日本オラクルが中堅・中小市場に仕掛ける新たな一手

日本オラクルと日本オラクルインフォメーションシステムズが発表した中堅企業向けアプリケーションビジネスの新戦略、戦略の速やかな実行こそが同市場で重要な要素になるとウォルベン氏は話す。

» 2006年07月24日 15時13分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本オラクルと日本オラクルインフォメーションシステムズは7月24日、中堅企業向けアプリケーションビジネスの新戦略を発表、Oracleで日本アプリケーションビジネス担当シニアバイスプレジデントを務めるディック・ウォルベン氏や日本オラクルインフォメーションシステムズの代表取締役である村上智氏などが同戦略について説明した。

左からウォルベン氏、村上氏、佐藤氏

 オラクルの考える中堅企業は、年商100億円から年商1000億円の企業を指す。この市場におけるITの課題としてウォルベン氏は、「グローバル化」「コンプライアンスによる圧力」「分断されたIT基盤」「限られたリソース」を挙げ、包括的で柔軟性があり、かつ経済的なソリューションが求められていると話す。

 そうした市場のニーズに応えられるのが、中堅企業向け統合ERPパッケージ「JD Edwards EnterpriseOne 8.12」を柱とするワン・シングル・ソリューションであり、「中小市場への認知度向上」「組織体制」「パートナー協業強化」といった3施策を掲げ、本腰を入れていくと述べた。

 施策の具体的な内容としては、さまざまなセミナーの開催や、「Oracle Applications」専任の「Oracle Direct」を新設することで認知度の向上を図る一方、社内に中堅企業向けビジネス専任部隊を組織する。人員は従来の2倍程度割く予定だ。

 30年間にわたって多くの中堅企業に受け入れられてきた実績を持ち、グローバルでは7300社もの導入実績があるJD Edwards。しかし、ターゲットとしている市場において、ERPの導入コストは相当なものとなる。そこを補うために存在しているのが、「JD Edwards EnterpriseOne Rapid Start」と呼ばれる特別導入パッケージだ。

 Rapid Startは、ビジネスプロセスが事前に設定されたもので、環境構築の際に必要となるソフトウェアライセンスや導入サービスだけではなく、ハードウェア、ファイナンスオプションなど運用開始までのプロセスを包括的にサポートしようとするもの。あらかじめ設定されたビジネスプロセスが自社のビジネスにうまくはまるようなら、導入コストを大幅に削減可能となる。加えて、Oracle、PeopleSoft、JD Edwards、SiebelのアプリケーションスイートとなるFusion Applicationsへの移行パスも用意することで、小さく導入して必要に応じて拡大することもできる。

 一般的に、ERPの導入など大規模なシステム案件においては、コンサルティングなどの費用が別途積み重ねられる実費精算契約が多く見られ、予想外に導入コストが跳ね上がってしまうことが導入に二の足を踏む一因となっている。そこで今回の施策では、Rapid Startでこれらも含めた定額制を導入した。日本オラクルインフォメーションシステムズの代表取締役である村上智氏は、「年商100億円の製造業であれば、最短で21週ほどで導入可能で、価格は7500万円程度」と話し、3倍近いコストダウンが図れると説明した。

 また、中堅・中小企業向けという視点で見ると、「Oracle NeO」というソリューションも過去に発表している。両者の違いについて、日本オラクルインフォメーションシステムズの佐藤幸樹氏は、「Oracle NeOは、業種と業務がミックスされた際に、ある特殊な要件が発生するような建設業界など特定の産業向けのパートナーテンプレートであり、基本的にはパートナービジネス。一方、JD Edwardsは、顧客のニーズに応えられる機能を包括的に備えたもの」と話し、すみ分けはできると述べた。

 Microsoft、SAPなど多くのプレイヤーがしのぎを削る中堅・中小企業の市場で、JD EdwardsおよびOracleの認知度はまだまだ低いのが現状だ。今回、こうした施策を発表したが、ほかのプレイヤーとの差別化をどう考えているのかという質問に対し、ウォルベン氏は次のように述べた。

 「実のところ、われわれの課題は戦略ではなく、実行する力だと考える。Oracleが持つ強みというのは価値訴求全体であり、それをどう顧客に認知させるかだ。他社が何をしているかを考えるのではなく、われわれの考えをしっかりと認知してもらうことで結果は出るだろう」

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