ソフトバンク登壇! 「ケータイキャリア三国志」の舞台にケータイルネサンスは起こるか 第1回(1/2 ページ)

10月1日、ボーダフォンはソフトバンクに変わる。これで、「ケータイキャリア三国志」の一国が入れ替わる。ただ、そのときを待たずして、三国それぞれに絡む役者も登場してきた。「三国志」の筋書きは、すでに変わりつつある――。

» 2006年09月15日 08時00分 公開
[アイティセレクト編集部]

千載一遇のチャンスをつかんだ

 「最近毎日朝から晩まで、私は携帯電話のことに集中しておりまして、そのことで頭の中がいっぱいなんですけれども…」――8月8日に都内で開かれた2006年度第1四半期決算説明の場で、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は開口一番、笑顔でこう話し始めた。それから1時間余り。孫氏はほとんどの時間を、ときには力強く、ときには穏やかに、数字を基にして携帯電話事業の「明るい未来」を語った。

 ソフトバンクは以前から携帯電話事業への進出に強い関心を示してきた。3枠設けられていた、近い将来の新規参入組の筆頭プレイヤーとして、声高に発言をしてきた。

 ところが3月。既存のキャリア3社の一角であるボーダフォンの買収を発表した。同時に、ヤフーにボーダフォンへの共同出資を仰ぎ、携帯電話事業で提携した。こうして、新規枠で手掛ける予定だった、当初敷かれたレールには乗らずして、携帯電話事業への進出を果たした。

 「今振り返ってみましても、ボーダフォンを買収できて本当によかったと、千載一遇のチャンスであったというふうに思っております」(孫氏)

 10月1日より、ボーダフォンブランドはソフトバンク(一部ヤフー)ブランドに変わる。 また翌日の8月9日、キャリア3社は10月24日より携帯電話番号ポータビリティ(MNP、※1)を開始すると発表した。かつてより、ケータイの世界はMNPを機に、キャリア間を顧客が移動する、新たなフェーズに入るといわれてきた。そのため、各社はこれまでさまざまな奇策を打ち出し、顧客の囲い込みや新規獲得にしのぎを削ってきた。その結果、MNPが施行されても、ユーザーの「民族大移動」はそれほど劇的に起きないのではないかとみられている。

 ただ、「キャリア三国志」の筋書きは、ソフトバンクの参入によって書き換えられつつある。最大の事変は、キャリアだけでなく、PCインターネットのポータル/検索サイトらがその戦いに――現時点では「援軍」として――加わってきたことかもしれない。

 なぜ、そうなったか。それは、ボーダフォン買収劇が業界内外に非常に大きな衝撃をもたらしたからである。何もソフトバンクという会社が仕掛けたからというだけではない。PCインターネットのポータル最大手であるヤフーが絡んでいる、ということが、ほかのキャリアやポータルらを慌てさせる大きなトリガーになったようだ。

※1 現在使用しているキャリアから別のキャリアに契約を変更しても、電話番号が変わらない制度。メールアドレスや料金プランなどは新規契約先のものに準ずることになる。

備考

1. 本稿では、キャリアは携帯電話事業者を指す。現時点ではNTTドコモ、KDDI(au)、ボーダフォン(10月1日からソフトバンクモバイル)の3社になる。PHSのウィルコムは含んでいない。

2. 本稿における「携帯電話」「ケータイ」の使い分けについては、文脈や発言内容などに応じて変えている。例えば、「携帯電話事業(者)」としたり改まった発言である場合は漢字表記にした。基本的には、「携帯電話」という端末そのもの、手段、事業、分野などすべてにわたってカタカナ表記とした。

3. 本稿では、NTTドコモの「iモード」、KDDI(au)の「EZWeb」、ボーダフォンの「Vodafone live!」については「(ケータイの)インターネット」、パソコンなどで楽しむ、一般のインターネットを「PCインターネット」と称した。

4. 本稿中の数値・事象などは、例外を除き、すべて8月16日時点のもの。


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