、CIOとCEO(最高経営責任者)との間に大きな認識のずれがある。米ガートナーの04年調査によると、CIOの80%が「自分はCEOから信頼されている。ビジネスを変革するリーダー的役割を果たしている」と回答したのに対し、CEOの側が「IT戦略やCIOの役割は重要」と答えたのは40%にも満たず、ITやCIOは期待されていない。

 同じようにCIOは社内でも期待されていない。CIOの役割を聞いたアンケートで、単なる「情報システムの活用に関する経営陣との調整」が「主な任務」と答えたのが63・5%、一方肝心の「既存ビジネスの抜本的改革」が「主な任務」は34・4%、CIOにとって単なる「調整」が重要とみなされている(「日経情報ストラテジー」04年2月号)。

 さらに深刻な問題は、03年度末時点で専任CIOの設置企業は全企業のわずか1・9%、兼任を含めても16・0%、専任・兼任ともいない企業で今後設置予定ありは9・3%、予定なしが68・9%(「平成16年版 情報通信白書」)だ。ここでの議論が、まるで無意味に思えてくる。

 このCIOに関する厳しい状況について、筆者の経験から考えてみよう。

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