「契約と対価」から導くITエンジニアの将来像ITエンジニア キャリアモデル策定計画 特別対談(後編)(1/3 ページ)

アイ・ティ・イノベーションの林社長とマイクロソフトの成本部長による特別対談の後編。「ITエンジニアが、その将来像を描くには、期待される人材の明確な定義やモデルが求められる」と林氏は話す。

» 2006年08月23日 09時00分 公開
[聞き手:浅井英二,ITmedia]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「応援します! 日本のITエンジニア」でご覧になれます。本記事の前編はこちら


 ITエンジニアが、その将来像を描くには、期待される人材の明確な定義やモデルが求められる。ITエンジニアのキャリアパスを明確に示し、意識改革を促したいと考えるアイ・ティ・イノベーションの林衛社長とマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部戦略企画本部の成本正史部長に話を聞いた。前編に続いて掲載する。

 両社は、契約と対価、それによる働く人の価値に重きを置いて、期待されるITエンジニアのキャリアモデルを定義、アセスメントの手法も併せて開発する共同プロジェクトに取り組んでいる。ITmediaの「応援します! 日本ITエンジニア」では、同プロジェクトの成果についても随時レポートしていく。

アイ・ティ・イノベーションの林衛社長(左)とマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部戦略企画本部の成本正史部長(右)

ITmedia ITエンジニアという職業に夢を持てない背景には、働く人の意識だけでなく、構造の問題もあると思います。会社や業界がきちんとキャリアモデルを提示することも必要ではないでしょうか。

成本 IT業界の在り方が、「How」(プロセス)から「What」(成果物)に移行を迫られていると感じています。「何人で何カ月かけてやるか」といった人月で見積もるのではなく、「いつまでに、この機能のものをこの品質で納入します」ということが求められてくるでしょう。

 実際のところ顧客にとっては、どのようにやるかは問題ではないのです。成果物の価値を明確に定義し、契約に基づいてその対価が支払われるようになるべきで、むしろそうならなければIT業界は成熟していかないと思っています。

 ビジネスである以上、契約と対価が行き着くところですから、そこから逆算すれば、そのために必要な人材はこうあるべきだと定まってきます。つまり、必要な人材の役割がはっきりとし、その経済的な価値が明確になれば、IT業界を変革できると思います。

 日本の企業でも、いろんな問題解決がプロジェクト型で取り組まれるようになってきています。ある目標を達成するための組織が重要度を増してきているわけです。そうしてその中にITにかかわるエンジニアもいるわけです。

 しかし、ITプロジェクトを組んでも、多くの企業は名刺に書かれた役職を優先させてしまいます。本来であれば、課長がプロジェクトマネジャーで、部長がメンバーであってもいいと思います。

 ITプロジェクトでは、役職とは別の役割が大切です。プロジェクトマネジャーは、どういう責任があり、それを実現するための権限があるのか? アーキテクトは? 一般のエンジニアは? 責任と権限がそれぞれの人に与えられないと力は発揮できません。

 アイ・ティ・イノベーションでは、ITエンジニアのスキルや行動特性を診断していますが、ITの世界の人たちは、とても保守的です。それを払拭し、今の自分は何かを把握でき、そして将来像が描ける定義やモデルが必要だと思います。

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