高速PLCにもあった互換性問題「エンタープライズPLC」のススメ(2/3 ページ)

» 2007年02月06日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

家庭向けは無線LANと同じアクセス制御を採用

 家庭内の電気配線は1本の線でつながっている。PLCのネットワークのトポロジはバス型であり、複数の機器で帯域をシェアする形になる。もし、何台ものPLC機器を同時に利用する場合には、電気配線上で信号が衝突してしまうことがあるため、アクセス制御を行う必要がある。

 アクセス制御の方式は、例えばイーサネットの場合ならばCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式が、無線LANならばCSMA/CA(同Collision Avoidance)方式が用いられてきた。家庭内で用いられるコンシューマー用のPLC機器では、後者のCSMA/CA方式を採用している。

 CSMA/CD方式は、通信を始める前にほかの機器が通信していないかチェックし、通信していないときにデータフレームを送信し、もし衝突した場合には、これを検知して再送する仕組み。CSMA/CA方式の場合も同様に、ほかの機器が通信していないときにデータフレームを送信するが、衝突を避けるために送信前にランダムな待ち時間を設ける点が異なる。

 このようにして、PLC機器ではアクセス制御を行う。パナソニックコミュニケーションズの高速PLCモデム「BL-PA100A」では、親機となるマスターPLCモデムに対して、最大15台までの子機を接続できる。ところが、エンタープライズ向けの場合、用途によってはビル内全体に展開するなどで規模が大きくなる場合があるため、別の方式が用いられることがある。

 例えば、住友電気工業のPLCモデム「PAU2210/PTE1310」では、マルチプルアクセス(多元接続)にマスター/スレーブ方式を採用している。これは、マスター専用のHeadEnd(HE)と呼ばれるモデムが、スレーブ専用の子機に当たるモデム(CPE)に対する送信タイミングや送信時間などを制御するもの。HEは最大31台、CPEは最大64台まで接続でき、減衰した信号を増幅するCPEをリピータとして用いれば、最大で990台まで拡張が可能だ。

画像 住友電気工業のPLCモデム「PAU2210/PTE1310」。マスター専用のHeadEndと、スレーブ専用のCPEなどで構成。マルチプルアクセスにマスター/スレーブ方式を採用し、最大で990台まで拡張できる

 リピータ機能では、アドホック的にネットワークを自動構成できる。AとBのコンセントにPLCモデムを接続したとき、信号の損失が大きくてつながらない場合には、損失が少ないコンセントのPLCモデムに中継することができる。

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