現場の視点で見る災害対策(2):DRサイトの実現方式と設計上のポイントディザスタリカバリで強い企業を作る(3/5 ページ)

» 2006年09月14日 11時00分 公開
[小川晋平,ITmedia]

方式決定の「決め手」は?

 ここまで紹介したさまざまな方式の中から実装方式を決定する際、決め手となるポイントを挙げてみよう。

RTO/RPO

データ特性

アプリケーション特性


 このうち、実装手段に最も大きな制約を与えるのはRTO/RPOの設定だ。

 例えば、RTOを12時間とした場合を考えてみよう。通常は、災害発生から「フェイルオーバーを行う」という意思決定を下すまでの間に数時間から半日程度の時間を要する。したがって、残りの半日で対象システムを切り替えることができる手段を採用するとともに、有事の運用体制(自社およびアウトソース先)の整備が必要となる。

 仮にこのRTOが48時間だとしたら、切り替え作業に必要な人員を大幅に削減することが可能であろう。RPOが48時間、RTOが72時間という場合には、データ量とメディアドライブの能力次第では、LTOなどのリムーバブルメディアによるデータ保護でも要件を満たすことができ、結果的にコストを圧縮できる。

 また、RPOが限りなく0秒に近いという場合には、非同期方式のレプリケーションを行うことになるが、その際は十分なWAN帯域が必要になる。さらにRPOが0秒という場合は、同期方式によるレプリケーションが必要となる。この場合は、光ファイバの品質(光ファイバの損失)にもよるが、DRサイトの配置はプライマリサイトから数十Km以内に限定される。

DRサイトはどこに置く?

 次に、DRサイトの場所の決定に影響を与える要因としては

想定災害の威力圏外か

運用体制が確保できるか

必要なネットワークの提供地域か

同期方式のレプリケーションが必要か

機器の保守は有事の際に十分に機能すると予測できるか


といった事柄が考えられるだろう。

 一例として、首都圏にしか拠点を持たない企業のDRサイトの配置を考えてみよう。

 首都直下地震の場合であれば、種々の資料から、東京都心部と横浜の小田原方面寄りの外れが同時に震度6以上の揺れを観測する可能性は低いと想定される。このため、大手町にプライマリサイトを置き、厚木や平塚方面にDRサイトを持つというような配置は現実的にあり得るだろう。

 ただし、大手町が被災した場合、同時にWAN回線サービスも停止する可能性は十分に考えられる。したがって、拠点間の通信はしばらく不能であることを前提にシステム復旧を考えなければならない。また、製品ベンダーも被災しているため、保守が後手に回ることを想定した対策を打つ必要がある。

 全国に事業所/営業所を展開しているような会社であれば、最悪の場合でも大阪や名古屋、福岡、札幌など、その会社の本社機能を代替できる拠点を中心に事業継続を考えることになるため、DRサイトを大阪などに配置した方がよい場合もある。この場合、首都圏以外へのネットワークが確保できるほか、首都圏にいる場合よりも保守のサービスレベルが落ちにくい(実際には首都圏への応援が想定されるため、多少保守は手薄になる可能性がある)といったメリットを享受できる。

 また、運用をアウトソースしている場合には、DRサイト側の機器や運用を含めて提供してくれるアウトソーシングベンダーのサービスを使うことも有効な手段である。

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