ストレージ保護の基本的な考え方ディザスタリカバリで強い企業を作る(2/3 ページ)

» 2006年08月24日 16時00分 公開
[村上智,ITmedia]

 レプリケーションという言葉は、直訳すると「複製」という意味である。例えば、あるストレージ内のデータを他のストレージ領域へ複製する機能のことを指す。また多くの場合、ネットワークを使用して遠隔地にデータを転送する「データ複製」といった手法がとられる。遠隔地へのデータ転送という側面を重視する狭義の意味では、「リモートデータレプリケーション」という表現が正しいかもしれない。

 ここで、ディザスタリカバリにおけるデータレプリケーションの有効性を考察してみたいと思う。

図1●RPOとRTO

 RPOは、前述したとおり、障害が発生した場合に失われるデータ量を示すものであり、どの時点以降のデータがリストアされるべきかの判断材料になる。

 図1ではPROを便宜上「リカバリポイント」と表示しているが、IT予算の範囲内で、このRPOを可能な限り小さく(短く)することが求められる。データレプリケーションツールを使用すれば、バックアップのように数時間/数日単位ではなく、分単位、秒単位、あるいはまったくずれのない最新データの複製をリモートサイトに持つことが可能になり、RPOを効率的に縮めることができる。

 データレプリケーションのための製品は、ストレージベンダー各社からさまざまな形で提供されており、主に、ストレージハードウェア自体に搭載されたインテリジェンスを用いるもの(ディスクアレイベース)と、ソフトウェアベースのものの2種類に大別できる。また各ソリューションには、リアルタイムにデータを転送する「同期」、バッチ処理的にまとめてデータをコピーする「非同期」など、いくつかのモードが備わっており、要件に応じて使い分ける必要がある。

●サイトフェイルオーバー

 前述のデータレプリケーションではRTOが大きすぎる場合に検討される手段だ。RTOとは「Recovery Time Object」の略であり、「災害発生の後、どれだけ迅速に業務を再開できるか」を表す数値である。

 先ほどと同じように例を挙げてみよう。午前10時にPCのHDDが壊れ、代替PCを用意してバックアップデータをリストアし、PCを使えるようにしたが、その作業が終わったのは午後4時だったというストーリーの場合、RTOは8時間となる。

 データレプリケーションのみを実施する場合、遠隔地にコピーしておいたデータを使用し、アプリケーションを立ち上げ、業務を再開させるという一連の作業は手動にまかなうことになる。このため、RTOが大きくなるのはある程度仕方のないことだ。

 これを解決するのが、サイトフェイルオーバーである。クラスタリングの技術を応用したもので、ローカルサイト(同一サイト間)の複数サーバノード間で実施されるクラスタリングシステムを、サイト間で実施する形に拡張したものである。

図2●サイトフェイルオーバーの概念

 このソリューションを用いることで、プライマリサイト側で不測の事態が発生した場合でも、ネットワーク接続されているリモートサイト側で、通常のクラスタリング機能と同様、業務に必要なサービスの立ち上げなど(迅速な復旧)が実施できるため、RTOを可能な限り小さくすることができる。

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