Creative Commonsに新理事長が就任、レッシグ氏はCEOとして続投(2/2 ページ)

» 2006年12月27日 16時27分 公開
[Mayank-Sharma,Open Tech Press]
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多数の予定

 伊藤氏はCCでの新しい役目と職務を楽しみにしている。彼の予定表には、伊藤氏自らが「常に優先すべき項目」という資金の調達のほか、やるべき仕事のリストが記されている。

 リストの最上位にあるのは「CCが取り組みんでいる革新的なツールを最終リリース前に試したり見たりできるようにccLabsを拡大する」という項目だ。そうしたツールを手掛ける現行プロジェクトの1つ、Freedoms License Chooserは、CCライセンスを構成するさまざまな自由と制限に混乱している人々を対象にしている。

 優先して取り組みむべきもう1つの項目として「CCの提供するライセンシングインフラストラクチャを利用してCCのアーティストが(うまくいけば)収入を得られるようにするための営利的な権利のライセンシング」がある。これはMetadata LabDHTML License Chooserを通じて実現される。レッシグ氏は次のように説明している。「Metadata Labは、近いうちにわれわれが実現にするもっと一般的な施設の具体例だ。われわれのライセンシング・エンジンを使って適切なメタデータを追加すると、ユーザーはライセンス自体で指定された範囲を超えて権利や用途を指定できるようになる。そうした権利あるいは用途には、人々が購入できる営利的な権利や対象物、またはそのほかのCCライセンスを含めてもよい」

 ライセンスそのものに注目して、理事会では「われわれのライセンスが現行のものであり、それらを利用するコミュニティーにとって意味を持ち続けることを保証するため、CCライセンスのバージョン3.0を完成されたものに仕上げる」ことも考えている、と伊藤氏は言う。この新しいバージョンの草案は10月のディスカッションに投稿されている。また、伊藤氏は「WikipediaのようなプロジェクトをCCのBY-SA(Attribution And Share Alike、帰属および同様の共有)のライセンスに従うコンテンツを用いて改編できるように、FDL(GNUによるFree Documentation License、フリー文書利用許諾契約書)への準拠に向けた取り組み」も予定している。

 さらにプロジェクトでは、カナダのパブリックドメインに存在する作品を容易に識別できるよう、そのためのWikiの構築も継続される。こうした動きは、2006年に計画されたプロジェクト群の1つとしてレッシグ氏が説明していたものだ。

 伊藤氏は、理事長への就任を先週レッシグ氏とともに発表したオンラインの仮想世界Second LifeにおけるCCのプレゼンスの維持にも力を入れている。「楽しい点は別にしても、そこにはCCが進めようとしている多くの要素が詰まっている。Second Lifeは、技術的および法律的な障害に煩わされることなく、クリエイタたちを集め、彼らが容易に自己表現できるようにしたデジタル・プラットフォームだ」

Support the Commonsキャンペーン

 Support the Commonsは、 CCが年に一度実施する資金調達のキャンペーンである。「初回(昨年)のキャンペーンに対する反響は素晴らしいものでした」とガーリック氏は語る。「わたしたちは目標を超える成果をあげ、慈善基金の公的支援をしてくれているIRSに十分なアピールもできました。コミュニティーに支援を求めたのはそれがはじめてだったことを踏まえて、わたしたちはキャンペーンに寄せられた力強い反応を謙虚に受け止めました」

 「2回目を迎えた今年の反響はさらに大きく、もっと多岐にわたっています。今回、圧倒されたのは、わたしたちのコミュニティーが一緒になって、創造力に富んだやり方でCCとその使命を支援してくれていることです。例えば、ある歴史的なドメイン名をeBayのオークションに出して得た収益を寄付してくれた人がいます」

 CCは自らも、それこそマスメディアと、「ユーザーが生み出したコンテンツ」および個人参加型の文化の一翼を担う新しい配布メディアとを利用した、独創的な資金調達のモデルを採用している。「わたしたちは、自分たちで用意した短時間のビデオの幾つかをビデオ共有プラットフォームRevverにアップロードしています。このプラットフォームは、Creative Commonsライセンスを利用してクリエイタが作品を介して収入を得られるようにするものです。Revverはそれぞれのビデオの最後に短い広告を付与し、閲覧者が広告をクリックすると、その広告収入がRevver側とビデオ作成者に分配されるわけです。Revver側は寛大にも、わたしたちの資金調達キャンペーンが終了する2006年12月31日まではわたしたちのビデオによる収入に対するCC側の取り分を100%にしてくれています」

 Revverを通じてCCが調達した資金は約950ドルだという。30万ドルという目標からするとわずかな額に思えるかもしれないが、 ガーリック氏は次のように語る。「この数字から、およそ300人がビデオの最後の広告を見てクリックしたことが分かります。つまりその向こう側には、はじめてCCに接したか、CCを十分に理解している人々が300人いると想定できるわけです」

 またガーリック氏は、コミュニティーのメンバーがCCライセンス化された自作ビデオによって得た収入をCCに提供したいと思えば、そのビデオをCCのアカウントに直接アップロードできるポータルの立ち上げも計画している。

 それでは、この組織は調達した資金をどのように使おうとしているのだろうか。これについてガーリック氏は次のように語る。「これまでCCでは、わたしたちのさまざまなプログラムの支援および発展のために管理費の比率を低く抑えてきたいきさつがあります。ここ1年は、コミュニティーからのフィードバックに基づく法律面および技術面の各種ツールの拡張と、コモンズの思想の伝達に邁進してきました」 ガーリック氏によると、集まった資金は、伊藤氏の予定表に記された前述の各プログラムのほか、コミュニティーの人々が設立または発展を望んでいる新しいプログラム分野に投入されるという。こうしたプログラムには「‘フリーカルチャー’の確固たるインフラストラクチャの構築、作者が実感できる支援の追加、すでに築き上げた拠点の拡大、教育分野における活動の展開」が含まれるそうだ。

 「今年の目標額はきっと達成できるとわたしたちは見ています。現在、調達額がちょうど20万5500ドルを超えたところなので、後10日で9万5000ドルを獲得すればいいことになります。年内にこの記事をお読みになってCreative Commonsの活動を支援したいと思われた方には、無理のない範囲でぜひご協力をお願いしたいと思います」

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