NTTコミュニケーションズと慶應義塾大学SFC研究所の幸せで刺激的な関係メッシュ状の密なコラボレーションが育てた日本発のインターネット技術

今や世界有数のインターネット大国と言われる日本。その土壌となっているテクノロジや環境整備の背後には、NTTコミュニケーションズと慶應義塾大学という、日本を代表する企業と大学の「メッシュ」状のコラボレーションがあった。

» 2006年11月10日 00時00分 公開
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 11月22、23日の2日間にわたって、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のSFC研究所の主催で「SFC Open Research Forum 2006」(ORF2006)が開催される。このイベントの目的の1つは、SFCの研究成果と今後の方向性を広く公開し、実際に体験してもらうこと。ひいては、産官学の連携を推進させることだ。

 社会が抱えるさまざまな課題の解決や日本の国際競争力向上に向けては、産学の連携が不可欠であると言われて久しい。しかしかけ声とは裏腹に、充実した関係が築かれ、そこから生まれた成果がビジネスとして確立し、社会のあり方を変えるまでに至ることはまれだ。

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)と慶應義塾大学SFC研究所が長年にわたり、インターネット技術を巡って展開してきた関係は、その幸せな例外だと言えるだろう。NTTコミュニケーションズの山下達也氏(第二法人営業本部エンジニアリング部部門長)と長谷部克幸氏(経営企画部担当課長)が、慶應義塾大学環境情報学部の中村修教授、重近範行専任講師と共に、これまでのコラボレーションの歩みと今後の産学連携のあり方について語った。


photo 慶應義塾大学 環境情報学部
中村修教授

中村 NTTコム(当時はNTT)と慶應義塾大学との共同研究が始まったのは、日本のインターネットの黎明期に当たる古い時代のことです。長年の共同研究を振り返ってみて一番重要なのは、ただ研究成果を出してそれを企業がビジネスにするという形で終わるだけでなく、両社がタッグを組んで世の中を変えていくという意味でうまくコラボレーションできた点だと思います。

 1つのターニングポイントになったのは、1996年のInternet 1996 World Exposition(IWE)ではないでしょうか。これがきっかけとなり、インターネットやWebというものがリサーチから商用のフィールドへと出て、研究とビジネス、マーケットという3つの要素を踏まえながら動き始めることになりました。

山下 それまではNTTの研究所にとっても、PBXとTDM、専用線が三種の神器でしたが、一連のコラボレーションを経てさまざまな面で変化が生まれました。例えば人についても、研究者間だけでなく、外部の顧客やユーザーとも話ができる人が求められ、実際にそうした人材が育ってきました。また、協業を通じてITシステムのアウトソースを担ってみてはじめてオペレーションの重要性を知り、それがビジネスになる可能性を認識したわけです。そうした部分を担ってきた人たちが今、NTTコムのコアとなり、ntt.net(旧Verio)などのサービス開発に当たっています。もしこうした経験がなかったならば、ISP事業のOCNも存在しなかったかもしれません。

中村 昔は研究成果がマーケットに出るまで、非常に距離感がありました。まず、NTTの研究所で基礎研究があって、ビジネス化に向けた研究があって、各事業部でさらに研究をした上で企画し、ビジネスになり、マーケットに出て行く…という具合です。しかし、今の世の中でこれをやっていては間に合いません。

 例えば1996年当時は、StreamWorksで20Kbpsの映像を送信できることが大きなインパクトを与えました。しかし僕としては「こんなんじゃまだまだ」と感じ、もっとハイクオリティな伝送ができないかとDVTS(デジタルビデオ転送システム)の仕組みを考え始め、基礎研究に取り組んだわけです。それから7〜8年経った今、この技術がすごい勢いでマーケットに出て行っています。これもNTTコムと組んで進めたからこそ実現できたわけで、最初のストーリーでやっていたら、この技術はいつまでたっても世の中に出なかっただろうと思います。

 この取り組みのもう1つのポイントは「各家庭に100Mbpsの回線を引く」という形で、将来を見越したインフラの設計までを視野に入れ、根幹のビジネスに関わる部分に影響を与えたことです。技術開発からビジネス展開のフィールドに至るまで、いろいろなレベルで情報交換をしているからこそ、戦略的な部分も含め、さまざまな部分に成果が反映されているのだと思います。

photo NTTコミュニケーションズ 第二法人営業本部 エンジニアリング部 部門長 山下達也氏

山下 NTTコムとしてもこのサイクルはうまく回っていると感じます。研究所が開発した技術を、トライアルの場の厳しいオペレーションで鍛えてブラッシュアップし、IWEなどの世の中に見える場で使う…このスパイラルがうまく機能していますね。

中村 スパイラルが周っているというよりも、むしろ、密接に組み合っているという方が正しいかもしれません。我々大学が基礎研究をおこない、NTTがそれをビジネスにするといった、一方向の研究開発そして商品化だけではなく、例えば、NTTが基礎技術を開発し、われわれがオペレーションして実際に使った結果をまたNTTにフィードバックしていくようなこともあります。このようなさまざまな過程の中で、研究所の人だけでなく、企画や営業担当などさまざまな人が関わってきます。その意味で、一方向に向けたスパイラルというよりも密接に絡み合ったネットワークが形成されていますよね。


成果を見せることで「世の中」を変える力に

photo NTTコミュニケーションズ 経営企画部 担当課長 長谷部克幸氏

山下 IWEのような大きなイベントの裏側でもそうですが、それ以外のもっと地道な部分にも協業の成果が反映されています。例えば、見ている方は気付かないかもしれませんが、沖縄での地域放送などにもインターネット技術が活用されているのです。こうした使い方の部分を体験してもらい、啓発していくといった部分を実現するには、大学だけでも民間だけでもどうしても限界があります。皆がそれぞれいろんな引き出しを持っているからこそ、はじめて可能になったのだと思います。

長谷部 実際の研究というのは目に見えない部分が多いですが、デモを通じて「こんなことができるんだ」という印象を与えることができれば、世の中を変えていく大きな力になります。1つのデモの中には、回線や運用技術、経路制御、端末制御といったさまざまなエッセンスが詰まっているのですが、デモとしてのアピールがうまくいくことによって、世の中の目が向けられるようになってきますよね。

中村 研究成果を発表し、アピールしていく作業というのは、実は非常に難ししいものです。企業などにも分かる形でアウトプットをアピールしていくことが必要なのですが、その意味でNTTコムとは、ギブ&テイクでうまく成果を出してこれたと思います。Interopもそうだし、2001年のインターネット博覧会(インパク)のときには、全国各地と総理大臣官邸を結んで各地の日の出の映像を中継するという試みを行いました。そういうときに回線設計や技術協力という形でのコラボレーションは大きな力になりました。

長谷部 NTTコムとしても、155Mbpsのバックボーン回線だけでなく、大規模配信サーバやISDN回線を複数束ねるなど各種回線サービスを効率よく組み合わせる仕組み等、さまざまな成果を組み入れて見せることができたと思っています。

中村 それにしても、NTTコムはこの面で、かなり「血」を流してくれたと思っています。普通は臨時回線を引こうとするとなんだかんだで準備に3〜6カ月はかかります。それで使うのはイベントの1日だけとなると、ビジネス的にはまったくペイしない。でも、あえてそうした形で貢献があったおかげで、いろんな成果が具現化してきたのではないかと思っています。

山下 われわれとしては、厳しいお客の厳しい条件に応え、オペレーションに対応することで、人が育つという面もあります。もちろん、その後はビジネスとして回収していくというしたたかさも持ち合わせていますよ。

中村 大学と企業が付き合うとき、表面上の共同研究だけでは意味がありません。NTTコムとは、直接的にお付き合いしている部署だけでなく、包括的にタッグを組んでいます。そのためいろいろな説明を通しやすいし、例えば、イベントを行うとその場にお客を連れてきてもらうといった形で成功をイメージしやすいわけです。僕らは多くの人に成果を見てもらえてうれしいし、担当者は案件が成立してうれしい。しかも、テクノロジが浸透していく早さも加速していく。

山下 Interopなどで最先端のテクノロジを見た人が「じゃ、これをどう活用しようか?」と考えるときに、僕らはその間に立って「すぐにでもこれを使えますよ」と言うことができるわけです。1つの例として、サッカーのJFLの試合中継がありますね。J2への昇格がかかった試合を地元のCATV局が直接中継することは困難だったのですが、米子のCATV局と愛媛のCATV局との間をインターネットでつないで、DVTSで映像を伝送しました。視聴者はテレビで試合を見たわけだけれど、その間は実はインターネットだったわけです。こうした取り組みが自然に生まれてきています。


包括的なコラボレーションが実現する好循環

photo 慶應義塾大学 環境情報学部
重近範行専任講師

中村 技術を世の中に広め、浸透させていくには「出して終わり」では不十分で、標準化も非常に重要です。これも大学だけではどうしようもない部分で、企業とタッグを組んで、マーケットに結び付けていく必要があります。その意味でも産学連携が重要になってきます。特にコミュニケーションの分野は動きが速いですから、連携を通じてうまく加速させていく必要がありますね。

山下 先日も、慶応義塾大学のデジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC機構)で4Kデジタルシネマ規格の超高精細映像を撮影し、それをNTTが開発したJPEG2000コーデックで圧縮して転送するというオペレーションを実際に行いました。

中村 つまり、標準化が進んだことにより、実際にその技術を使って配信を行うという成果を実現できたわけです。これに関しては、大学とNTTとの連携だけでなく、大学内のコラボレーションも進展しました。大学という組織も比較的縦割りになりがちなのですが、元々SFCは総合政策学部と環境情報学部があって、クロスオーバーでの研究開発を得意としてきました。つまり、単なる産学連携ではなく、違うセクション同士を巻き込んだピア型のコラボレーションが生まれているわけです。

長谷部 そこから人材のサーキュレーションも起こっています。人材の供給というと、大学から企業に入って終わりというパターンになりがちですが、NTTコムでビジネスを経験した後で、大学の研究プロジェクトに参加したり、さらにその後先生になるという人の流れが、若い世代ではうまくいっています。

中村 研究所だけじゃなく事業部や営業等も含めた人材交流をもっと活発に進めていただければと思います。実際僕のところでは、山下さんやOCNのオペレーション担当者に大学で講義をしてもらうこともあります。現場を知っているいい方々から、これからを担う若い学生にたいして、現場を知っているからこそのフィードバックをお願いしたいと思っています。

長谷部 今後はここを起点に、さらに、アジア各国の大学へとつながりを広げていきたいと考えています。各地の大学と現地法人がそれぞれ横のつながりを持つことにより、日本の企業が外国のプロジェクトに参加したり、その逆のパターンがあったりと、国際的な連携がいくつか生まれています。

山下 これはエンジニアとしての成長過程、キャリアパスにも役立ちますね。SOIプロジェクトに参加した学生が、そのままNTTコムに入社してntt.netの部隊で仕事をしているケースもあります。自然な形で、国際的なフィールドで仕事を継続できているわけです。

重近 ここでちょっと危険なのは、あまりに分業しすぎると「僕は作り方を知りません」「僕はオペレーションを知りません」という具合になって、次のネットワークを考えることが困難になってしまうことですね。新しいテクノロジを作り、オペレーションし、それをビジネス化していくという相乗効果があるからこそおもしろいのであり、そのつながりをなくさないことが重要だと思います。

中村 こうして考えてみると、NTTコムとの関係はスパイラルいうよりも、もっとぐっと組み合わさっている感じがしますよね。スパイラルっていうと、シングルポイントのコラボレーションのイメージがありますが…。

山下 進化論におけるいい意味での突然変異でしょうか。雑多であるがゆえに種として強いという。

中村 それにはいろんな関係を持っていることが重要ですよね。相互関係がメッシュ状になっているからこそ、水陸両方に対応でききて、種として強くなるわけです。NTTコムと慶応義塾大学の関係は普通の提携とはかなり異なっていて、トップレベルの合意の元、いろんなセクションが包括的に関わり合っています。こういう形の共同研究はほかにはあまりないのではないでしょうか。

 例えば会合を開くにしても、出席するのは肩書きを持った偉い人だけじゃない。いろんな立場の人が出てきて考え方をぶつけ合い、世の中を変えるという目標に向かって進んでいます。しかも、それが外に出て好循環を生んでいる。NTTコムとは、人材にしても研究にしても、コミュニケーションの取り方や体制にしても、一番いい形での産学連携ができていると思います。

山下 映像伝送、データセンターやインターネットサービスそのもの、どれをとっても、NTTコムでは実証実験の成果を取り入れてシェアしています。今後は、国内でうまくいっているシナジーを国際的にも展開していきたいですね。

中村 日本のマーケットでだけで成果を展開するのではなくて、グローバルなサービス、アクティビティにしていくということですね。今後もNTTコムのグローバル戦略の中で地球全体をターゲットにし、いろんなレベルでタッグを組んで研究開発を進めていきたいと考えています。

SFC Open Research Forum 2006は、入場無料です。
オフィシャルWEBサイトから事前登録の上、ご来場ください。


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提供:NTTコミュニケーションズ株式会社、慶應義塾大学SFC研究所
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年11月30日