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» 2006年12月15日 21時07分 公開

地域活性に役立つICTとは?

地域活性に役立つICTとは、どのようなカタチがふさわしいのか。コミュニティツール研究会で研究が進められている。

[國谷武史,ITmedia]

 地方自治情報センター主催の「地域コミュニティづくりに役立つICTツールに関する研究会」(コミュニティツール研究会)の会合が12月15日、東京都内で行われた。会合では、モバイル端末を活用実験やコミュニティーサービスの実証実験の報告や意見交換が行われた。

 まず、ゲストスピーカーとして日立製作所 情報・通信グループ 経営戦略室の織田稔之氏と、三菱総合研究所 社会情報通信研究本部 次世代基盤研究グループの高橋知樹氏が登壇した。両氏は、地上デジタル放送の「ワンセグ」を使ったコミュニティー放送の可能性について、実証実験など紹介した。

 織田氏は、YRP ユビキタス通信テストベッド活用実験・研究フォーラムが取り組むワンセグ放送サービス「エリアポータル放送」を紹介した。エリアポータル放送は、コミュニティーFMのように「渋谷」「新宿」といった特定地域に限定して放送を行うもので、平時は地域情報番組などを、緊急時はエリア内に災害情報や安否確認、避難情報などの提供を想定している。

国立西洋美術館実験 国立西洋美術館での「エリアポータル放送」の概要

 同フォーラムでは、2006年11月に東京・上野の国立西洋美術館で伝送実験を実施。館内の展示物や上野周辺の地域情報を映像とデータで放映した。織田氏は報告の中で、「実用化の手応えを感じられる成果を得られたが、放送としての品質や信頼性、ビジネスモデルや放送制度の整備などが課題だ」としている。

 高橋氏は、防災分野でのワンセグ利活用の1つとして、札幌市で行った放送波による緊急警報の実証実験を紹介した。地上デジタル放送では放送波で受信機を起動させることができ、災害時の情報伝達手段として期待が高い。

ワンセグ受信 ワンセグ受信成功率。青が90%以上、緑が50%以上、赤が50%未満となる

 実証実験では緊急警報で起動する試験機を用い、札幌市内を50地区に分けて、各地点での起動成功率やワンセグ電波の受信成功率を測定した。この結果、全地点で起動が成功したものの、受信率が半分以下の地区が3カ所あることが確認された。高橋氏は、緊急警報対応端末の開発促進と受信の困難な地域への再送信の仕組みを、今後の課題に挙げた。

 研究会委員からの研究報告も行われた。慶應義塾大学経済学部助教授の武山政直氏がRFIDタグを使ったニュースの有効利用を、城西国際大学観光学部助教授の鈴木聰明氏が千葉県南房総地域での通信インフラとコミュニティーの関係について、それぞれ紹介した。

 武山氏は、11月22日、23日に開催された「SFC Open Research Forum 2006」で、「ニュースカフェ」という研究を公開した。この中で物品に添付されたRFIDをリーダーで読み取ると、その物品に関連したニュースが見られるという実験をしている(関連記事参照)。例えば、果実のRFIDを読み取れば、産地のニュースが見られるといった仕組みだ。

ニュースカフェ ニュースカフェの導入意義

 実験結果を総括し、武山氏は「個々人で機器を用意するのは大変だが、ニュース・カフェというインフラが整備された拠点を地域に設置すれば、そこがコミュニティーの活動拠点になり得るだろう」としている。

 鈴木氏は、「地方の人口減少は、デジタルデバイドの助長と地域活力の減衰を招く」と指摘する。2015年の南房総の人口予測では、2005年の約16万人強から約14万7000人に減少するという(国勢調査や人口問題研究所の人口予測コーホート要因法から算出)。

SNSによる地域活性 仮想コミュニティでの交流人口の拡大が地域活性につながる

 こうした問題に対し、鈴木氏はSNSなどによる仮想的な地域コミュニティーの構築とコミュニティーサイト間の連携を提唱する。「仮想コミュニティ内で中心的な役割を果たす人材同士が連携することで、仮想社会で交流する人口が増えていくだろう」としている。

 意見交換では、「小規模事業者でも可能な放送技術や平時におけるコンテンツ内容など、新たな放送体制の確立に向けた検討が必要」「SNSで発信される情報の正確性や混乱(いわゆる「炎上」)に対するルールの確立が大切」といった意見が出された。

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