ITエンジニアという職業は、「3K」のレッテルを貼られたままだ。キャリアモデルを明確に示し、意識改革を促したいと考えるアイ・ティ・イノベーションの林社長とマイクロソフトの成本部長に話を聞いた。
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かつて最先端の職業のひとつだったITエンジニアだが、いまや「3K」のレッテルを貼られてしまい、業界もそれを払拭できないでいる。そうした背景には、日本においては特に「35歳限界説」が幅を利かせ、ITエンジニアが自身の将来像を描けない、という問題がありそうだ。ITエンジニアのキャリアモデルを明確に示し、意識改革を促したいと考えるアイ・ティ・イノベーションの林衛社長とマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部戦略企画本部の成本正史部長に話を聞いた。前・後編の2回に分けて掲載する。
両社は、契約と対価、それによる働く人の価値に重きを置いて、期待されるITエンジニアのキャリアモデルを定義、アセスメントの手法も併せて開発する共同プロジェクトに取り組んでいる。ITmediaの「応援します! 日本のITエンジニア」では、同プロジェクトの成果についても随時レポートしていく。
ITmedia おふたりから見て、ITエンジニアの現場が抱えている最も大きな課題とは何でしょうか?
林 ITというと「最先端の仕事」というイメージがあるかもしれませんが、産業としては非常に未成熟です。例えば、建設や土木のようなエンジニアリングは3000年もの歴史があるのに比べ、ITはたかだか50〜60年です。新しい産業だから進んでいる、という間違った認識があるのが先ず大きな問題でしょう。
成本 ほかの業界では当たり前のエンジニアリング的な手法がほとんど浸透しておらず、成功や失敗の体験もきちんと引き継がれていません。ソフトウェアエンジニアリング(工学)は、ソフトウェアを効率良く開発するものなのですが、多くの人はこれを学問だと捉えてしまい、現場には根づいていません。ソフトウェア工学といわれても何のことか分からないという人も多いようです。
林 ITプロジェクトのメンバーに「エンジニアリング」という思考は確かに希薄です。どちらかというと「工事」に近いですね。けれども、彼らは「エンジニア」と呼ばれているわけですから、ソフトウェア工学の基礎的な部分は理解していなければなりません。
かつて体力勝負で出来てしまった、変な成功体験があるので、同じ手法でこれからも大丈夫だという錯覚があると思います。しかし、ここ1〜2年の景気回復に伴って増加してきた需要には、もはや過去の手法では通用しなくなっています。
ユーザーのニーズは、多様化し、そして複雑化しています。こうした状況には、エンジニアリングを適用しなければなりませんが、現場にそういう認識がないのです。相変わらず火縄銃で戦っているようなものです。
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