第1回 コミュニケーションを円滑にするコーチング現場で使えるコーチング術(1/2 ページ)

コーチという言葉の語源は「馬車」という言葉にあるといわれる。望む場所まで送り届けてくれる馬車のように、自身が望む場所へ導いてくれるコーチこそ現代の馬車であると言える。本連載では、コーチングの酸いも甘いも理解し、その有効活用を図ってみよう。

» 2006年12月20日 14時00分 公開
[杉浦麻耶,ITmedia]

 最近、書店や雑誌でもよく目にする「コーチング」。話には聞くけれど、実際どんなことをしているのか分からない、何だか怪しいのでは? という人も多いのではないだろうか。実際にコーチングを受けるとなると、少々値段も張るだけに、どれほどの効果があるのかは前もって知りたいところだ。

 ここで朗報。コミュニケーションスキルを格段にアップさせるコーチングは、ビジネスからプライベートまであなたの株を上げる、知っておいて得するテクニックが盛りだくさん。難しい人間関係や会社の振る舞いも、コーチングを活用することでよりスマートになるかもしれない。本連載では、このコーチングについて解説していくが、よくあるありきたりのコーチング解説にならないよう、具体的な活用術も交えながら、本当にコーチングは有用なのかを考えていく。第1回となる今回は、まずコーチングの成り立ちやその概要を簡単に説明していく。

そもそもコーチングって何?

 コーチングとは、優れたスポーツコーチやカウンセラーが備えるコミュニケーションスキルを調査し、それを体系化したもの。コーチが相手に対し、聞いたり、質問したり、アドバイスをしながら、個人のやる気を自発的に起こす手法である。主な目的は、相手のコミュニケーションスキルのアップであり、米国では1980年代の終わりごろに誕生したものがだが、現在、米国の企業では、マネジメント層に対してコーチングのスキルを求めることが半ば常識となっている。日本でも1990年後半から会社組織、スクール事業、企業研修などで取り入れられるなど徐々にではあるが普及の兆しを見せている。ちなみに、現在、存在するコーチングは主に2種類。個人に対し行われるパーソナルコーチングと会社の社員を対象にしたビジネスコーチングである。

コーチは鬼コーチ?

 コーチとはいったいどんな存在なのか? 小出監督やアニマル浜口氏のような「俺について来い」タイプ――読者には“星一徹”のようなと言えば通りがよいであろうか――は、コーチングで言うコーチ像とは大きく異なる。

 スポーツのコーチを思い浮かべると分かりやすい。例えば、バレーボールのコーチに例えてみよう。一方的に自分の戦略や考えを押し付けるコーチでは、よほどのカリスマ性がない限り、うまくチームも機能しないどころか、選手のモチベーションも上がらないだろう。その反面、コーチが選手の可能性をうまく引き出すよう指導すれば、思いもよらぬ成果を選手自ら発揮してくれる。つまり、コーチはまさに、自分の潜在能力を引き出してくれる存在なのである。スポーツではコートの中ということになるが、会社や日常に置き換えてみたい。個人の能力を引き出して、行動的なコミュニケーションができるように自分をサポートしてくれる手法がコーチングなのだ。

必ず答えは相手の中にある

 さて、コーチングとよく似た言葉として「ティーチング」が存在する。両者の違いを一言で言うなら、コーチングにおいてはコーチと受け手は対等の立場であるということ。ティーチングでは、知識や技術、経験などを一方通行で相手に教えるが、決してコーチは意見を提案したり、押しつけはしない。自ら意見を述べるのでなく、相手が何をしたいのか、実現したいのかを具体的に引き出し、相手に強い動機付けを与えることに主眼を置いている。コーチングの基本的な考え方は「答えを相手から引きだす」ことであり、相手に存在している答えを導くものだ。コーチングではコーチが答えを持っているわけではない。コーチは聴いて、考え、質問しながらその人の中にある答えを見つけてくれる。その人の中にある答えだからこそ、自発的な行動で答えにたどり着くことができるのである。

コーチが導くバラ色の道

 人は、ネガティブに考えることもあるが、ポジティブに物事をみることもできるもの。毎日元気ハツラツ! 前向きに過ごすことができるのなら、これ以上素晴らしいことはないが実際難しい、というのが本音だろう。しかし、相手の可能性を引き出すコーチングなら、心の中に存在するネガティブな意識も明るい方向に差し替えてくれる。

 例えば、同僚と同じようにがんばっているにも関わらず、契約がなかなか取れない営業の社員がいるとしよう。具体的なアクションを起こすことにも積極的だが、結果として出てこない。こういったとき、コーチはまずその人の中に眠っている過去の情報や経験をプットアウトさせる。この作業は、今までの経験を客観的にみることで、難題を乗り越えてきたことを認識させ、相手に自信を持たせることができるという効果がある。そして解決できない問題はないということを理解させ、ポジティブな心理へと導いていく。つまり内容を整理しながら、新たな解決方法を模索する土台を作ってくれるのだ。エネルギー不足にならないよう心に活力を与え、自ら選択し発進できるようチカラを補充してくれる頼れる存在がコーチなのである。

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