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» 2006年12月01日 00時10分 公開

次世代ITを支える日本の「研究室」:“ロボット屋”がつくる無線センサーネットワーク (1/3)

産総研は、100個以上のセンサー群を無線でつなぎ、環境情報を効率良く、低コストで収集するワイヤレスセンサーネットワークを開発した。これまで市場が冷え込んでいた同分野に光明を見出せるとして注目を集めている。無線ノードとロボット開発用ミドルウェアを融合するという、同研究所の画期的な取り組みを紹介する。

[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

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 「センサーネットワーク」とは、さまざまな場所の状態を計測するセンサー類を搭載したモジュール(ノード)を数多く配置し、それをネットワーク化することで、防災や安全、各種サービスの提供を行うシステムのことである。空間に存在するセンサーの数は多いほどサービスの精度が上がる。しかし、ノードを数多くばらまき、それらを有線で接続すると配線が複雑になり、多くの手間が掛かってしまう。

 そこで産業技術総合研究所(産総研)では、アクティブ型のICタグのように小型の電池を内蔵し、自力の無線通信能力を持たせたノードを独自の超低消費電力設計で開発した。それにセンサーを搭載し、さらにロボット開発用のソフトウェア開発基盤技術である「RT(Robot Technology)ミドルウェア技術」を融合させることで、数多くのノードからの環境情報を効率よく取り込むシステムを実現した。この産総研が開発した大規模分散型ワイヤレスセンサーネットワークは、産業界からも多くの関心を集めている。

図1 大規模モニタリングシステムの例

スマートダストプロジェクトの期待と失望

 とはいうものの、センサーネットワークの市場規模は2003年がピークで、その後は徐々に減少しているのが現状だと関係者は言う。

 その理由は2つある。まず、2003年ごろから米国国防総省の研究・開発部門であるDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency:防衛高等研究計画局)の「スマートダストプロジェクト」(超小型センサーをばらまいて、敵の状況をセンシングする研究)における期待と失望があった。

 当初は、カーネギーメロンやマサチューセッツ工科(MIT)、UCバークレーなどの有名大学や、多くの企業が実用化に参加するなどで大きな話題となった。しかし、クスリの錠剤ほどの大きさを目指したノード(スマートダストではモートと呼んでいる)の小型化や低消費電力化がなかなか達成できず、また価格も1個当たり2〜3万円と高価だったこともあり、想定したビジネスほどにはならないと産業界からの興味が急速に薄れていった。

 また、センサーのネットワークであるにもかかわらず、大規模に実証された例がほとんどなかったことが、もう1つの原因だ。既存のセンサーネットワークは実験室の中での研究が主で、ノードの数も20〜30個レベルで検証するというパターンが多かった。20個で動けば100個でも動くだろうという仮定を基に、実際に100個以上の構成で検証した例はほとんどなかった。センサーネットワークを主導したのがネットワーク専門家に多く、彼らがメッシュ型ネットワーク構成を採用したことも、スケーラビリティを困難にした要因だ。

 メッシュ型ネットワークにおけるアドホック通信では、コンビネーションを保ちながらデータを次々に受け渡していき、最終的に全部のデータがサーバに集まる構成となる。しかしその方式だと、データの受け渡し過程でルーティングとセンサーデータとが複雑に絡み合い、個々のノードにおけるCPUの負荷は大きくなる。よって、それなりに高性能なCPUを選択しなければならず、おのずとコストが膨らんでしまうのだ。

 実際には、メッシュ型より構成が単純なスター型ネットワーク(ハブを中心に放射状にノードがつながるタイプ)の方が、個々のノードにも負荷が少なく、部品単価も安く済む。大規模に拡大した場合でも破たんする危険性が低い。そのため、産総研ではスター型ネットワーク構成を選択した。

図2 産総研の開発した無線センサーネットワークノード

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