マシンルーム専用に設計された環境では、電源は安定供給されるので、サーバにとって安心である。ただし、自家発電装置を備える環境であっても、その切り替え時間にどの程度を要するのかは確認しておこう。一般的に自家発電装置は発電を開始してから電力を安定供給するまでに数分以上の時間を要する。これに対し、サーバなどのコンピュータ機器が、瞬間停電に耐えられる時間は1サイクル以下。1サイクルというのは交流の周期で、電源周波数の逆数に相当する。電源周波数は西日本ならば60Hz、東日本ならば50Hzなので、1サイクルの時間は西日本が0.0166秒、東日本が0.02秒という実に短い時間である(図2)。一部の特殊な電源を搭載するサーバ以外、おおむねこの時間内に回復する瞬間停電でなければ、動作を継続できず、マシンがダウンしたり、リセットされたりする。
このため、たとえ自家発電設備を備える環境であっても、その切り替え時間を考えるとUPSを併用することが必要である。電源が切り替わるまで停電に耐えられる容量のUPSを用意しておくべきなのだ。なお、ビルの設備自体がUPSを備えている場合もあるので、これも確認しておこう。
マシンルームだからといって単純に安心するのではなく、その環境の電源の特性を理解して使用しないと何の意味もない。オフィスの一部をマシンルームとして使用している場合には特に注意が必要だ。
UPS における魔の時間帯
UPSは停電が発生すると、内部のバッテリーに蓄えられた電力を消費して動作する。このため停電から復帰した後、バッテリの充電が完全に終了する(100%充電になる)までは、その能力を完全に発揮することができない(図3)。このため、充電中はUPSにとっても「魔の時間帯」となり、この間に再度停電が発生すると期待されるバックアップ時間より短い時間で出力が停止してしまう。これを防ぐため、UPSによっては充電量が100%に戻らない間は接続されているマシンを復帰させないものもあるので、よく考えて設定を行おう。
意外と忘れがちな災害時の電源確保
大規模災害時には携帯電話が重要な連絡手段となるのは、周知の通りだ。もちろん、一時的にネットワークが切断されて使えなくなることも多々あるが、現代において携帯電話は非常時の通信インフラという側面がある。
気を付けたいのが携帯電話の電源である。最近の携帯電話は、バッテリーの持ちが良くなってはいるものの、通話やメールを使えば当然消耗する。このため電源が確保できない場合でも充電する手段は持っておきたい。手回し充電器やソーラー充電器などがその一例だ。また、自動車が利用できるのであれば、発電機としても使えることを思い出してほしい。自動車のDC 12V電源を利用する機器を用意しておけば、携帯電話の充電だけでなく、ノートPCを使用したり充電することも可能だ。
このコンテンツはサーバセレクト2005年10月号に掲載されたものを再編集したものです。
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