眠れない端末? “くせ者”パワーセーブモードを使いこなす無線LAN“再構築”プラン(1/3 ページ)

携帯型の無線IP電話は携帯電話と同じく、いかにバッテリーを持続させるかが課題だ。そのため、端末にはパワーセーブモードなる機能が用意されているが、利用環境をうまく調整しないとなかなか「仮眠」できないという事情がある。

» 2006年12月13日 08時00分 公開
[寺下義文,ITmedia]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「無線LAN“再構築”プラン」でご覧になれます。


寺下義文(日立コミュニケーションテクノロジー)



 オンライン・ムック「無線LAN再構築プラン」を読んでいただいた読者から、「もうそれぐらいで勘弁してほしい」という声が聞こえてきそうだが、残念ながら無線IP電話の運用にはまだ乗り越えなければならない壁がある。それは、携帯型の無線IP電話ゆえの、電池の「持ち(待ち受け時間)」をいかに引き延ばせるかという課題だ。

 これを解決するキーワードが端末の「パワーセーブモード」であるが、これも安易に取り組んでしまうと、さまざまな問題に直面するだろう。このため、今回はこのパワーセーブモードをテーマに説明しておきたい。その特性を十分に把握し、VoWLAN(無線VoIP)システムをさらにより良くしていただきたい。

端末の「仮眠」に影響を与えるDTIM

 無線IP電話に、パワーセーブモードという電池の消費を抑えるモードが搭載されていることは、すでにご存じの方も多いと思う。そして、これの反対にある状態がアクティブモードである。図1はこの2つのモードの違いを示したものだ。

図1 図1●パワーセーブ/アクティブモードにおける状態の遷移

 つまり、アクティブモードは常に活性状態であり、各所に電気を供給し続けているのに対して、パワーセーブモードでは、断続的に活性状態に戻るものの、断続的に仮眠状態(受信のみ行う状態)に移行するという手法によって電池の消耗を抑えている。

 したがって、パワーセーブモードを使って電池の持ちを良くするには、この仮眠状態をいかに引き延ばすことができるかが鍵を握っている。この仮眠状態の間隔を決める要素が、AP側から断続的に送出されるビーコンである。このビーコンの働きにはいろいろあるが、その中でもDTIM(Delivery Traffic Indication Message)と呼ばれる信号が、実は端末の「安眠」を妨げる元になっている(DTIMが悪い信号という意味ではないのだが)。

 DTIMとは、当該クライアントあてのデータが届くと、速やかに受け取るように仮眠状態の端末に向けてAPから送出される信号である。したがって、このDTIMを受け取った端末は、目を覚ましてこれを受け取るようにしなければならない。すると、このときに活性状態に移行することになり、端末側の電力消費量が増えるのだ。

 一方、端末側がこれに素直に応じるかというと、そうとも限らない。端末側も自己防衛のために、すべてのDTIMに反応するのではなく、何回かに1回だけ反応するように調整できるようになっている。NTTドコモの「FOMA N900iL」では、この調整をListen Intervalで行う。標準WLANモードのデフォルトは0でDTIMに100%応じるが、1以上の値を指定すると、その数の分だけDTIMを無視するようにもできる。拡張WLANモードのデフォルトは10となっているが、これも0に戻すことができる。

 またKDDIの「E02SA」では、DTIM自体をまったく無視する一方、独自の間隔でNull Functionを送信し、自らの生存をAP側に通知し続けるといった機能も実装されている。

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