Salesforce.comとOracleがビジネスアプリ分野で対決へ(1/2 ページ)

オンプレミスかオンデマンドか。今、ビジネスアプリケーションの市場で巨大企業を巻き込む新たな戦いが起きようとしている。

» 2006年11月28日 17時55分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 ビジネスアプリケーション市場で戦いが起きようとしている。これは基本的に2つの陣営の間の戦いである――オンプレミス(社内インストール)型ソフトウェア陣営とオンデマンド型ソフトウェア陣営である。

 オンデマンド型ソフトウェアの旗手であるSalesforce.comが、同社の2007年第3会計四半期に約5億ドルの売り上げを確保した事実を見れば、オンデマンド陣営が勢力を拡大しているのは明らかだ。

 Salesforce.comは、オンデマンド対オンプレミスの競争で最大の差別化要因となる統合戦略を明確に示すべく、11月27日に「ApexConnect」を発表した。これは、Salesforce.comのアプリケーションをサードパーティーのアプリケーションに連携するのを容易にするためのツールファミリーである。

 ApexConnectのコンセプトは、Salesforce.comのマルチテナントアーキテクチャとApexConnectツールを利用すれば、どのSalesforce.comアプリケーションでもレガシーアプリケーション、Webサービスおよび各種のオンデマンドアプリケーションとの接続をアップグレード時(およびアップグレード後)に維持できるというもの。

 ApexConnect製品ファミリーには、約25種類の構成済みのAppExchangeパートナー連携製品(Salesforce.comを一般的なバックオフィスアプリケーションをリンクする)のほか、Apex APIを利用したカスタム連携技術が含まれる(ApexはSalesforce.com独自のプログラミング言語。AppExchangeは連携/開発用のプラットフォーム)。

 ApexConnectは、ERP(Enterprise Resource Planning)アプリケーションのSAP R/3およびOracle 11iならびにMicrosoft OfficeとOutlook、IBM Lotus Notesとの構成済み連携ツールも提供する。さらに「ConnectOut」と呼ばれる技術も含まれる。これはオンデマンド型アウトバウンドメッセージングAPIで、Salesforce.comのサービスがほかのアプリケーションと対話することを可能にする。

 アナリストらによると、ApexConnectの発表はまさに、Salesforce.comが現時点で明確化すべきメッセージだという。「オンプレミス陣営は今後も一貫して、連携とカスタマイズがSaaS(サービスとしてのソフトウェア)にとって大きな障害であると主張するだろう」と話すのは、ボストンにあるAMR Researchのアナリスト、ロブ・ボイス氏だ。「SAPとOracleの中心的戦略は、CRM(カスタマーリレーションシップ管理)分野で顧客がオンプレミス方式から離れるのを阻止することだ」。

 OracleでOracleオンデマンド/Oracleサポートサービスを担当するジャーゲン・ロットラー執行副社長によると、オンプレミス方式からオンデマンド型のCRM(あるいはそのほかの業務機能)に移行することに伴う問題として、ユーザーが連携という難問に直面することがあるという。

 「Salesforce.comは厳しい立場に置かれている。限られた機能しか提供できないからだ」とロットラー氏は指摘する。「彼らの当初の成功は、彼らにとって不利な条件となりつつある。ユーザーは現在、『この大量の顧客情報をどうやってカスタマイズし、連携すればいいのだろうか』という問題に直面し、それができないことに気付いている。Salesforceはアプリケーション連携環境の幻想を振りまこうと躍起になっている」。

 カリフォルニア州サンディエゴにあるKarl Strauss Brewingのビール事業部のディレクター、ジョン・スニード氏は、Salesforce.comが限られた機能しか提供できないとは考えていない。それどころか同氏は、レポーティングアプリケーションや老朽化したデスクトップアプリケーションなどの既存のレガシーアプリケーションもAppExchangeプラットフォームに移行したいと考えている。Microsoft Dynamics GP(ERPスイート)のユーザーであるスニード氏は、SalesforceのCRMアプリケーションをDynamics GPに連携するのに当たり、AppExchangeパートナーのScribe Softwareの技術に目を向けた。

 同氏は最初からMicrosoftを検討しなかったわけではない。「MicrosoftもIntegration Managerモジュールを提供しているが、これは少し時代遅れの技術だ」とスニード氏は話す。「当社の販売注文に連携するのに必要な機能は組み込まれていたが、総勘定元帳への振り分けをコントロールする機能がなかったのだ。これは当社にとって重要な機能なのだ」。

 スニード氏によると、Microsoftが提供している比較的ハイエンドの連携ツールも検討したが、自社のITリソースが限られていたため、本格的な連携ツールを導入するのは無理であることに、すぐに気付いたという。

 「開発に長い時間がかかりそうだったし、コンサルタントに支払う余裕もなかった。そこで注目したのがScribeだった。同社のDynamics連携用モジュールは、Salesforceと同じ技術プラットフォームをベースとしている。現在では、Salesforceのアプリケーションを本格的にカスタマイズしており、連携も実現している。リンクするのも非常に簡単だ」(同氏)

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