ワイヤレスSEが明かす「導入の舞台裏」無線LAN“再構築”プラン(2/2 ページ)

» 2006年11月20日 08時00分 公開
[ITmedia]
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実機を現場に持ち込んで調査

 このように無線LAN導入に際しては、その準備段階で調査をしっかりしておかなければならない。では、事前調査は具体的にどのように行われるのだろう?

 調査期間は案件の規模によってまちまちだが、ユニアデックスでは基本的に2人ペアでチームを組む。手間の掛かる案件では、それ以上の人数で調査を行うこともある。1〜2週間ぐらいの工数が掛かる案件もあるそうだ。現場では、外来波調査から始まり、APの仮設置、電波の飛び具合、音声の品質の確認まで、1つひとつ丹念に調査していく。プランニング段階でAPの仮位置や、電波の届く範囲をdB(デシベル)単位で細かく決めてから現地入りするため、測定自体にはそれほど時間は掛からない。だが、パーティションを越える会議室や扉を越えるような場所では、それぞれにAPを配置して確認をとらねばならない。

画像 豊田氏はCCIE(シスコシステムズの技術者認定資格で最高位の資格)も取得しているネットワークのスペシャリスト

 調査時に特に留意しているのは、実機でのテストだ。実際にユーザーが利用する端末でテストしておかないと、いざ運用段階になって「使えない」という問題が表面化することもあるためだ。

 「現場では、ユーザーが使用する実機を使ってテストすることがとても重要。pingレベルでの確認はもちろんのこと、特に音声の調査では、簡易SIPサーバを立ててユーザーが利用する携帯端末を使い、必ず通話状態を確認するようにしている。端末ごとにアンテナの位置が異なるため、持ち方によってはアンテナが隠れて通話音質が下がったり、ローミング時の切り替えを伝えるピーピー音が頻繁に鳴る現象もあるので」

 そのため、無線LANにIP電話を導入するケースでは、運用開始1カ月後に「アンテナが何本立っているか?」「ハンドオーバーが気になるか?」「音が切れていないか?」「エコーやノイズはないか?」といったヒアリングシートを渡して、診断するサービスも提供しているそうだ。運用後に電波が変動したり、オフィスのレイアウトや部署が変わったりすることはよくあるので、定期的な診断サービスとして今後のメニューに加えていく計画だという。

ユーザーも理解してほしい

 無線LANの導入では、どうしても無線ネットワークだけに目が行きがち。しかし「その裏側にある有線ネットワークとの総合的な組み合わせを考慮することが、結果的に良いワイヤレス設計につながる」と、豊田氏は強調する。Active Directoryでの認証時にログオンスクリプトがうまく動かないなど、やはり運用を開始してから明らかになることもある。そのような事後の案件は、「自分たちの部署だけでなく、構築をメインに行うほかの部署と連携して対処するようにしている」という。

 このように、無線の場合は全体のネットワークで連携していかないとうまく動かないことも多い。同社では有線から無線まで一貫したソリューションを提供しているが、ユーザーの方で認証サーバやSIPサーバなど既存の機器を利用したいという要望もある。異なるベンダー製品を混在させて使うと、トラブルが起きたときに原因を究明することが難しい。そのような場合に、有線の部分も含めて運用体制まで検証していかなければならないため、ユーザー側の理解や協力、歩み寄りも必要になってくる。

 「無線LANはまだ、有線ほどの“確実さ”がない。ソフトが動かないなどシステムトラブルの原因を究明する際に、有線部分は切り分けしやすいこともあり、どうしても最初に疑われてしまうのが無線の部分だ。有線では機器を置いてケーブルをつなげば確実につながるが、無線の場合はやはりまだ手間が掛かっている。またユーザー側でも、無線の特性を理解した上で使うことが大事だと思う」(豊田氏)

 無線LANでトラブルを未然に防ぐには、構築方法ばかりではなく事前の調査がその鍵を握っている。また、導入すればそれで終わりではなく、運用後も定期的な診断が必要になる点などは、それを利用するユーザーの側でも心得ておくべきことであろう。

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