“バーチャル”から“リアル”へ――SFC Open Research Forum 2006

慶應義塾大学SFC研究所が日頃の研究成果を紹介する「SFC Open Research Forum 2006」。今年も11月22、23日の両日、東京・丸の内で「現代リアル学」をテーマに開催される。リアル学とはなにか、そして初の丸の内開催となるORF2006の概要について紹介する。

» 2006年11月01日 00時00分 公開
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 11月22、23日の2日間、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のSFC研究所が主催する「SFC Open Research Forum 2006」(ORF2006)が開催される。ORFはSFCの研究成果と将来の計画を一般公開し、来場者との自由な交流などにより産官学の連携をさらに推進させようと毎年開かれているオープンなイベントだ。昨年までの3回は六本木ヒルズが会場だったが、今回は東京・丸の内で複数のビルやメインストリートなど街全体が会場となり、「現代リアル学」をテーマに掲げている。

 耳新しい言葉である「リアル学」とは何か、そして新たな方向に踏み出そうとするORF2006のポイントについて、SFC研究所の所長であり今回ORF2006実行委員長を務める國領二郎教授にお話を伺った。

――ORF2006のテーマ“リアル学”とはなんでしょうか

photo SFC研究所 所長、総合政策学部教授の國領二郎氏「ORFは単に成果を展示するのではなく、一緒にやりましょうという呼びかけのイベントです」と話す

國領教授 この“リアル”という言葉には我々のいくつかの思いが集約されています。SFCで行われている多数の研究を見たとき、ものすごく多様であっちこっちにいっているようでいて、なにか共通のテーマ性があるなと感じていまして、それをなんとか言葉にしようと議論し、行き着いたのが“リアル”です。ネットワークや情報技術などバーチャルの世界では、日本の中ではまずSFCを思い浮かべていただけるようになっていますから、これはある意味アンチテーゼなのかもしれません。

 ただ、バーチャルもつきつめるとみんなリアルを意識するようになってきています。例えばSFCの多くの技術者がいま興味を持っているのは「実空間ネットワーク」や「実時間ネットワーク」と呼ばれる、リアルな物にアイデンティティーを持たせネットワークと連動させていくというものです。例えばSFCでもずっと力を入れている介護や看護を情報技術でサポートしていこうというものがありますが、これなどは在宅介護というリアルな世界をいかにバーチャルで支援できるかというような応用があります。

 私の専門分野である経営のことを考えてみても、5年、10年前はWebショップがどうとかという話が中心でしたが、いまは現実の街の中にデバイスを組み込んで、人の流れをどうキャッチし、それをマーケティングでどう演出できるかというようなことが非常に面白いテーマになっています。

 いままではバーチャルな物がなかったのでそれを作り上げることに価値があったのですが、一応どこでもネットワークに繋がるような状態に近づいてきました。そうしたネットワークを使ってリアルな空間・時間をデバイスが認識できるような状態にする、それで可能になる世界がものすごく大きな可能性を持つということです。

――典型的なオフィス街である丸の内で開催される理由はなんでしょうか

國領教授 これまではネットの中の空間をテーマに展示場を会場として開催してきたわけですが、人間の体や健康、居住空間、実際に触れられる物を扱うようになるということで、会場の場所が六本木から丸の内に移るだけということではなく、ORF自体をひとつの決められた展示会場から外に出して、街に埋め込むというようなイメージです。

 SFCでは産官学の連携による研究を重視しています。ですからORFは、単に研究成果を見てください、というものではなく、こういうことを考えていますので一緒にやっていきませんか、というイベントなのです。

 これまではなかなかSFCの研究内容に興味を示してもらえなかった、いわゆるレガシー企業でも、実空間ネットワークでは興味を持ってもらえるようになっています。IT企業が多く集まる六本木ヒルズという箱型の展示会場から、(IT企業でない従来からある)企業や省庁がある丸の内に場所を移して開催することで、これまでの産官学の連携による成果を見てもらって、新たな企業・省庁に参画してもらい産官学連携に繋げていきたいと考えています。

――ORF2006の展示内容はどのようなものがありますか

photo 丸の内仲通り。ORF2006では、人々が行き交う道路、パブリックスペース、商店街など、リアルな場でリアルな人々とORFが語り合う場をつくり出す

國領教授 丸の内に埋め込むということで、(メインストリートである)丸の内仲通りのほかいくつかのビルを使って展示やセッションを行います。TOKIAの1階ガレリアでは大きなオープンスペースに未来の住宅をイメージした「iLog House」を建てて30年後の住空間を体験できるようにしたり、仲通りに電気自動車(Eliica)を走らせたり、文科省が入っている三菱ビルでは官庁の助成を受けた研究を発表したりします。

 またメインのセッション会場の丸ビルでは、塾外のゲストもお招きして、さまざまなテーマについてのパネルディスカッションを開きます。オープニングセッションは慶應義塾の安西祐一郎塾長と慶應義塾評議員でもある三菱地所の福澤武会長が出席します。ここで、慶應義塾が創立以来150年にわたって日本を先導し続けてきたこと、そして今後150年も先導し続けていくこと、そのなかでSFCは尖った実験をする場である、という宣言を行ってORF2006がスタートします。

 セッションや展示以外でユニークなものとしては「まちづくりアイディアコンテスト」があります。SFCが立地する湘南・神奈川県央や、ORFが開催される丸の内をイメージしながら人間の生きる空間の未来のイメージづくりをしようというものです。それから展示やセッションと別に、共催イベントとして、デジタルコンテンツクリエイターの登竜門となることを目的としているコンペティションで6回目を迎えかなり高いレベルの作品が集まるようになってきた「Digital Art Awards 2006」、地域社会に貢献する社会的機能を提供するような事業として起ち上げようという起業家を表彰する「SFC Entrepreneur Award 2006」なども行います。

 セッションの内容もウイークデイの22日にはどちらかというとビジネス指向の強いもの、休日の23日にはそれよりももう少し社会指向の強いものとなっています。また、SFCに入ってみたいという高校生向けのセッションや体験講座も用意しています。会場は丸の内を訪れる多くの人々の目に触れる場所と比較的そうでないところがあり、どなたにも楽しんでいただけるものと、ちょっと突っ込んでSFCの研究の中身を見てやろうと来ていただける方に向けたものと、めりはりをつけたものにしていきます。

SFC Open Research Forum 2006は、入場無料です。
オフィシャルWEBサイトから事前登録の上、ご来場ください。


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提供:慶應義塾大学SFC研究所
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年11月30日