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» 2006年09月01日 08時00分 公開

グーグルの躍進とマイクロソフトの転身 第3回:グーグルが最も恐れる相手の手の内 (1/2)

ヤフーとイーベイの提携に至る過程で、これらの企業との関係を求めて水面下でさまざまな交渉を繰り広げたとされるのが、世界最大のソフトウェア企業、マイクロソフトである。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

 グーグルCEOのシュミット氏は「われわれが最も注意を払っている存在はマイクロソフトだ。検索や広告の分野で彼らの影響力は増している」として、マイクロソフトを最大のライバルと名指しした。その言葉通り、インターネットサービスの新潮流に乗り遅れまいと、巨人マイクロソフトは必死に戦略転換に取り組んでいる。

インターネットサービスへの対応を急ぐ

 だが、足元の状況は極めてよくない。将来を期待されるインターネット事業「MSN」は、売り上げ・利益ともに伸び悩んでいる。インターネットサービス各社が高成長を続ける一方で、直近(2006年6月期)の決算においてはついに営業赤字に転落した。

 MSN事業は、インターネット接続事業(ISP)の料金収入と、広告・手数料収入から成り立っている。依然大きな比率を占めるISP事業は、会員数の大幅な減少により4〜6月期だけで前年比5300万ドル減の収益悪化となった。広告や手数料収入はいずれも増収となったものの、新たなサービス開発への投資負担は増加している。

 マイクロソフトの主力事業は、「マイクロソフトウィンドウズ」や「マイクロソフトオフィス」などのソフトウェアライセンス販売であり、年間400億ドルに達する売り上げのかなりの部分と150億ドル近い営業利益のほとんどは、その事業でまかなわれている。

 パッケージソフトウェアの販売で巨大ソフトウェア企業となったマイクロソフトだが、インターネットの拡大により、ソフトウェアビジネスの主戦場をOSというプラットフォームからインターネットのサービスに移しつつある。

 そんな折のグーグルの躍進は、マイクロソフトにビジネスモデルの転換を迫ることになった。そのため、マイクロソフトはインターネットサービスに対応したビジネスモデルの構築を急いでいる。

 CEOのバルマー氏は「社内の研究部門にはSaaS(※1)事業が最優先事項であることを伝えてある」と述べ、05年半ばごろよりサービス路線を強化する方針を明確にしている。同年11月には、その方向性が「Live(ライブ)戦略」として打ち出され、現在のグーグルらが進めているのと全く同じビジネスモデルを目指すと宣言した。

長期戦を覚悟した グーグルとの戦い

 この戦略では、主力事業だけでなく家庭用ゲーム機「Xbox」なども含めたほぼすべての製品群に関して、徹底したサービス主体のビジネスモデルを適用している。コンシューマー向けを中心にしたサービス事業をLiveプラットフォーム上で展開し、ソフトウェアライセンスではなくサービスによるビジネスモデルにシフトしようとしているのである。

 とりわけ、コンテンツ連動型広告と有料検索に対応した広告プラットフォーム「アドセンター」は、今後のマイクロソフトにおけるビジネスモデルの中核に位置付けられ、サービス時代における新たな収益源として期待されている。バルマー氏は、社員にあてたメモの中で「グーグルとの戦いではアドセンターのさらなる成長がカギを握る」と述べている。

 さらに、5月に開催されたMSN事業に関する事業説明会では、同分野での成長機会すべてに対して、企業買収や研究開発を積極的に進めていく方針を改めて打ち出した。

 なかでも際立つのが、MSN事業関連への巨額の戦略投資である。研究開発費用は06年度の7億ドルが07年度は11億ドルに引き上げられるほか、設備投資額も同3億ドルから同5億ドルに増額される見通しだ(※2)。

※1 ソフトウェア・アズ・ア・サービスの略。パッケージソフトを販売するのではなく、ソフトウェアをサービスとしてインターネットを介して提供すること。

※2 研究開発費用、設備投資額ともに、06年度は見込み金額。

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