Ajaxの使い過ぎに注意

過ぎたるは及ばざるがごとし。特に、Webアプリケーション設計の場合は。

» 2006年11月24日 09時48分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 ついにこの新型車に試乗できて大興奮だ。なにしろ最新鋭の操作技術を搭載しているらしい。ほほぅ。いい走りだ。でも、ちょっと寒いな。ヒーターを入れよう……うわっ! 何だこれは? でかい室温制御パネルが飛び出して、フロントガラスの半分が隠れた――道が見えないよ!

 ちょっと落ち着かなくちゃ。そうだ、音楽がいい。なんてこった! ハンドルがオーディオ操作パネルに置き換わったぞ。これでは運転もできないじゃないか! いったい誰がこんなインタフェースにしたんだ? Ajax(Asynchronous JavaScript and XML)開発者か?

 もちろん、Ajax開発者が皆そこまでひどいわけではない。だが、このWeb開発技術の人気が高まり、WebアプリケーションとSaaS(サービスとしてのソフトウェア)のコアシステムのいたるところに活用されるようになるにつれ、開発者に正しいアプリケーションインタフェース設計について学ばせる必要があるケースが、かなり増えていると思う。

 わたしはAjaxをけなすつもりはない。個人的には好きだ。Ajaxによって、ついにインタラクティブなWebアプリケーションを開発する標準的な方法が現れたのだ。これを使えば、従来のデスクトップアプリケーションと同等の見た目と機能を持ち、しかも(Flashのような)サードパーティー製のプラグインや、(ActiveXのような)プラットフォーム固有のプログラムを必要としないWebアプリケーションを作ることができる。実際、AjaxはWeb2.0を活性化させる中心的な技術の1つで、さまざまなWebブラウザ、OSでまともに動く動的アプリケーションの作成を可能にしている。

 だが、あることが徐々に明白になってきている。つまり、今や世の中には多数のAjax開発者がおり、そのうちの非常に多くがWeb開発に時間をかけ過ぎていて、従来のアプリケーション開発には十分な時間を割いていないのだ。

 直感的なインタフェースを持つ素晴らしいAjaxベースのWebアプリケーションを多数挙げることもできるが、ポップアップウィンドウやスクロールするメニューバー、ちかちかするアイコンなどが過剰なWebアプリケーションもたくさんある。とにかく、まるで開発者はなんでも放り込もうとしているようだ。

 もちろんこれは、今に始まったことではない。Flashがはやり始めたころ、回転するウィンドウや動画のイントロといったうるさい視覚効果が満載で、それが利用の邪魔になっていたWebサイトやアプリケーションがたくさんあったものだ。実際、見たいコンテンツの邪魔をするうっとうしいFlashベースの広告という形で、いまだに当時の名残がわたしたちを悩ませている。

 だから、Ajaxでも同じことが起きているのを見るといらいらするのだ。Web開発者は過去の教訓を学んでいるはずだと思う。

 Ajaxで本当にクールなWebアプリケーションを構築できるのは素晴らしいことだが、開発者は技術的に可能だからといって派手な効果をなんでもかんでも組み込まなければと思ってはいけない。

 ポップアップウィンドウやメニューが、アプリケーションの本来の機能を使う邪魔になるのであれば、そんなウィンドウやメニューは大き過ぎるか、もっと言えば必要ないのだ。ちりばめられたクールで華やかなインタフェースオプションがアプリケーションを複雑で使いにくくしているとしたら、ユーザーはそのアプリケーションを使わなくなるだろう――どんなにクールでも。

 幸い、これは難しい話ではない。優れたアプリケーションインタフェース設計を学ぶための書籍、サイト、研修コースは幾らでもある。それに、わたしたちは皆、アプリケーションユーザーだ。Ajaxのインタフェースを構築したら、開発者は一歩下がって、初めて使うユーザーの立場からそのインタフェースを吟味すべきだ。その派手なインタフェースは便利だろうか、邪魔だろうか? 邪魔なら取り除こう。

 覚えておいてほしい。アプリケーションは車と同じで、人が目的地に到達するのを助ける道具なのだ。アプリケーションの場合、目的は遠隔会議だったり、インタラクティブな書類だったり、販売員管理だったりする。アプリケーションを使いにくくするような機能があれば、ユーザーは目的を達せず、そのアプリケーションを捨ててもっと使いやすいアプリケーションに乗り換えるだろう。

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